〜第6話〜敵国の門番を蹂躙
フェルナンは後ろに飛び退く。
「てめえら、何やってやがる」
わけがわからないといった感じで言う。
「あのーフェルナンさん、誤解しないでください。僕たちはインボイの皆様にご挨拶に来ただけで、決して危害を加えようというわけではないんです」
レオンが言う。
「ハハハハハハハ、何を言うかと思えば、ゾゾリマのクソどもが『インボイに危害を加えるつもりはない?』随分と笑えるジョークだな」
「いや、本当です。あ、そうだ。これフェルナンさんにも差し上げます。ゾゾリマ名物のマクハ魚の佃煮です」
レオンは懐から包み紙を取りだす。
「どうぞ、皆様で召し上がってください」
「……ジョークがくどくて笑えねえよ」
フェルナンは真顔になって牙を剥いた。そして爪を立ててレオンに飛びかかる。
「あ、そんな焦らなくても、大丈夫ですよ」
レオンは振りかざされた爪をよける。フェルナンの爪は嵐のようにレオンを襲う。
が、レオンはそれをさらりとすべて避けた。
そしてフェルナンの手首を掴んだ。
「爪をたてちゃうと包み紙が破れちゃうんで、それをしまってくださいね」
そう言ってフェルナンに包み紙を渡そうとする。
フェルナンは顔面蒼白になりながらレオンの手を振りほどき後ろに飛び退く。
「クソ、こうなったら」
フェルナンは右の爪に力をこめる。フェルナンの爪に竜巻のような風がまとう。
これはフェルナンの最強魔法、これを受けた者は例え全身がオリハルコンでできていようと握りつぶしたゼリーのようにグチャグチャになる。
「フェリオバラム」
フェルナンの手から放たれた竜巻がレオンを襲う。
放心状態にあったオーティズは気がつき、レオンを守ろうとするが間に合わない。
竜巻はレオンを飲み込んだ。
「クハハハハハ、短い人生だったなゾゾリマの新魔王」
フェルナンは笑った。
「……どうしよう?」
「……は?」
竜巻がおさまると、土煙からレオンの姿が見えた。
「お土産が、ボロボロになってしまいました」
レオンの手元にはボロボロの包み紙。が、彼の身体には傷ひとつない。
「すみませんフェルナンさん。そよ風みたいなものだと思ったんで、よけずに受けてしまったら、お土産がボロボロになってしまいました。本当にすみません。一応まだ食べれるとは思うんですが」
そう言ってレオンは近づく。フェルナンは汗をダラダラと流しながら後ずさる。
「ば、ば、バケモノ……」
フェルナンはそう呟くと一目散に逃げ出した。
「ちょっと待ってくださいよー」とレオンは言うが、フェルナンは振り返ることもしない。
レオンはオーティズに言う。
「どうしましょう。お土産がダメになったんで、フェルナンさん気分を害して帰ってしまいました」
レオンも、そう言われたオーティズも困り顔であった。