151 8人揃って…
「次に、ショートカットの似合う『ティナ』ちゃん。
それから、いつも楽しそうな『フェイ』ちゃん。
のんびり屋の『ピストー』ちゃんに、皆から慕われてる『ショル』ちゃん」
名前の前の形容詞は必要なの?
何も知らない俺にも判るように説明してるの?
「不思議っ娘の『スーチ』ちゃんに、好戦的な『アデミ』ちゃん。
最後に、言動が変だけど面白い『マヤ』ちゃん!」
今呼ばれた3人は、どうやら“アンダー”メンバーらしい。
呼ばれた事に驚き、歓喜の涙を流している。
最後に呼ばれたマヤちゃんは、ライバルである他のメンバーからも「良かったね」と声をかけられている。
ずっと選ばれなかった娘なのかな?
呼ばれた娘達は、前に整列している。
う~ん、さすがにここで「サインを書いて下さい」とだけ言うのは心苦しい。
と言うか、無理! 言えない!
くそっ! こうなったら、適当な事を言って後は支配人に任せよう!
「え~と、君達は最初のユニット“ヒーロー8”として活動してもらう」
「さすがリョー様! 粒ぞろいのメンバー構成ですね!」
そうなの?
でもそれを決めたのは俺じゃない。一部のファンの方々です。
その人達に見る目があったという事なのだろう。
あっ! 俺、ナイスアシスト! と自画自賛しよう!
良い事を思いついた!
「まずは“ヒーロー8”としてサインの練習だ!
1枚のこの紙……色紙なんかあるのかよ! まぁいいや。これに8人でキレイに配置して書くのだ!
色紙は全部で8枚! 8回だけの練習で成功させるのだ!」
「「「「はい!!」」」」
やったぜ! サインゲットだぜ!
あれっ? ファンの人の名前入りで個人の物を、って頼まれたような気が……。
んー……気にしない事にしよう。
それよりも新ユニットの初期のサインの方が貴重でしょ。
…………もうちょっと希少性を高めるか?
「練習しながら聞いてくれ。色紙の横に通し番号を入れておいて。
ほら、最初のやつと最後のやつが比べやすいでしょ?」
ククク。
これで1枚目には破格の価値が付くだろう。多分。
これで勇者との取引も終わりだね。
長々と苦労したわ~。
あっ、そうだ。
さっき“組”とか言った時にヅカっぽいな~と思ったので、ついでに言っておこう。
「言っておくが、メンバー内での揉め事は禁止とする。
勿論、叱咤激励は良い。だけど、僻みからのイジメや無視やケンカは許さない。
その場合、すぐに調べて裁判をする。裁判長は王様にしてもらうかな?」
「リョー様! ……それほど大事にしますか?!」
「え? ダメ?」
「陛下にお願いするのは不敬では……」
「やってくれるかは聞いてみないと判らないからね。
いや、俺が言いたいのはさ。仲良くしましょうって事だよ。
表面では仲良くしてても、意外と見てる人は判るんだよね。
仲の悪いメンバー達が表面上だけ繕って舞台立っても、楽しんでもらえないと思う訳。
それだけなんだよ。
当然人間なんだから、不平不満はあると思う。
でもそれを乗り切るのも大人には必要。君達もアイドルとして働いているんだから大人だ。
頑張って欲しい」
「……すばらしいお言葉、ありがとうございます」
「「「「ありがとうございます!」」」」
そんな良い事言ったかな?
ま、まあ、仲が良いに越した事はない。