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新魔王がいい人すぎたせいで世界秩序が崩壊しだす  作者: 進藤尚典
〜第1章〜新魔王誕生、そして即蹂躙
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〜第5話〜侵攻・魔獣の国インボイ

 ゾゾリマとインボイの国境近くにある森を、レオン、オーティズ、アグバの3人が歩いていた。

 顔面蒼白で、体を震わせるアグバ。ピンと身体を張りつめ周囲からの襲撃に備えるオーティズ。ゾゾリマ名産を小脇に抱えるんるんと歩くレオン。

 まさに三者三様だった。

 たった3人でインボイまでおもむくというレオンに、ゾゾリマの魔族たちは驚愕した。


「レオン様正気か……、インボイの魔族たちは戦闘力が高い、獰猛な魔獣どもだぜ」


「見ろ。レオン様は恐れるどころかむしろうきうきしているように見える。きっと自分の魔力に相当の自信があるんだろう」


「確かに。あれはインボイのクソどもを皆殺しにする想像をなさってる顔だぜ」


 このようにゾゾリマの魔族たちの結論は落ちついた。


 ゾゾリマとインボイの国境が近づくにつれ、オーティズは緊張感を高めていく。

 そしてそれに応えるように、斬撃が飛んだ。


「レオン様」


 オーティズはレオンをかばいながら身をひるがえす。


「ゾゾリマのねずみどもが何の用だ?」


 全身を灰色の毛で覆われた獣人が現れた。


「あのおすみません。新しくゾゾリマの王になりましたレオンです。そこでインボイの皆様にご挨拶をと思いまして」


「ははははははは、レロンが死んだという噂は本当らしいな。そして新しい王はとんでもないバカ息子らしい。これはゾゾリマも終わりだな」


 灰色の獣人は笑う。


「聞き捨てならんな」


 そう言ってオーティズが一歩前に出る。


「……誰かと思えば、『100頭斬り』のオーティズか。てめえには何人も同胞が殺された……いつかお返しをしてやろうと思っていたところだ」


 灰色の獣人は鋭い爪を舐める。


「俺はインボイの門番、疾風かぜのフェルナンよ」


 フェルナンはオーティズに飛びかかる。オーティズは腰の剣を抜き、フェルナンの爪を受ける。

 カキンと音が鳴りふたりは後ろに飛び退く。

 フェルナンの爪が風をまとい、彼が腕を振ると風の斬撃が飛ぶ。先ほど3人を襲ったものだ。

 オーティズも剣にオーラをまとわせ斬撃を飛ばす。二つの斬撃が宙で激突し打ち消しあった。

 フェルナンはその隙に地面を凄まじい速さで駆けた。疾風のフェルナンの名が示す通り、彼の脚は凄まじく速い。

 オーティズの目前に瞬間移動したかのようにフェルナンが現れる。


「死ね」


 フェルナンは爪でオーティズの胸を貫こうとする。

 オーティズは、不敵に笑った。


「遅い」


 フェルナンが「え?」と思ったとき、彼の視界からオーティズの姿は消えていた。


「その程度で疾風を名乗るとは、疾風もずいぶんとなめられたものだな」


 オーティズは完全にフェルナンの背後にまわっていた。そしてオーティズの剣はフェルナンの背中目掛けて振り下ろされた。

 

 ガチッ


「……だめじゃないですか。オーティズさん」


「…………は?」


 オーティズの剣はがっちりと掴まれていた。

 掴んでいたのはレオンの親指と人差し指だった。


「いくら邪険にされたからって、いきなり斬りかかっちゃだめですよ。ちょっと冗談が過ぎますって」


 レオンは苦笑いしながら言った。

 オーティズは信じられないという面もちでレオンを見つめた。

 オーティズから見てフェルナンの動きなど赤ん坊がはいはいがごときスピードでしかない。

 しかし、レオンが目の前に現れた動きは、少しも見えていなかった。

 しかも、獣人の厚き皮を貫こうと力を込めた剣を、レオンはたった2本の指で止めた。

 オーティズは目の前の困り顔の主君に、背筋が凍っていた。

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