137 どこにあるの?
「アンドロマリウス、これってやっぱ悪魔の仕業かな?」
「十中八九そうでしょうね」
「だよね!」
やっぱりそうか。
しかしその肝心なカードはどこにあるのだろう?
村の中っぽいんだけどね。
そう考えていたら、アンドロマリウスが村長に話しかけていた。
「村長殿。そのような異変が始める前に、何か別の異変はありませんでしたか?」
「えっと……べ、別の異変とは?」
「例えば、近くの崖が崩れたとか、井戸の水の出が悪くなったとか」
「い、いえ、そのような事は無かったですね」
なるほど。
埋まったとか、埋まってたのが出てきたとか、水流で流れてきたとか、そういうのを想定してるのね。
でも無かったらしいし。どうなんだろ?
鳥がカードを運んできた、ってのはどうだろう?
「そうですか。
では次に、異変が始まった頃から一ヶ月前くらいの間に、村で行った事を教えて下さい」
「え、ええっ?! 村で行った事?!」
「はい。思い出せなくても大丈夫です。毎年の事だと思いますので、過去も考えて答えて頂ければ」
「え? あ、そ、そうですか?
え~と…………今頃だから、畑の収穫と、新たな場所の開墾と、収穫した物を売りに街へ行ったり……」
一生懸命考えてくれてる。
それを聞いて、アンドロマリウスが毎年の事って言った意味が判った。
俺もそこまで詳しくないけど、農業従事者の動きは毎年決まっているような事なのだろう。
春が来れば作物を植え、夏や秋には収穫、それから冬に向けて準備、って感じで。
なので過去も考えれば、今頃は何をやってたか思い出しやすいって事か。
ふと思ったのだが、四季ってあるんだろうか?
俺が来てからは気温や日照りに変化が無い気がする。
もしかして、惑星じゃないのかな?
自転してなきゃ四季も無いだろうし。してても無い場所もあるけどさ。
それともそこまで考えて作られていない世界なんだろうか?
……そう考えると怖いな。
考えないようにしよう。
「そんな感じですかね」
村長の思い出しは終わったようだ。
それを聞いてアンドロマリウスが考えている。
「判りました。
では、今年開墾している場所を教えてくれますか?」
「開墾している場所ですか?! な、何か問題でも?! 『勝手に広げてるんじゃない!』と怒られますか?!」
「怒りませんし問題はありませんよ。それどころか逆です」
「ぎゃ、逆とはどういう意味です?」
「こちらにおられる方は、実は高名な聖職者であらせられます。
問題のある地を、その祈りでもって治められるのです」
「おおっ! なんと!」
「しかも今回は我々と一緒に来たので、無料で行って頂けますよ」
「あ、ありがとうございます!!」
開墾した場所が怪しいと踏んだのか。
しかし、高名な聖職者が居るのか~。
って、俺の事かよ!!
また無茶振りしてくるな!
ちょっと冷静になって考える。
術を行使するから離れていて、と言えば人目を気にしなくて済む。
高名な人が今なら無料と言えば、他の人に頼む事も無いだろう。
……セコいが良い手かも。
しかし、祈りで治めるのに有料なのか?
いや、待て待て。日本でもそうだったじゃないか。
ほら、ビルとか建てる時にやるヤツ。え~と、そう、地鎮祭!
あれ、さすがに無料じゃないよね。
有料無料って言い方は良くないな。
お布施とか協力費とか祈祷料とか言うべきか。
「ぜひ、お願いします!」
俺が考え事している間に、話は纏まったようだ。
村長から熱烈な握手をされてしまった。
さすが農業従事者、握力が強い。痛いです……。