174 えっ? たいまつ?
穴の最下層まで皆で降りた。
底は硬く、石畳みたいになっている。
「この足元のがミスリル?」
「多分そうだろう。俺もこうやって埋まっているのは見た事が無い」
「隊長さんは?」
「私も分かりません。しかし確かに硬そうですな」
そう言って持っていた剣で床をコツコツと叩いている。
「私の剣には少量のミスリルが含有されているのですが、それでも削る事が出来ません」
まぁ、少量含有とその物とでは比べようが無いね。
ただ、削れないって事は、ミスリル認定になるのかな?
「これが全部ミスリルだったとして、これだけ硬いならどうやって掘り出すんだ?」
「ミスリルで作られたピッケルで、少しずつ削るしか無いだろうな」
同じ材質なら削れるって事か。
確か地球でもそんなのあったなぁ。
ダイヤモンドを削るのに、ダイヤモンドの粉を接着した物を使うんだったと思う。
「魔法とかで取り出せないの?」
「言ったように魔法は吸収されるのだ。人力しかない」
そう言えばそうだった。
テンプレで言えば、何故か魔法で発掘出来たり加工出来たりするんだけどな。
「待てよ? 魔法?」
「どうしたん?」
「魔法は無理だが、悪魔の能力なら可能なんじゃないか?」
「う~ん、どうだろ?」
「良さそうな能力の悪魔が居るなら試してもらえないか?」
ミスリルを発掘出来る能力?
そんなの居たっけ?
「まぁ、ちょっと見てみようか。
……って、ここは暗すぎるわ。一旦出ようよ」
「そうだな。たいまつが設置してあるが、暑いし、息苦しい感じもするしな」
……よく考えたら、この中って危険なんじゃないか?!
ほら、マンホールの中で中毒で死亡なんてニュースでしてたし!
たいまつなんか焚いてるから、酸素が足りないんじゃない?!
それに何らかのガスでも発生してたら大変!
俺達は逃げるように穴を出た。
「よく考えたら、何で穴の中なのにたいまつなんだよ!」
「だから言ってるだろ。魔法で明かりを作ってもミスリルに吸収されるんだ。
人夫が平気だから失念してたぞ」
人夫が平気?
あっ、そうか。
働いてるのはスケルトンだもんな。
呼吸なんかしてなさそう。肺なんか無いんだもん。
しかし、スケルトンは魔物じゃないのかな?
魔物=魔力で動いている、っていうイメージなんだよね。
そうなると、ミスリルに魔力を吸収されて動けなくなりそう。
あくまでイメージだけど、違うのかな?
気にせず働いてくれてるから良いんだけどさ。
ちなみに現在スケルトンは、ミスリルの層に沿って、水平に掘り進んでいる。
ミスリルの層が無くなる所を探して、そこから下に向かう為だ。
人海戦術で4方に同時に進んでいる。
ほら、あれだ、ブランチマイニングとか言われる方法。アレ。
頑張って、降りる場所を見つけてもらいたい。
某ゲームのように溶岩を掘り当てて燃えないようにね?
さて、王太子の要望に答えようかね。
俺はカードを取り出して、能力を見てみた。
ん~……使えそうなのは、ザガンとセーレとベリトくらいかなぁ?