108 ハウレス
呼ぶ悪魔は決めました。
ギルドマスターに見られないようにコソコソとカードを見て決めたから、いまいち能力がよく分かってないけど。
能力の所に「敵を~」ってあったので、大丈夫でしょう。
もしダメでも、確か悪魔は全員ある程度の軍団を呼べるって誰かが言ってたので、対抗出来るはずだ。
馬車に揺られる事、半日。
何事もなく、現場付近に到着。
右手に見える山が目的地ですね。
では早速。
「……おい、お前ら。何で飯の準備してんだ?!」
「いやだって、昼ですから」
朝に出発したんだから、到着時刻は昼になるでしょ?
何か間違っているのだろうか?
「飯食ってすぐに動いたら、気持ち悪くなるだろうが!」
「問題無いぞ」
「何でだよ!」
「今食わなくて何時食うんだ?
あんまり遅くなると、宿で晩飯が食えなくなるだろ?」
「夜までに街に戻るつもりか?!」
「? 当たり前だろ? 何で野宿する必要が?」
「……こいつら、何考えてんだ?」
う~ん、王太子とギルドマスターの会話が成り立ってない。
王太子は悪魔が蹂躙するからすぐ終わると思ってる。
ギルドマスターは俺達が戦うから時間がかかると思っている。
……そりゃ会話にならないよね。
さて、アイザックさんが飯の準備をしている間に悪魔を呼びますか。
呼び出す悪魔は…………ハウレス!
お出でませぃ!
「殿! 初召喚、ありがとうございまする!!」
「ん、ああ、おお。……え~と、、、殿って俺の事?」
「はい! 殿でござる!」
「あ~~~、そうですか」
「はい!」
何で殿なんだろうか?
俺、殿様じゃないんだけど。
そして何だろう、この口調。
時代劇かな?
あっ、そうか。
違和感の原因が判った。
姿が黒豹だからだ。
侍風だったなら違和感が無かっただろうに。
しかしこんな喋り方の設定ってあったのかな?
カードを確認してみるか。
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アイム(天蠍宮)&ハウレス(磨羯宮)(どちらか一人を召喚)
姿:アイム→美形の人間(男) ハウレス→豹
能力:アイム→パーソナルな質問に答える、村や都市に火を放つ ハウレス→敵を焼き殺す
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どこにもそんな事は書いてないな。
しかし黒豹なら、丁寧な言葉で喋るイメージが。
後、実際はスライムみたいな不定形生物ってイメージが。
……そうか。砂漠にある塔に住んでいる超能力な二世さんの「しもべ」のイメージがあるからか。
おっと、誤魔化してる場合じゃないな。
呼んどいてアレだけどさ、何だよこの能力!
デンジャラスすぎないか?!
くそっ、しっかり見ておけば良かった!
「おい! お前! その黒豹はどこから呼んだ?!
って、喋ってなかったか?!」
あっ、早速ギルドマスターに見られた。
ま、いいか。どうせ倒す所を見てもらわないといけないんだ。
「召喚しました。紹介します、ハウレスです。ハウレスが敵を倒します」
「誰ですかな、この失礼な輩は」
「はぁ?! 召喚?! 喋った?! こいつが敵を倒す?!」
うん、予想通り混乱してるな。
王太子か姫様、ギルドマスターに説明プリーズ!
俺? 俺は今からハウレスに敵の説明するから。
「ギルドマスター、これが特秘事項だ。詳細を聞くな、誰にも言うな、ただ受け入れろ」
「いやいやいや、そう言われても無理だろ!
まだお前が、実は筋肉ムキムキでモンスターを素手で蹂躙する、って言われた方が納得出来るわ!」
「そんな非科学的な」
「動物が喋る方が非科学的だろ! モンスターだとしてもおかしいだろ!
それに召喚だと?! 過去にあったと言われる魔法じゃねぇか!! 使える奴が居たのかよ!!」
「そんなに詳細が聞きたいのか?
知り過ぎても良い事は一つも無いぞ? 最悪城で幽閉って事にもなりかねないぞ?」
「…………そんなにヤバい話なのかよ」
「なにせこの国の王が、この者の事を優遇しているからな。
それに逆らってしまえば……」
「……判った。もう聞かねぇ」
あっちは話がまとまったようだ。
「え~と、ハウレス」
「なんでござる?」
「あの山にゴブルトというモンスターが住み着いているらしいんで、討伐して欲しいんだ」
「了解したでござる!」
「姿とか判る?」
「大丈夫でござる! 山に居るモンスター全てを殺せば問題無いと考えますに」
えっ?! それって良いのかなぁ?