168 確信犯
1列になって、頭蓋骨に印を押されるスケルトン達。
シュール。めっちゃシュール。
押された者から順に作業に入っていく。
穴を掘る係、出た土を運搬する係、穴を補強する係、交通整理をする係、と作業分配も完璧。
結果、この事は村中に知られてしまい、村人全員が見に来ている。
それをどこから出したのか知らないけど、黄色いヘルメットを被った紅白の旗を持ったスケルトンがガードマンしてる……。
出た土は、別の用途があるらしく、村長指示の下に決められた場所に運ばれている。
村長も慣れたなぁ……。諦めたとも言えるかも。
そうそう、家の持ち主イクサさん。
イクサさんは所帯持ちで、奥さんと子供が2人。
家の裏手を掘られて、さぞかし怒っているかと思いきや。
「う~ん、いっその事、宿屋を始めるか?」
「温泉付きの宿屋! 私は女将さんですね! ウフフフ」
とまぁ、もう未来を見据えて妄想中。
招魂たくましい。
2人の子供は……ブネと遊んでいる。
ブネってキン○ギドラのくせに子供が好きなんだ……。
左右の首に子供を乗せ、それを上下左右に動かして喜ばせている。
両親、妄想してる場合じゃないと思うんですけど? 子供がドラゴンと遊んでますよ?
シュールな空間を見てたらクロケルがやってきた。
「順調ですね」
「順調なのかな?」
「勿論ですよ。湯が出るのも時間の問題でしょう」
「そうなの?」
「はい。なのでリョー様、今度はウィネの召喚をお願いしますね」
また召喚か。
いくら勇者が王都で仕事をしてるからって、そんなに呼んで大丈夫なのかね?
「何でウィネ?」
「湯が出ても建物が無ければ利用出来ないじゃないですか」
「そりゃそうだけど。だからウィネなの?」
「はい。塔を作ってもらいます。その中に温泉施設を作れば良いかと」
建築までこっちでやるのか。
まぁ、今から温泉宿を作るとなると、オープンは何ヶ月も先になるもんな。
俺達もいつまでもここに居る訳にはいかないし、しょうがないか。
「それに塔が出来れば、それを目当てに客が来ます」
「日本のスカイ○リーみたいな物か。確かに客が来そうだ。
…………あれっ? 最初からそれを作れば良かったんじゃね?!」
「そうですね」
「判ってたなら言ってくれよ!」
「それでは私やブネの出番が無いじゃないですか」
くっ、こいつ……確信犯かよっ!
こりゃ、最初に全部聞くべきだな。
後からまた追加されそうだ。
「それで全部か? もう呼ぶ悪魔はいないか?」
「いえいえ、まだやる事がありますよ」
「まだあるのか?!」
「はい。塔が完成したら、今度はベリトを召喚して頂きます」
「ベリト? 確か金属を金に変えるんだよな? 何するんだ?」
「塔の建材に含まれている金属を金に変えて塔を補強します。
配管内は全て金にする事で、錆びないようにします」
「錆びないのは理解出来るけど、補強に金? 金って柔らかいんじゃないっけ?」
「しないよりはマシですよ」
「そうだけどさ。壁削って盗んでいくヤツとか出ないか?」
「設置しているのを見られればありえますが。
壁内部の金属がいつの間にか金になっているのですよ?」
埋め込む所を見られてる訳じゃないもんな。
誰も気づかないか。
誰も知らなきゃ盗む事も無いか。
よく考えなくても、ここは他人の土地。
なので村長とイクサさんに聞いてみた。
「塔! 温泉に塔とは……集客がハンパないですね!!」
「塔!! 俺ん家が塔になるのか!! すげー楽しみ!!」
快く許可してくれた。
……適応力が凄いですね。