014 引くわ~
街へ戻り、冒険者ギルドへ行く。
そこにはまだラビューさんが居た。
「すみません……討伐証明部位を持ってきました」
「えっ?」
俺と俺の後ろに立っているアンドロマリウスを何度も見るラビューさん。
「も、もしかして……執事さんが背負っている麻袋は…………」
「は、はい。あれが討伐証明部位です……。すみません」
「で、ではこちらにどうぞ。ここが受取所です。今度からここにお持ちください」
「了解しました。ありがとうございます」
「そ、それでは確認させてもらいますね。あっ、こちらが担当のデムさんです」
「デムさんですか。自分はリョウスケです。お願いします」
「おっ、おう。どうしたよラビューよ。顔色悪いぞ?」
「……今から判りますよ」
「ん? 何だか怖いな。でリョウスケよ。討伐証明部位があるんだって? ここに出しな」
俺が振り返り目で合図すると、アンドロマリウスが麻袋2つをカウンターに置いた。
見た目では1つの麻袋が、60Lのゴミ袋に見える。パンパンだから、120Lくらいあるんだろうか?
デムさんが恐る恐る袋を開ける。それを横から覗き込むラビューさん。
「ヒアーーーーーーー!」
「あ~、たまに居るヤツか。って何だよラビュー! デカい声出しやがって。
たまに居るヤツだろ?」
「え~と、すみません。その『たまに居るヤツ』ってなんです?」
「すっとぼけかい、リョウスケよ。判ってるよ。毎日コツコツ貯めたんだろ?」
「へ?」
「どうせ今日登録したばかりだろ? 居るんだよな~、コツコツ貯めておいて、登録日にまとめて持ってくるヤツ。
で『今日1日で狩りました~』って言うんだろ?」
あ~、そういうヤツが居るのか。
箔をつけたいんだろうなぁ。
でも、俺の場合はマジなんだよねぇ。俺が狩ってないけど。
「ちょっと、リョウスケさん!!」
「は、はい?」
ラビューさんに呼ばれてカウンターの横の陰に行く。
内緒話のようだ。
「デムさんが言ったみたいな事じゃないですよね?!」
「はぁ、まぁ、そうですね」
「登録してから、マジで狩ってきたんですよね?!」
「俺じゃないですけどね」
「私達を脅して、能力を秘密にさせておいて、見せびらかすってどういう事ですか?!」
「そんなつもりじゃなくてですね……、でもしょうがないじゃないですか、お金が居るんですよ」
「お金が必要? 借金でもしてるんですか?」
「違いますよ。家を買うつもりなんです」
「家を?」
家を買うって言ったら変な顔された。
俺が家を買うって、変な事か?
「理由はとりあえず理解しました。
どうやらデムさんのお陰で持ち込み品も勘違いされてるみたいだし、今日はセーフとしましょう。
でも今度から大量に持ち込む時は、事前に言ってくださいね!」
「わ、判りました」
カウンターに戻ると、ラビューさんが水晶を持ってきた。
「一応確認です。触れてください」
「はい」
これは俺も興味がある。
距離不明の穴の中で悪魔が虐殺したんだけど、魔力って増えてるんだろうか?
確か近くに居れば居るほど沢山もらえるって話しだった。悪魔が倒した場合はどうなんだろ?
「うわっ、増えてる……。本当に倒してきたよ、この人達…………。引くわ~」
どうやら増えているようだ。
でも言い方! 引くわ~とか言うな。
「どれくらい増えてます?」
「およそですけど、1000くらい増えてますね……」
「マジっすか……」
まぁ853体も倒したんだから、1でも853増えるからねぇ。