125 プロの仕事
ジェネレーションギャップというか、異世界ギャップというか。
皆が歌うのは、どちらかといえばオペラっぽいのか童謡っぽい。
後は村等で歌い継がれている伝承の歌っぽいの。
う~ん、審査しにくいわ。
まさかこんな所で躓くとは。
こういう場合、王太子や姫様に聞いてもらって審査した方が良かったんだが。
二人は曲を演奏する人を集めて審査して貰っているので不在。
この世界の楽器は判らないので、二人の方が審査出来るだろうと思って頼んだんだよね。
歌まで審査が難しいとはね。
しょうがないので、俺が独断で上手いな~と思う娘だけを選ぶ事にした。
一応王様の意見も聞くけど、王宮でやるような高尚なのとは違うからねぇ。
後は容姿。
キレイというよりもかわいい系の娘をチョイス。
最後に運動能力をチェック。
アイドル番組では運動オンチの娘が沢山居たが、動ける娘の方が良いだろう。
簡単なダンスを初見してもらい、マネしてもらうってのもやった。
すぐに出来る娘は得点が高い。
こうして、無理やり17人を選んだ。
次は衣装。
これは姫様にお願いした。
可愛い系で、なおかつ動きやすい格好をチョイスするように発注。
舞踏会のようなのはNGと伝えておいた。
そして一番苦労したのが曲。
まず、俺が楽譜に書けない。
ついでにこの世界の楽譜は俺の知っているものでは無かった。
五線譜におたまじゃくしではなく、縦に三本線があり、そこに横棒を引くって感じの楽譜。
無理。
最終的には、俺が鼻歌を歌って、それを作曲家の人に書き起こしてもらった。
……こんなに難しいとは想像もしなかった。
テレビで見て「アイドルのプロデュースなんて楽しそうな仕事だよな~」なんてナメてたわ。
某秋○さん、尊敬します。
曲も歌詞も丸パクリしてるけど、作詞作曲をゼロからするとなると素人の俺からすれば地獄だな。
何百曲も作詞出来るなんて天才かよ。
オーディションも顔で選ぶだけじゃないって事を知った。
プロってすげ~。
そういえば歌詞なんだけど…………そのまま使おうと思ったけどダメだった。
それは何故かと言うと、誰でもちょっと考えれば判る事だ。
そう、歌詞の内容の意味が判らないのだ!
例えば「地下鉄に乗って~」みたいな歌詞があったとしよう。
はい、この世界に地下鉄がありませーん。
なので「馬車に乗って~」と書き換えたんだけど、そうするとその後の「駅の階段を駆け上がり~」って部分に無理が。
この世界の乗合馬車は階段のある所に止まらない。
歌詞の感じは残しつつ、こちらの世界でも通用するように作り変えるのに2日徹夜したわ。
俺、元々あまり音楽の歌詞を深く聞かないタイプなので、意味のあるように書くのはツラいです。
アイドルの曲だからってバカにしてたけど、良い歌詞でした。
結果。ダンスまで覚えてもらって、披露する時が来たのは一ヶ月後だった……。
長かった~。
俺、何をしてるんだろう?
こんなヒマがあるなら、カードを探しに行けたのでは?
さて、披露の日。
披露も城でやる事に。
俺は専用の劇場を作って、そこで毎日披露する事を考えていたのだが、意外な事に王様がハマってしまってて。
今も最前列に座っている。
普通王様って一番後ろの方の個室で、護衛に囲まれて見る物じゃないかな?
ポロっと言ってしまったサイリウム?(光る棒)を開発させて両手に持っている。
そんな事に城の予算を使って良いのかなぁ? どういう仕組なんだろう?
準備も万端!
いざ開幕だーーーーっ!