表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新魔王がいい人すぎたせいで世界秩序が崩壊しだす  作者: 進藤尚典
〜第1章〜新魔王誕生、そして即蹂躙
3/63

〜第3話〜新魔王の御成りである

「アグバ様、これからゾゾリマはどうなっていくのでしょうか?」


 レロンが亡くなったことを知った配下の魔族が、宰相のアグバに尋ねた。

 アグバは配下にそっと耳打ちをした。


「……何をうろたえておるのだ。これはチャンスだ」


 アグバは他の者から見えないように笑みを浮かべた。


「この国を圧倒的な魔力で押さえ込んでいたレロンが死んだ。奴は後継者としてひっそりと息子を培養していたようだが……、知恵にしても魔力にしてもレロンの足元にも及ばぬ雑魚だろう。煮るも焼くも思いのままよ」


「……しかし、レロン様が亡くなったことを知れば、他国や人間どもがゾゾリマを滅ぼしにやってくるのでは?」


「はははは、こんなこともあろうかと、私は某国と繋がっていたのだよ」


「……なっ」


「レオンとかいうバカ息子を売り渡し、私は新たにゾゾリマの魔王として君臨する。念願の叶う日は近いのう。くくくくく」


 アグバは口元の笑みを袖で隠した。配下もつられて笑みを浮かべる。

 が、急に新妙な顔になり言った。


「しかし、気がかりはオーティズです。奴がやすやすとそれを許すでしょうか?」


 アグバの顔が曇る。


「確かに、『100頭斬り』の異名をもち、レロンとも懇意の間柄であった奴は邪魔だ。やっかいなことにあの若僧は頭も多少は回る。奴を一刻も早く排除するのが先決であるな」


 この瞬間けたたましくドラが鳴った。つづけてラッパも鳴らされる。


「新魔王の御成りであるぞ」


 この掛け声とともに、数万という魔族が玉座にひれ伏した。

 先頭でひれ伏すアグバ。彼はそっと顔を上げ、レロンの息子で、これから自らのロボットとなるであろう男の顔を見ようとした。


「……っ!?」


 アグバは言葉を失った。

 なんだこれは?こんな凶悪な顔の者には会ったことがない。

 アグバは以前、他の国の魔王とも顔を合わせたことがある。

 が、レオンのような、近くにいるだけで自分の身の危険が迫るような気持ちにさせる邪気をもったものは初めてである。

 アグバは思わず吐きそうになった。

 玉座の間の魔族たちに目をやり、新たに魔王となるレオンは言った。


「えーっと、みなさんはじめまして。先代の父に代わりまして王位を継ぐことになりましたレオンです。父が急に亡くなったことでみなさんも戸惑われたと思います。そんな中、お忙しい中集まっていただきましてありがとうございました。僕もできるだけがんばっていきますので、ここは皆さん一致団結して、この困難を乗り越えていきましょう」


 レオンの口調は実に柔らかい。だが、魔族たちはざわめいた。

 レオンは『あの』魔王レロンの息子である。冷酷でないわけがない。

 レオンの『表面上優しそうに聞こえる』口調と、凄まじい邪気のギャップが、今後自分たちに降りかかるであろう無慈悲な命令を予想させ、魔族たちはじっとりと汗を流していた。


「アグバさん、こちらに来てもらっていいですか」


「っ!!!??」


 アグバの背筋に電流が走った。


「はっ、レオン様、何でございましょうか」


「魔子宮の水から教わりました。アグバさんはとても外交がお得意な方だって」


「え……あの……」


 アグバは喉が詰まった。


「外交は国にとってとても大切なことです。これからもずっとゾゾリマのためにお力添えをお願いいたします」


「……はっ当然であります!!この宰相アクバ、ゾゾリマを裏切ることなど決してございませんっ!!」


 アグバは自分の甘い予測が裏切られたことを確信した。

 新しい魔王はとてつもない鋭利さをもっている。すでに自分の内通に勘づき、この様に恐ろしい笑顔を浮かべて圧力を掛けてきている。

 アグバはただただ平伏するしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ