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すれ違い女騎士団長と魔法師団長(短編版)

大陸屈指の大国、エレンガルド。その領土は広大であり、周囲には常に数多くの敵を抱えている。


しかし、この国が誇る2人の英雄がその脅威を寄せ付けなかった。


1人は、騎士。


流麗な剣技と人並外れた速度で戦場を駆け抜ける一騎当千の剣姫。


1人は、魔道士。


圧倒的な魔力と破壊力で戦場を敵の死骸で埋め尽くす死神。



国のために尽くし、その力を内心認め合う2人。いや、彼らには互いに尊敬以上の感情さえあった。


しかし、彼らはある問題を抱えていた。それは―――





―――――――――――



「だぁ~からよおおお!何度言えば分かるんだ!頭の中まで筋肉が詰まってんじゃねーのか!?今回の手柄はどう考えても俺ら魔法師団のもんだろう!」



「ああ、何言ってやがる?てめえら軟弱者は後ろから魔法を飛ばしてただけだろうが!敵の将軍の首を取ったのは俺ら騎士団だ!」



「俺らが前線の敵を消したから将軍のとこまで行けたのだろう!そんなことすら分からんのか?」



「誰もそんなこと頼んでねーよ!お前らがボコボコ魔法を撃って地形を変えなきゃ、もっと早く敵を切り伏せて将軍の所まで行けてたわ!」



「なんだと!?」



「文句あんのかこら?」



2人はなおも言い争いを続ける。しかし、話はどこまでいっても平行線で一向に進む気配がない。



「「ぐぬぬぬ、こうなったらしょうがねえ。このバカに言ってやってください、団長!今回の勝利は騎士団(魔法師団)の力だって!」」



声を荒らげた2人が指名したのは、この国の騎士団長と筆頭魔法師である魔法師団長であった。



エレンガルドでは代々、剣を用いて戦う騎士団と魔法を使う魔法師団が軍として存在する。それぞれの軍は騎士団長と魔法師団長がトップに君臨し、まとめてきた。


2つの軍を管理する責任者はおらず、騎士団長と魔法師団長は同格と見なされる。



しかし、それに不満を持つものがいた。それぞれの軍の兵士だ。彼らはそもそも、お互いに仲が良くない。騎士は魔法師を軟弱者と、魔法師は騎士を脳筋と蔑み、常に己の方が優位であると主張しあってきた。


そこで彼らはある計画を立てる。戦で功績を残し、自らの団長を両軍の指揮者に昇格をさせるというものだ。トップに自軍のものが就いてしまえば、相手は大きな顔をできなくなる。



そのような経緯から、両軍は味方でありながら常に争ってきた。ようするに、仲が悪いのである。



しかし、それは全体で見ればの話だ。普通に友人として仲が良いものもいるし、家族で別々の軍に所属している場合もある。



両団長もお互いに憧れを抱いていた。同じような立場ゆえの共感もあったし、男は強く可憐な騎士に惹かれ、女は賢く頼れる男に惹かれていた。



だがしかし、2人は敵対する組織の長であった。下っ端なら仲良くしようが、別に誰も気に留めなかっただろう。



もし2人が笑顔で手を組みながら散歩でもしようものなら、お互いを敵視する部下達が、失望してついてこなくなってしまうかもしれない。団長としてそんな事態は受け入れるわけにはいかない。



かくして、お互いに恋心を持ちながらも2人の態度は……



「やっぱり、どう考えても今回の第一功は敵将を討ち取った私たちでしょう?後ろで怯えてた魔法師が手柄を挙げたと報告しては、国王陛下も納得しないわ。」(ああああ、ちがうの!全然そんなこと思ってないから!あなたが後ろにいてくれるから私は安心して敵陣に乗り込めるの!本当は、何かあってもあなたなら助けてくれるって頼りにしてるのよぉぉぉぉ!)



「何を言うかと思えば、全く状況が理解出来ていないな。敵の陣形を我々が崩したからこそ、騎士団が乗り込めたのだろう。お膳立てをしてもらっておきながら、図々しく手柄を主張するとはこれだから野蛮人は…」(うぐ、お、俺は臆病者と思われていたのか?確かに、勇敢で美しい彼女と比べたらそうかもしれないけど…好きな女性にそう思われるのはなかなかきつい…。本当は前線で彼女を守りたいが、かえって彼女の邪魔になるかもしれないし、しかもそれで嫌われたりしたら…)



「野蛮人はどっちよ。あなた達の魔法のせいで、土地がボロボロじゃない。いくら敵が早く片付いたからって、奪った農地が荒地になっては全く意味が無いじゃない。大人しく全て騎士団に任せておけばよかったのよ。」(や、野蛮人!?う、嘘でしょ?あたし、そんな風に見られてたなんて…。恋人になるどころか女としてすら見てもらえてないの?全く脈なし?う、うー。やばい、泣いちゃいそう。しっかり顔を引き締めなきゃ…)



「ふん、東の帝国に動きがあると報告があったのを忘れたのか?時間をかければ他国に付け入る隙を与える。我々には敵が多いのだ。目の前の利益に執着しすぎれば、足元をすくわれるぞ。」(ええ、こわ…めっちゃ厳しい顔してるよ。どんだけ俺のこと嫌いなんだよ、へこむわぁ。あ、でも怒った顔もやっぱキレイだよなあ。ああ、立場も何もかも捨てて告白してしまいたい…)



「偉そうに上から目線でお説教?あなたと話していると疲れるわ、時間の無駄ね。悪いけど私はこれで失礼するわ。」(嘘です、ごめんなさい。本当はめちゃくちゃ癒されます。でも、なんていうかもう無理!精神的ショックもだけど、ドキドキとかが許容限界です。だってかっこいいんだもん!ああああもう大好き!)



「ああ、そうしてくれると助かるよ。俺も話の通じない者との会話は苦痛だからね。ちょうど部屋でゆっくり休みたいと思っていたんだ。」(うう、今日も何も発展できずに貴重な彼女との時間が終わってしまった…。次に話せるのはまた戦の時だろうか?ああ、もうこの国一年中攻め続けられればいいのに…)



ご覧の有様である。



こうして今日も騎士団長と魔法師団長はすれ違いを続けていく。



果たして、彼らが無事結ばれる日はやってくるのだろうか?



それは、まだ誰にも分からないのであった…




評価・感想などいただけると飛び跳ねた上奇妙な踊りを踊りだしながら喜びます。


恋愛ジャンルには初投稿です。いつもはギャグばかりなので。いやこれもギャグみたいなものですけどね。


書いててわりと楽しかったので、需要があれば連載版でも書こうかなと思います。まあ多分そんなものはないでしょうけどね、ハハハ。


※さすがにもう消えたかと思ったらまだ日刊ランキング残ってました。ポイントも200を超えました。ありがとうございます!


ということで、失われてたやる気が戻ったのもありまして、需要があるかはともかく上記に書いた通り連載版書いてみようかと思います!


※連載版開始しました!よろしければそちらもお読みください!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新着の短編小説欄で見掛けて読ませて頂きました。 なかなか面白いお話でした。 ふたりの関係が崩れるとすれば、部下の暴走とかかもしれませんね。 [気になる点] 誤字・脱字・衍字等の報告 ①「だ…
[良い点] ダブルでツンデレ……ありです‼︎ [一言] また機会があれば読ませていただきます。 ささやかながら評価させていただきました。 自分も投稿やってます。よろしければ読んでくださると嬉しいです…
2018/05/12 13:43 退会済み
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