162 新しい仕事
「アマランちゃんは8歳までおねしょをしてて……」
「キャー! 止めて!!」
暴露話だね。
うん、なかなか面白いじゃないか。
MCもちゃんとやってる。
一人を指名し、その人の過去を話してると、突然違う人のエピソードをブチ込んでくる。
「あっ、これはサラちゃんのか」とか言いながら。
上手い。問題無さそうだ。
全て終わって。
初めてとは思えない進行に感動したよ。
これなら任せられる。
「やってみてどうだった?」
「あのような感じで良いですか?」
「うん、満点だね。イジメに見えないギリギリを攻めているのも良いし。完璧」
「ありがとうございます」
「どう、やっていけそう?」
「はい。頑張ります」
良かった。無理って言われたらどうしようと思ってたんだよ。
これでMCの問題も解決。
良かった良かった。
この事を王様に報告する為に、また城に行く。
王様は謁見の間ではなく、政務室に居た。
「どうだった?」
「問題無かったです。というよりも、凄く良かったです」
「そうか。前科が無ければ、城でも雇いたかった程だからな」
「引き抜かないでくださいよ?」
「おや、違う職に就かせて前歴を無かったかのようにして雇う作戦がバレたか」
シャレで言っただけなんだが、恐ろしい計画を立てていたようだ……。
「そうだ。少し仕事をしてくれ」
「仕事ですか?」
「ああ。イヤとは言わないよな?
人材を渡したんだ、貸しだろ? 等価だよ等価」
上手い事言うなぁ。
断れないじゃないか。
「何です?」
「そうは言っても、聖人様がするんじゃないんだ。息子の仕事だよ。
聖人様は息子と離れない方が良いので、一緒に行ってもらう事になるな」
その事は問題無い。
王様からの情報が無ければ、カードや物を探しに行く事も出来ないんだから。
「何でしょう?」
「そんなに難しい事じゃない。毎年やっているアレだ」
「……ああ、もうそんな季節でしたか」
「何?」
「巡察だよ。王都の周辺の村々を回り、何か不備が無いか調べるだけだ」
「それ、毎年するの?」
「王都の周辺の村は、主に畜産か農業をしている。
季節で豊作不作があるからな」
納得。
でも、王太子が行く必要があるのか?
文官とかの仕事じゃないの?
「文官も一緒に行くぞ。
王族が行くのには、別の理由もあるんだ」
「別の理由?」
「村と言っても直轄地ではない。貴族の領地だ。
その貴族が無体な事をしていないか、調べる意味もある。
この時は王族に直訴をしても許されるんだ」
へ~。なかなか良い制度じゃないか。
ラノベでよくある私腹を肥やす貴族や、村人に無茶苦茶する貴族を罰する事が出来るって訳か。
「まぁ、この制度も出来てから年月が経っているからな。
アホな事をする貴族はもういないがね」
「じゃあ直訴する人も居ないの?」
「いや、居るぞ。
去年だと『井戸の水の出が少なくなった、どうにかして欲しい』というのがあったな」
「どう解決したの?」
「地下の水脈を調べ、別に井戸を3つほど新たに設置した」
そういう直訴もアリなのね。
王太子と話して居ると、王様がニヤニヤしながら話に入ってきた。
「今年は聖人様が居るから、期待出来そうだな」
「ん? どういう意味ですか?」
「悪魔を使えるだろ?」
「使えますけど、勇者の問題が」
「だから、劇場に居させて仕事を与えたんだろ? ちょっとくらいなら大丈夫だ。
ああいうタイプは、アイドルの仕事を投げてまで行く事は無いだろう」
……政治家って怖いな~。