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20年先のラブストーリー

作者: ななれん

1999年5月、僕は友人の結婚式に招かれていた。

新郎は町工場の跡取り息子(高校時代の悪友である)新婦は同い年の24歳で結婚前は保育士をしていたらしい。

結婚式も無事終了した。


僕達同級生御一行は2次会の会場BARブロスへ移動した。

2次会は男10人女6人で比率は良くないもののビンゴやカラオケでそれなりに盛り上がっていた。


女性陣は新婦の友達で深津絵里に似た女の子と少しおばちゃんぽいが顔は中の上位の女の子が独身男性の注目の的になっていた。

深夜0時を回る頃に僕は中の上の女の子の隣にいたが特に興味がある訳ではなかったので適当に話を合わせて時間は過ぎていった。


次の日の夕方に友人の和希から電話があった「昨日はお疲れ様、ルーちゃんの電話番号聞いてたろ!電話した?」僕は「聞いてないよ、ルーちゃんてどの子?」と答えた。

和希の説明を受けて中の上の女の子の名前が成美だという事を始めて知った。

「電話番号GETって言ってスーツの胸ポケットにいれよったろ?!」

「本当に記憶が無い!」そもそも僕には5年付き合ってる彼女もいるし、多分今の彼女と結婚するだろうと思って毎日を過ごしていたので自分でも他の女の子の電話番号を聞いてたなんて信じられなかった。

和希いわく「ルーちゃんの彼氏地元に帰って長崎に居ないしチャンスだぜ!」もともと和希は小悪魔的な性格で波風立てるのが大好きな人間だ。

もし僕がその子と付き合ったら双方彼氏彼女持ちの泥沼状態になってしまうじゃないかと思い寒気がした。

それに僕は深津絵里似の方がタイプで成美さん事は顔さえも良く覚えていなかった。

自宅に帰り結婚式に着て行ったスーツの胸ポケットを探してみると本当に見知らぬ電話番号が入っている。

一応気が向いたらと思い、しばらく財布の中へ入れておくことにした。

それから3日後僕は一人残業で会社に残っていた。

会社から与えられた退職者の顧客リスト

(疎遠客)へのテレコールでクレームの嵐だった。

知らない顧客へテレコールを繰り返している間にふと成美さんと電話番号の事を思い出した。

ひょっとしたら仕事に繋がるかもしれないし、迷惑そうならセールストークでそつなく電話を切ればいい。

僕は仕事の流れのまま電話へ手を伸ばし成美さんの自宅へ電話していた。

もし、親が出たら会社名を名乗りいつも通りセールストークで本人を呼んでもらえば良い。

数回の呼び出し音の後に若い女性の声「もしもし」僕は自分の名前を名乗り「成美さんはご在宅ですか?」と尋ねる。

女性の声「私ですけど」声は覚えていないけど本人みたいだ。

「こないだ、結婚式の2次会で話したものですけど」成美さん「あぁ、本当にかかって来るとは思わなかった」笑いながら答える成美に好感がもてた。

一通りの世間話をしてからダメモトでドライブに誘ってみた、成美さんは彼氏がいるので気がひけると言ってたが、僕はお構い無しに顔も覚えていない成美さんを軽い気持ちでドライブに誘った。


次の日曜日に成美さんの自宅近くの神社で待ち合わせをした。

待ち合わせ場所には10分前に到着したが成美さんの姿はまだ無かった。

とりあえず車を降りて周りを見渡すが女性の姿は見当たらない、なにせ僕は成美さんの顔も良く覚えていないのだから向こうから声をかけてもらわないと分からない。

しばらくして、成美さんらしき女性が車に近づいてきた。

「おはようございます」成美さんだろう。

僕も「おはようございます」よく見るとなかなか可愛い、雰囲気的には安田成美のような清楚な感じだが僕のタイプとは何かがら違うと感じていた。

行き先は決めていなかったが、とりあえず高速道路に乗って県外へと出発した。

地元では僕の彼女や友達に目撃される可能性があり危険と思ったからだ。

何処へ行こうか話しているうちに成美さんの提案で隣の県の「見返りの滝」へ行く事になった。

僕は一度も行った事が無く、成美さんの指示に従って目的地へと向かった。

「見返りの滝」とは佐賀県の観光名所で僕達が行った時はあじさいの花が満開でとても綺麗な渓谷だった。

成美さんは終始子供のような笑顔で素敵な女性だなと始めて思った。

この時に僕は成美さんに初めて好意をいだいたのかも知れない。

それから「科学館に行ってみない?」成美さんが言った。

「いいよ」僕はそう答えてはみたものの「大人が科学館かい?!」心の中でそう呟いた。

科学館は親子連れがたくさんいて賑わっている。

しかし、若いカップルは他にいないようである、よくよく考えると科学館とは子供向けに設備が整ってはいるが年頃の男女が一体何をすれば良いのかと疑問に思っていた。

しかし、成美さんは全力で遊具で遊び始めたではないか。

僕もなるべく同じテンションで付き合う事にしたのだがやっぱり疲れた。

夜は早く送り帰すつもりだったのと少し疲れていたので早めに帰路に着つく事にした。

午後7時、成美さんの自宅近くに到着し僕は尋ねた「どうする、帰る?それとも少しだけお話しする?」成美さんは「少しだけなら」と答えたので近くの稲佐山に登り市内の夜景を眺めながら話をした。

お互いの趣味や彼氏彼女の事、彼氏とは大学時代からの付き合いで今は遠距離恋愛をしている事、毎日職場と自宅の往復でつまらない事。

そして僕は成美さんの笑顔が素敵な事、子供みたいに無邪気な事、そんな成美さんに少しだけ恋心を抱いていたのかもしれない。

そして僕は生まれて初めて一目惚れ(正確には会うのは2回目なのだが)している自分に気づいた。

そこで僕は言った「次はいつにする?」これは僕の掛けだった。

断れば脈は無いと思っていたし、断らなければその逆だ。

成美さんは「彼女がいるのに良いの?」お互い様だが、僕は「2人のこの時間を僕が求めて貴女もこの時間を求めていてくれるのであればしょうがない事だと思うよ」

成美さんは数秒うつむいて「じゃそれで」と答えた。

こうして2人の「2号さんどうしの付き合い」が始まった。


二日後の夜に僕と成美さんは夕食の約束をしていた。

今回は成美さんが僕の会社へ迎えに来てくれた。

僕は成美さんの助手席へ座り何を食べるかを話していると、美味しいハンバーグ屋があるらしい。

僕としては成美さんと一緒にいれれば楽しかったし、ご飯は何でも良かった。

僕は自分でも日に日に成美さんの事が好きになって行く気がして「彼女いるのにマズイよな」と考えていた。

そして何度か会ううちに僕との連絡ように携帯電話を持って欲しいと成美へ持ちかけた。

成美は彼氏もいる訳だし他の男から自宅に電話があれば家族も変に思うだろうと思ったからだ。

それといつでもメールで僕の気持ちを伝えれたらいいなと思っていた。

成美は彼氏からも携帯電話を持つように言われていたらしく二つ返事で了承してくれた。

翌日仕事終わりの成美は僕の会社まで来て

二人で携帯電話を契約に行った。

僕の会社でも携帯電話は販売していたのだが成美の彼氏は違うメーカーの携帯電話を使っていた為やむなく彼氏と同じメーカーの携帯電話を購入する事となった。


成美が携帯電話を持った事で僕達は毎日のようにメールのやり取りをして休みの日は2人で遠方まで出かけ帰りはいつも車の中でその時の別れを惜しんでいた。

そして僕達は車の中で隠れてキスをした。

不思議と彼女がいるのに浮気したという思いよりも成美をもっと好きになっていくのが嬉しくてしょうがなかった。

成美と出会って3ヶ月が過ぎようとした頃、初めて聞く暗い声で成美から電話があった。

「彼氏と大ゲンカした。そしてプロポーズされた」と成美は呟いた。

僕出会うまでは会社と自宅の往復で、夜にお出かけなんてしていなかった訳だし、携帯電話を持ってからも僕といる時は携帯電話の電源を切っていたようで彼氏からしてみれば行動がおかしいと思われてもしょうがない。

そして僕は「なんて答えたの?」と訪ねた。

成美は答えは「少し待って」と言ってあると言った。

僕は急に胸が苦しくなり沢山の思いがこみ上げてきた。

「離したくない、そう誰にも渡したくない」

そう思った。

次の瞬間僕の彼女の顔が頭に浮かんだ。

頭が混乱して答えを出せない僕は「明日会えないかな?」と成美に訪ねた。

成美は「分かった明日の夜に」そうして電話は切れた。

僕は今世界中の誰よりも成美の事が大好きだという事は自分でも分かっていた。

明日成美と会ったらなんて言おう「過ごした日々は彼氏に比べれば少ないかもしれない。

でも成美を愛する気持ちは世界中の誰にも負けない。だから行かないでくれ僕が君を一生守るから」そう伝えたいと心の底からそう思った。

そして僕は彼女になんて告げよう。

「好きな子が出来た。別れて欲しい」

そう伝えるしかない。

自分の気持ちには嘘はつけないと思ってぼくは直ぐに彼女へ電話をかけた。

別れ話しを電話で済ませたくはなかったので遠回しに「もし僕が浮気とかしたらどうする?」と訪ねると彼女は「死ぬ」と一言。

「それは極論過ぎないか?」と言うと「親からも裏切られ今のウチにはアナタしか居ないだから、もしアナタから裏切られたら私は生きていけない。」泣きながら答える彼女に僕は「へんな質問してごめん」としか言えなかった。

数分の沈黙の後、僕は彼女の不可解な言葉を思い出した「親からも裏切られ」だ。

改めて「さっきの親からも裏切られってどう言う事?」僕は訪ねた。

彼女は泣きながら「今日裁判所から出廷命令」が来たと言った。

彼女は僕に心配かけまいと一人で今日一日泣いていたらしい。そこに僕が追い打ちをかけたようだ。

僕は心が大きく揺れた。

成美への気持ちは本物だ、しかし20才の女の子が裁判所からの出廷命令が来たと言っている。

僕は彼女へこう言った「僕がいるから大丈夫!今からそっちへ行くから待ってて」

そう言って僕は彼女の元へ駆けつけた。


僕は彼女の家に到着した。

彼女は既に泣きやんでいたが、いつになく落ち込んでいるのがわかった。

僕は彼女宛の出廷命令に目を通し状況を把握した。

「それでお母さんは何て言ってるの?」僕が尋ねると彼女は「ごめん、お母さんがなんとかする」と言ったらしい。

僕は彼女に「周りで何か変わったことはないか?」と聞いても「分からない」の一点張りだった。

僕は母親がなんとかすると言っているいじょう親子の問題に踏み込めない、イヤ自分の気持ちの負い目から踏み込みたくなかったのかもしれない。

彼女の母親はまだ自宅へ帰ってはいなかったが、彼女は自宅に居たくないと言ったので僕は彼女母親へ置き手紙を残して僕の家へ連れて帰る事にした。

翌朝彼女を僕の部屋に残したまま僕は仕事へ向かった「落ち着くまでずっと居ていいから」と彼女に伝え、僕の両親には「事情があってしばらく泊まる。面倒をみてやって」と

お願いしていた。

その日の仕事は全く手につかず、今夜成美と会うしかし家には彼女を残して来ている。

僕はどうしていいか、自分がどうしたいのか分からずに時間だけが過ぎていった。

午後7時僕は成美と会っていた。

僕は成美に「アナタはどうしたいの?お互い2号さん同士の付き合いなんだから本命と結婚するのが当たり前なのかもしれないね。」

そしてこう付け加えた「僕がアナタと結婚するとなると今すぐは出来ない。それが1年後なのか2年後なのかも分からない。それまでアナタは僕を待てますか?」成美は「はぁ、やっぱり結婚するのが普通よね」そう言った。








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