017 悲しい事実
年末年始は毎日投稿です!
石造りの平屋の家。
もう家と言って良いだろう。
玄関は両開きで、観音開き。しかもデカい。まぁ、元々が塔だからね。
中に入ると広い一部屋だけ。いや、奥に扉があるな。風呂とトイレかな?
リビング兼キッチン兼寝室って感じ。デカいワンルーム。
「なぁ、これ、誰でも入ってこれるんじゃね?」
「扉には閂をかける事が出来ますので、問題無いかと」
「でも木製だよ? 破られるんじゃないの?」
「破ろうとしている間に、グラシアが襲いかかるでしょう」
そうだった。
マルチーズだけど悪魔だったわ。
グラシアを突破して閂のかかっている扉を破壊するなんて出来ないか。
「あっ、でもこの世界には魔法があるんだろ? 遠距離攻撃出来るぞ?」
「そのような事を企んでいれば、私が気づきますゆえ」
アンドロマリウスの能力に“裏取引や企みを看破”ってのがあったね。
そんなのも看破出来るのね。
「じゃあ、安心か」
「はい。安心してお休みください」
じゃ、晩飯食ってベッドで就寝だね。
ベッドはフカフカだし、良く眠れそうだ。
ん? んん?!
「ちょっと質問がある」
「何でしょうか?」
「まず最初に聞きたいのは、何も買い物とかしてこなかった事」
「そうですね。それが何か?」
「いやいや、晩飯! 調味料ばかりはあるけど、素材が無い!!」
「……主殿は食事が必要でしたね。失念しておりました」
「どうすんだよ!」
「グラシアに狩りをさせてはいかがでしょう?」
「……そんなに詳しく無いんだけどさ、狩ったばかりの肉って食えたっけ?」
「血抜きをすれば大丈夫かと。勿論熟成させた方が美味しくなりますが」
「後さ、解体とかの知識はあるけど、現代人だぞ。解体なんかしたくない。そして血を見るのもイヤだ。
外で全部してきてくれるか?」
「グラシアには無理でしょう。私が出来ますが、時間がかかるかと」
マジか。どうしよう?
うん、諦めよう。素直に明日どこかで購入した方が良いな。
「……晩飯は諦めるわ」
「それでしたら、塩を準備する事をオススメ致します」
「塩?」
「それを少量舐めるだけでも違いますので」
「でも喉が渇くんじゃないか?」
「水道だけは完備しております」
「そういえば奥の扉は? やっぱり風呂とトイレ?」
「トイレでございます」
トイレか。水道があるなら水洗トイレだろうね。そうであって欲しい。
どこに流すのかは知らないけど。
「あれっ? 風呂は?」
「ございません」
「マジか!」
風呂も無しかよ!
じゃあ俺は、立派な平屋の塔の中で、風呂に入らずに晩飯も食わずに、塩だけ舐めて寝るのか……。
どんな生活だよ!
「折角容量無限のインベントリをもらったんだ。
アホみたいに買い込んで色々入れておくわ」
「それが宜しいかと思います。失念していた事、お許しください」
「いいよいいよ、助けて貰ってるし」
居なきゃもっと困ってたしな。
と言うより、居なきゃ即人生終了の可能性もあった。
感謝をしても、怒る事は無いわ。
「もう就寝されますか?」
「いや、ちょっと調べ物しようと思ってる」
「調べ物ですか?」
「うん。手持ちのカードを詳しく見てないから、確認してみようと思ってさ」
「なるほど。把握される事は重要ですね。流石は主殿です」
いや、ただ単にぶっ壊れ性能の悪魔を見ておこうと思っただけだよ。
把握とかじゃなく、使いにくそうなのはあまり使わないようにしようと考えてるだけ。
使いやすい性能のヤツばかりなら良いなぁ……。
明日は2話投稿します。