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003 歩目

本日三話目


 木っ端微塵になった露店。

 恐慌する区外地区の住民たち。

 暗いスラムの市を押しつぶすような煙をかき分け、少女は走った。


「はぁ、はぁ!」


 息があがり、意識は朦朧とする。

 しかし、少女は立ち止まることができない。


「はっ、はぁ、――っきゃあ!!」


 少女が駆け抜けたすぐ後ろで、再び爆発が起こった。

 背と足を爆熱が焦がす。

 骨肉を焼かれる痛みに耐えながら、ほとんどボロ布になりはてた制服を抑え、少女は走る。


「(私が、私が何したっていうんだ――!)」


 背後から聞こえてくる高笑い。

 追い立てられ、逃げるままに走り続け、

 ついには魔窟、区外地区にまで迷い込んでしまった。

 ここは完全な治外法権。

 警察や勇者の手すらも届かない魑魅魍魎の住処だ。


 誰かが少女を助けてくれる可能性はすでに潰えた。

 終わりのない逃走に心がすでに折れながらも、

 背後に迫る爆発が、少女に立ち止まることを許さない。


 少女は煤けてしまった白髪を乱し、

 赤い目からボロボロと涙を流しながら走る。


 ――こんなはずではなかった。

 幼い頃から、人目を引いてしまうこの外見のせいで、常に人に避けられていた。

 それでも諦めずに血の滲むような努力を重ね、

 ついにはあの最高峰の学園に入るまでに登りつめた。


 しかし、真新しい制服に身を包み、希望を胸に叩いた門の先で待っていたのは、

 相も変わらぬ、ただの地獄だった。


 白すぎる肌と髪。

 蛇のように裂けた口と真っ赤な目はまるで化物。

 人は少女を見てはずギョッと目を見開き、

 次に眉を顰めてヒソヒソとささやきあう。


 少女の“遺伝”は、どこまでも呪いとして少女に纏わり続けた。

 入った学園では質の悪い連中に目を付けられ、オモチャのように嬲られ、

 挙句の果てに、死にかけた浮浪児のような姿でスラムを走らされている。


 ――いっそのこと死んでしまいたい。

 何度も何度もそう思った。

 それでも、少女の“遺伝”はそれすらも許さなかった。


 死ねない異能。

 まともに生きれない遺伝。

 何度も恨み、憎んだ少女の“先祖返り”の血は、

 しかし皮肉にも少女をこの場所まで逃げることを可能にしていた。


「(どこかに隠れて、なんとか逃げなきゃ……えっ?)」


 爆風に転がされるように市から抜け、

 薄暗い路地に走り込んんだ。

 どこか隠れる場所をと前を向いた時、

 ふいに、進行方向にガラの悪い金髪の青年が立っていることに気がつく。

「(うそっ!? 市に居た人は皆逃げ出したんじゃっ。このままじゃ巻き込んじゃう! 

なんとか――――あっ)」


 目の前に現れた青年に気をとられ、少女は思わず足を止めてしまう。

 瞬間、自分のミスを悟り顔を青ざめるも、――もう遅い。


 背後から少女を追っていた爆発が、少女を飲み込んだ。


「きゃあああああ。――うぐぅ、え?」


 確かに灼熱に包まれた痛みを感じながらも、

 直後に少女の腕を引っ張った何者かによって、

 少女は爆熱の中から強引に引っ張り出された。


「おい、大丈夫かガキ」

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