173 ミスリル
「そのミスリルってのは、どんな需要が?」
「ミスリルを知らないのか?」
日本には無かった鉱物だからねぇ。
まぁ、名前が違うだけで、地球上にも存在する鉱物の可能性もあるけど。
「ミスリルには特徴が3つある。
まず、軽い事だ。鉄と同じ硬さながら重さは鉄の半分ほど」
「へ~。鎧とか盾とかにすれば良さそうだね」
「実際になっている。
と言っても、次の理由が大きいがな。
次は、魔法に対する抵抗力だ。
どういう仕組みなのかは判らないが、ミスリルには魔法が効きにくいのだ。
一説には、ミスリルが魔力を吸収するからと言われている」
「効きにくい? 効かないんじゃないんだ?」
「ああ。例えばそこら辺にある石を打ち出す魔法だと、物理攻撃のようなものだからな」
魔法による直接的な攻撃は効かないけど、物理的な攻撃は効くって事か。
「それに炎の矢を受けたとして、炎と矢自体のダメージは無いが、当たった事でのダメージは残る」
あっ、これは理解出来る。
運動エネルギーは伝わるって事だね?
「最後に、温度の変化に強い」
あ~、熱伝導率が低いって事か?
加熱しても熱くならないって事だね。
フライパンとかには向かないけど、防具としては良いね。
あっ、だから炎でのダメージが無いのか。
「こういう事から、防具としての需要が高いのだ。
近衛騎士の鎧はふんだんにミスリルが使われているぞ」
そう言われると、白金っぽい色だったわ。
って事は、ミスリルは白金っぽい色なのだろう。
「これ、どうするの?」
「発見した層の厚さにもよるが、結構な量が採れると思う」
「村の財産になるの?」
「ミスリルの権利は国の物になるな」
「なんで?」
「冒険者や傭兵が欲しがるような金属だぞ?
しかも高値で取引される品だ。
村で管理出来ると思うか?」
あ~、そういう事か。
村で管理なんかしてたら、絶対に悪いヤツに襲撃されそうだ。
国が管理して、防衛設備も作り兵も常駐させるって事ね。
村には無理だ。
「早速見に行こうじゃないか!」
王太子に急かされて、竪穴に向かう。
まぁ、俺も興味があるし、良いけどね。
……
…………
………………
違うだろっ!
ミスリルの層が~じゃない!
出てきた石板の方が問題なの!!
「王太子、待って! コレ見て!」
「ん? ああ、石板だな。遺跡かなんかだろう?
それよりも早く行くぞ!」
「いや、書かれてる内容をさ!」
「それは後でも見れるだろ?
ミスリルは早急に国に報告しなきゃならん!
量によっては村人にも箝口令を敷かなきゃならん!」
あっ、ダメだ。
目の色が変わってるわ。
うん。後にしよう。