185 不可視戦
「アミが戻りました」
引き続きバイモンの実況で状況を把握している。
どうやら時間が来て、アミは戻ったらしい。
「生命力を100の内、3しか取れなかったと悔やんでますね」
「どうやって防いだんだろう?」
「抵抗力が強いのか、耐性があるのか、耐性のある装備をしているのか、どれかですね~」
そういう所はゲームと同じだね。
「グラシアの様子は判る?」
「は~い。
不可視で攻撃を仕掛けましたが防がれたようですよ~」
「えっ?! どうやって防いだの?!」
「勇者本人がわざわざ説明してくれてますね~」
確かにアニメとかマンガでは、防いだ方法とか喋るけどさ。
実際にやるヤツが居るとは驚きだ。
普通は秘密にしておくでしょ。バレたら対策されるもん。
「空気を動きを察知してるって言ってま~す」
「空気の動き!」
「はい。物が動いた時に発生する空気のゆらぎを感知してるみたいで~す」
「そんな事出来るの?! 後、察知出来たからってそれから対処出来るの?!」
「スキルとかギフトとかそういうアレじゃないですか~?
対処もそういうアレかも~? もしくは身体能力で?」
無茶苦茶だなぁ。
「そんな相手なら不可視が意味無いな……」
「だからグラシアは、軍勢を集めて一緒に戦ってま~す」
「えっ? 軍勢は参加してなかったの?」
「はい。邪魔になるんで~」
「なのに今は参加させたの?」
「は~い。沢山居れば、空気のゆらぎなんか察知する事が出来ませんから~」
あっ、そっか。
部屋の中で寝ようと暗くしてる時に蚊の音は聞こえるけど、テレビ見てる時には気づかない、って感じか。
……なんか違うような?
「おっと、スケルトンの骨の隙間から攻撃しましたね~」
「味方の体を貫通させて攻撃したのか」
「隙間だらけですからね~」
それは厄介だな。
よくあるのは「俺の体ごと、敵を撃て!」とかだけど、スケルトンの場合は大丈夫。
元々隙間だらけだから。ズルいな。
「でも、防がれました~」
「えっ?! それも防ぐの?!」
「えっと、ガードしたと思ってます?」
「違うの?」
「違います~。突然現れた鎧に防がれたんです~。ズルいですよね~」
鎧が突然現れた?!
どんなチートだよ!!
「グラシアからの報告では『突然現れたのではなく、元々装備していて、被弾した事で不可視の効果が切れたと推測される』との事です~」
「って事は、例えば頭部なんかも?」
「は~い。不可視の兜を装備している可能性がありま~す」
見えない全身鎧を着てるのか?
もしかしたらずっと装備してたのかもなぁ。
全然気づかなかったわ。
「ここからは総力戦です~。
他の悪魔も戦いに参加してま~す」
「マジか?! どれだけ強いんだよ、勇者」
「圧倒的ですね~。今グシオンが倒されました~」
「倒された?! ししし、死んだって事か?!」
「死にはしませんけど~。もう召喚する事は出来ませ~ん」
マジかよ……。
「ますたぁ。嘆いている所をすみませんけど~」
「……何?」
「行きますよ~」
「ん? 何?」
返事を聞く間もなく、俺はバイモンにタックルされた。
その勢いでミスリルで作った壁を突破して……自由落下が始まった。