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143 勇者の告白

身体検査をパスした勇者が馬車に乗ってきた。


「か、感謝するよ! 助かった! ありがとう!」

「いやいや」


馬車が動き出したので、早速話を聞いてみよう。


「で、何事?」

「じ、実は……アイドルってのがこの世界にも居るってのを聞いて、依頼をブッチして王都まで来たんだ」


その為に王都まで来たのか。

依頼くらい完了してから来いよ。


「最初は大した事は無いだろうと思っていた。でも劇場に行って俺が間違ってた事に気づいた!

 アレは凄い! そしてすぐにファンになった!」


ファンになるな、ファンに。

勇者の仕事をしろ。


「そしてすぐに仲間が出来たので、ヲタの応援の仕方を教えたんだ!」


……お前、日本でアイドルヲタだったのか。

応援の仕方って、もしかしてあの掛け声とかヲタ芸とかか?

変な文化を持ち込むな!


「そしたらいつの間にか、アイドルヲタのリーダーになっていた」


お前、俺の居ない間に何やってるんだよ?

お前がしないといけないリーダーって、勇者のパーティーのリーダーだろ?


「俺は依頼をこなし金を稼いで、その金でグッズも買い揃えた。

 コンプリートした事でアイドルヲタプロとまで言われるようになった」


異世界に行った日本人の中で、ここまでアホな理由で依頼を完遂していったアホが居ただろうか?

勇者ならもっと真面目な事の為に金を稼げよ。

ほら、奴隷を解放する為とか知り合いの店を守る為とか、色々あるだろ?


「先日、行われたオフ会に参加した時の事だ。

 副リーダーが持っている限定くじで当てた10枚しか無い全員分のサイン色紙を見せびらかした。

 それがきっかけで自慢合戦が始まったんだ」


そういうのも売り出してるんだなぁ。

王様も頑張ってるねぇ。国政を頑張ってほしい。


「皆が色々な物を出して自慢している。

 その中で俺は、自慢出来るような物を何も持ってなかったんだ……。

 くじも外れるし、抽選にも漏れるし……」


勇者なのに運は持ち合わせてないのか。

まぁそうだよな。

運が良ければ神様に出会ってないだろうし。異世界に飛ばされる事も無い。


「悔しくてさ……。そこでついポロっと口から出てしまったんだ……!」


周りが自慢してたらそりゃ悔しいだろう。

大人なら気にしないかもしれないが、勇者はまだ子供と言える年齢。

見栄も貼りたくなるだろうな。


「『俺はプロデューサーと知り合いだ! いや、友達、いや、親友だ! 俺の頼みなら何でも聞いてくれる』と!」

「……お前、何言ってんの?」


おっと、とうとう口に出して言ってしまった。

でもしょうがないだろ?

誰と誰が親友だって?

どっちかと言えば敵対関係だと思ってるんだけど?


俺のコメントは耳に入らないらしく、話をそのまま続けてる。


「そうしたら皆が『ウソは良くない』と言うんだ! だから俺は『ほ、本当だし!』と反論した!」


反論で噛むとか、ウソって言ってるようなものじゃん。

ってか、そんな所まで再現しなくても良いんだが。


「そしたら『じゃあ、俺達の希望する娘のサインを俺達の名前入りで貰ってくれよ!』と言われたんだ……。

 売り言葉に買い言葉で『それくらい楽勝だね!』……と…………言ってしまったんだ。

 …………助けてくれ!! お願いだ!! 何でもするから!!」


う~ん、典型的な子供の行動だ。

一言で言うなら、アホだな。


何でもするって言われてもな。

『俺の邪魔するな』『悪魔を見逃せ』『モノを入手したら譲れ』こんな要求しても良いのか?

……何か『それでも良い!』って言いそうな雰囲気だわ。大丈夫か?

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