我式怪異撃退法
「交渉を始めようか、ヤシの木もどき」
言って、爽太はイナシの背から飛び降りた。
「爽太、危険です!」
「他の怪異の牽制はよろしくね」
着地すると同時、獣たちの視線が爽太に集中する。いまにも跳びかかろうと脚に力を込めたものもいたが、その視線はすぐさま、低く唸り声をあげて殺気を放つイナシの方に向けられた。
「次に背中に上がるのは、交渉が終わるときだね」
爽太は足を踏みだし、イナシの前へ出る。イナシの顔の真下、虎の威を借る狐のポジションに立つ。
人質を取った相手に、物理的な手段をとれないのであれば、できることはひとつしかない。交渉だ。言葉を交わし、意思の疎通ができるのであれば、爽太にとっては何も問題ない。
――いっちょやりますか!
ここは爽太の独擅場。交渉ができるのは爽太しかいない。
怪異への恐怖はない。交渉への不安もない。プレッシャーも当然ない。これまでの汚名返上、そして、初の交渉成功を賭け、爽太は怪異との交渉に臨む。
爽太は怪異に呼びかける。
「お話ししようか」
「動クナト言ッテイル」
「そんな警戒しなくても、僕には戦う力はないよ。特別な力もないし、そこに落ちてる竹刀を拾ったとしても、一矢報いることもできずにやられるだろうね」
両手を上げて手のひらを向け、脱力した笑みを見せる。
爽太流交渉術の基本。物理的な手段に訴えることはないと、相手に信用させる。用いるものは言葉だけ。実際に、爽太には言葉以外に頼れる武器など存在しない。
「だから、お話」
両手はそのままで、言葉を続ける。
「まずは聞きたいんだけどさ、キミは何がしたいの? 動くなー、の一点張りだけど。何か要求でもあるの?」
相手の目的、理屈、感情。現状と希望するものを正確に把握する。譲れないのは何か、妥協点はどこか。それを探るためだ。
「要求……」
オウム返しに呟き、怪異は口を噤んでしまった。
口以外に意思表示ができるパーツがまったくと言っていいほどないため、黙ってしまわれると思考を想像することすら難しい。
沈黙に少し不安に駆られるが、さほど待つこともなく答えは返ってきた。
「ソノ犬ガ欲シイ」
それは単刀直入な意思表示。
「却下」
返す刀で断る。
爽太は両手を下ろし、手で大きなバツを作る。
「残念だけど駄目。その要求は受け入れられません」
「殺スゾ」
「あー、それも駄目! 絶対に駄目!」
爽太はわたわたと両手を動かす。
「いやほら、そんな簡単に殺しちゃったら人質の意味がないでしょ? 殺しちゃったらそれで終わりだよ。その瞬間、イナシがキミを殺しちゃうよ? それはいけない。それは誰も得しないよね、うん!」
「デハ、犬ヲ寄越セ」
「いやー、それはねえ…………。うーん」
口ごもる。
『おい』
「ん?」
『お前に任せて大丈夫なのか?』
声しか聞こえていないエルテスラにも、爽太の様子には不安しか感じられないようである。
「大丈夫大丈夫」
あっはっは、と続くのは乾いた笑い。
「苦戦してる時は話の流れを変える! これが基本だね」
ぴっ、と人差し指を立て、もう一方の手を腰に当てる。エルテスラの疑念を振り切り、一転、自信に満ちたポーズで爽太は口を開く。
「そもそもさ、なんでイナシが欲しいの? 吸収するのが目的だっていうのは予想できるけど、なんで目当てがイナシなの?」
「デカイカラ」
怪異の答えは明快だ。
爽太は立てた人差し指を額に当て、
「なるほど…………。つまりキミは成長したい。強くなりたいというわけか」
数度、深く頷く。
のち、ばっと目を見開く。そして、指をびしっと怪異に突きつけ、
「そんなキミに心躍る提案だ! ――僕と一緒にこの町の怪異を退治しようぜッ!」
言い放った。
「却下」
「なんでだよー。脊髄反射で断るなよー」
『いや、断るだろう』
「交渉はただ要求を押し付ける場ではありませんよ」
エルテスラどころか、イナシまで苦言を呈してきた。
味方からも散々な言われようだが、爽太の提案は決して適当に言ったものではない。
爽太と一緒に怪異を退治する。そうすればどうなるかは簡単だ。怪異を退治し、吸収すれば、怪異はどんどん大きく、強くなれる。町の人間は怪異の脅威から守られ、安心安全な暮らしを送れる。双方にメリットのある良いプランであるはずだ。
「どうするのが得なのかを冷静に考えよう。ね?」
「却下」
「だからなんでだよー」
「最モ得ヲスルノハ、コレダ」
言い終える前に、触手が動いていた。
「爽太ッ!」
数本の触手が唸りを上げ、棒立ちの爽太に殺到する。
「――ッ!」
しかしそれよりも早く、イナシが動く。眼前に立っていた爽太を、その鼻先で真横に押しやる。もとい、吹っ飛ばす。
さらに自らも横に跳び、触手の射程を逃れた。
一瞬の間を置き、地面に触手の打撃が打ち下ろされる。それは力任せに叩きつける動き。まともに喰らっていれば、そのまま押さえつけられていとも簡単に吸収されていただろう。
「躱シタカ……」
イナシは怪異に油断ない視線を送る。追撃の様子はなく、触手も大人しく元いた位置に戻っていく。
「いやー、怖いね。スリリングだね」
爽太は地面に転がったまま呟いた。
「爽太、無事ですか?」
「平気だよー」
言いながら、地面に手を突き立ち上がる。そして、服に着いた砂を手で払ったのち、
「爽太……なぜ背中に?」
イナシの足に手をかけ、よじ登る。
「やっぱり無理だったね、うん!」
力強く頷き、背中の定位置にどかっと座る。
「戻ったということは――」
「うん、やめ。交渉はやめだよ。これはどうしようもないねえ」
うなだれるでもなく唇を噛むでもなく、快活とした表情で答えてみせる。
交渉は失敗だ。
諦めが早いが、これ以上交渉の余地はない。もう怪異の側は話をする気などない。向こうが明確な殺意を見せてきた時点で、切り上げてしまうのが得策。怪異との交渉は引き際が肝心だ。
『結果を出せんのなら大口をたたくな、馬鹿モノが』
「まあ、期待してはいなかったので」
手厳しい意見。残念ながら汚名はこうして塗り重ねられていくのである。
「でも次の手もあるから!」
このまま終わるのはさすがに爽太もばつが悪い。この抜き差しならぬ状況で、相手を怒らせたうえに解決を他人に丸投げというのは無責任にもほどがある。
「僕が囮になるから、怪異が気を取られてる隙にイナシが触手を切り裂くっててはどうかな?」
「囮として機能するほど逃げ回れると思いますか?」
「あー」
「それ以前に、そんな危険が及ぶ方法に賛成すると思っていますか?」
「やっぱり無理?」
「それをするぐらいなら、怪異の要求通りに私の身体を差し出す振りをして、隙を見て遠見を助け出す方が得策だと思いますね」
「まだそっちの方が可能性高いかなあ」
『おいおい待て待て』
会話を遮るエルテスラの声。
『何を揃って自暴自棄な話をしている』
「人聞きが悪いなあ。限られた選択肢の中から最良のものを選んでるだけだよ」
『言い換えても同じことだ。まったく、さっきまでの余裕はどこに行った。特に守護犬! 貴様には守護精霊としての矜持というものがないのか? 怪異相手には堂々と構えているべきだろうが』
「いやいや、そうは言ってもさあ」
『その体たらくでは仕方がない。今回は我が代わりを務めてやろう』
「え?」
突然の申し出に、呆けた声が出た。
「どゆこと?」
『腑抜けな貴様らに変わって、我がこの状況を打破してやろうと言っているのだ』
「ラさんが?」
爽太は自分の耳を疑った。常日頃、周りの人間からちょっとやそっとのことでは動じない強い精神力の持ち主と評される爽太だが、いまは困惑の表情がありありと顔に浮かんでいる。
エルテスラは何を言っているのだろうか。イナシの腹の中に納まって、動くこともできなければ外の様子を知ることもできない分際なのに。そんな思いが頭を巡る。
だから、率直な言葉が口をついて出た。
「無理じゃない?」
『無理なものか。我は天使。悪を祓い清めることもその役目である。あの程度の怪異、取るに足らんわ』
「私の腹から出ることなく、そんなことが可能だと言うのですか?」
イナシも狼狽えた声を出す。
爽太とて天使であるエルテスラの力を疑っているわけがない。問題なのはイナシの言った一点なのだ。
『無論可能だ。我にかかれば造作もない。だからここで選手交代。いや、真打登場だな』
エルテスラはこともなげに答えた。相変わらずくぐもって聞こえるその声は、しかし、確かな自信に溢れている。
『貴様らの助力もいらん。イナシ、精々お前が身体の力を抜けばいいだけだ』
「それはどういうことですか?」
訝しげにイナシが問う。しかしエルテスラは、
『問答の時間などない。早速始めるぞ。守護犬、口を開けろ』
説明を省き指示を飛ばす。
エルテスラが何をするつもりなのか、結果何が起こるのかもわからないまま、とんとん拍子に話が進んでいく。怪異が人質を盾にイナシに襲い掛かる可能性もあるので、ぼやぼやしている暇がないのは事実だが、それにしても展開が早い。
イナシはそれ以上の追及をせず、大人しくエルテスラの言葉に従った。心持ち顔を上げ、口を大きく開く。
爽太は、口を挟む隙が見られないので、イナシの背中の上で傍観者に徹する。
『では、いくぞ――』
言った次の瞬間、放たれたのは光だった。
「うわ!」
「――ッ!」
『絶対に閉じるなよ!』
開かれたイナシの口から、光の束が飛び出したのだ。巨体を誇るイナシの口に納まりきらないほどの太さを持った、光の束。
「レーザーッ⁉」
光は飛び出すや否や、四方に散開するように細く枝分かれし、空に昇る。そして、
『散れ!』
地上の獣型の怪異たちへ降り注いだ。
突然の光景に呆気にとられていた獣たちは、そのほとんどが避ける間もなく光に直撃。身を躱したものもいたが、光は地面にあたる寸前に屈折し、怪異を追いかけるように射線に捉える。
光に触れると同時、肉が焼けるような音を僅かに伴い、獣たちの身は一瞬で蒸発するように消え去った。
さらに、光は怪異の触手をも蒸発させ、断ち切る。支えを失い宙に投げ出される形になった遠見は、そのまま地面に落下。
「痛ってーッ!」
悲痛な叫び声を上げたが、一部残った触手がクッションになったのか、深刻な外傷はないようである。
「ナンダ、コレハッ⁉」
怪異が、初めて慌てた声を上げた。
放たれた光はすべて役割を終えて消えてしまっているが、いまの一瞬で獣たちは肉片一つ残さず一掃され、遠見は晴れて自由の身となった。
『これが天使の持つ対怪異用の力、光矢だ!』
エルテスラが声高に言い放つ。
直後、再びイナシの口から光が放たれた。
今度は束ではなく、巨大な光球。光の束と同じように空へ昇り、怪異の頭上高く、空中に留まる。
「コレハ――」
言葉が終える前に、光が瞬時にその量を増す。境内は明るく照らされ、その眩しさに爽太は腕で顔を覆った。
そして次の瞬間、光球から光が降り落ちる。落ちる光は柱となり、怪異の巨大な身体を光の柱が完全に取り込んだ。
次いで起きるのは、消滅。
「ギ――」
怪異の断末魔の叫びは、その身の消滅をもって掻き消えた。抵抗する暇さえ与えられず、怪異は祓われる。
光は急速に収束し、柱も光球もともに消える。
「……マジ……?」
辺りに残っているのは、地面に倒れたままの遠見とその道具のみ。怪異のいた痕跡はほとんどなく、唯一遠見の身体に張り付いたままの触手の残骸があるのみである。
目の前で展開された光景に圧倒され、爽太は、呆けた声で言った。
「天使って、レーザービームが出せる生き物なの?」
『その呼称はやめろ』
返事は反射的に返ってきた。
『怪異を祓う力を持った神聖なる浄化の光を、線状に放出したものだ』
「レーザーじゃん」
『神聖なる光だ。その名は兵器らしさが出るからやめろ』
「でもそれって、イナシは大丈夫なの?」
イナシの顔を覗き込むようにして、爽太は身体を横に倒す。
わけもわからずレーザーを口から吐き出していた当の本人は、
「……まったく問題ありません。不思議なことに」
爽太を振り返ることもなく答えた。イナシの声はいつもと何ら変わりなかった。しゃがれているわけでもなく、声とともに口から血が溢れだすということもない。
怪異を一瞬で蒸発させるほどの威力がありながら、イナシの体内は無傷だということである。
「想像もしていなかったので、面食らいはしましたが……」
『心配せずとも傷を負うことなどない。これはあくまで浄化の光。我が調整すれば怪異でないものには何の影響力も持たぬようできる。その際、殺傷能力は皆無になる』
「へー、便利だねえ」
先ほどまでとは打って変わって、呑気に言葉を交わす。
抜き差しならぬ状況は、エルテスラの力で瞬く間に打開された。ほとんど労力もかからず、ゆえに達成感もない。それほどまでにあっけない幕切れだ。怪異はすべて祓われ、遠見も無事助け出せた。
「こんなことができるなら、さっさとやってくれれば良かったのに。僕も無駄に責められずに済んだし」
「それは自業自得です」
『我に貴様らを助ける義理などないからな。頭を下げて頼み込まれる前にやってやったのだから、むしろ感謝しろ』
「とか言って、イナシが吸収されたら自分も危ないからやっただけでしょ?」
『う……! き、貴様、そういう鋭さは交渉の時に使えるようにならんか!』
「まあまあ。それより、遠見の方を――」
「天使様ァ――――ッ!」
突如響いた歓声。
声の主は言わずもがな、遠見である。
見れば、いつの間にやら身体に張りついていた触手をはぎ捨て、イナシの方へ全力疾走。その勢いのまま、イナシの足元に滑り込んでくる。
砂埃をあげながらの急停止。
のち、
「ありがとうございましたァ――――ッ!」
土下座。
イナシの腹に向かって、誠心誠意の土下座。
「何してるの?」
「助かりました、天使様ッ!」
爽太のことなど眼中にない様子で、がばっ、と顔を上げる。その目尻には、うっすらと涙が滲んでいる。
「あなたは救世主だ! あれこそが悪を祓う聖なる力だ!」
賞賛の声を上げ、感激で身体を打ち震わせる。
『その通り、我は救世主だ。遠慮せずに我を奉り、その慈悲を思って感涙にむせぶがよい』
視覚的な情報がないためか、エルテスラは動じる様子もなく、はっはっは、とご満悦で笑っている。
爽太は目の前の光景に驚きを禁じ得ない。すでに本日二度目となる困惑の表情が顔に出る。
「遠見さん急にどうしたの? 触手に捕まってた時は結構余裕がありそうだったけど、助けてもらったのがそんなに嬉しかった?」
「違う! 助けられたことには当然感謝しているが、それだけじゃあない。お前も見ただろうが、あの光を。あの光こそまさに天使の証。選ばれし聖なる力だ」
『そうだろうそうだろう』
「この駄犬には逆立ちしても出せない、対怪異用の最強兵器といっても過言じゃあない」
両の拳をぐっと握り、発する言葉は熱を帯びている。
天使を敬愛しているのだから、その力を実際に目の当たりにすれば歓喜は最高潮になるというわけだ。特に、怪異を倒すための手段をひたすらに追い求めている遠見にとって、天使の力というものは、他と比較にならないほどにとても魅力的なもの、崇拝の対象になるほどのものだったようである。
「でも、怪異を祓うだけだったら、その手段が光だろうが呑み込むことだろうが同じじゃないの?」
それで得られる結果は、なんら変わりない。
「確かにその考えは正しい。ある種の合理主義に則れば、お前の考えはまったく以て問題のない百点の答えだ。だがしかし、そこには穴がある」
びしっ、と爽太に向かって指を突きつける。
「光の照射と呑み込むのとでは、どう考えても効率性に差がある。かたや一体ずつ呑み込んでから腹の中で消滅するのを待つ。かたや光を放ち、複数の怪異をまとめて消滅させる。おまけに射程距離は数十メートルはくだらないだろう。つまり、結果が同じだろうが、そこに至るまでの過程の差が大きすぎる」
「そりゃ正論だね」
ぐうの音も出ない。
「そして何より、天使の光は聖なる力! 駄犬のただの暴力とは違う! だからこそ、俺はこれまで怪異消滅用の道具には光を用いようと、そっと心に決めていた。そして実際にできたのが、怪異消却型照射機試作一号。あの光は、きっと天使様が放った光と同じものでできている」
『いや、貴様あんな懐中電灯と同列には――』
「ああ、天使様! 是非、俺の怪異消却型照射機試作一号のパワーアップ、そして完成のために、その力をお貸しください。天使様の知識を得ることができれば、きっと俺は一歩も二歩も、いや、一気に十歩ぐらい前に進めるはず」
『あー…………うむ。まあ、よかろう。貴様はその思想や言動に似合わず、敬虔な一面も持っているようだからな。特別に施しをしてやっても良いかもしれんな』
「ああ、ありがたきお言葉です!」
遠見の目から、つーっと涙が流れる。顔の前で祈るように手を組み、涙を流しながらいまや満面の笑みを見せている。
――泣くほど……?
若干引いてしまう爽太。先ほどから無言を貫いているイナシも、恐らく爽太とそう変わらぬ感情を抱いていることだろう。
「でもまあ」
爽太は呟く。
「無事に終わってよかったね。一時はどうなることかと思ったけど」
なんだかんだとバタバタしたが、呼び寄せた怪異はすべて消滅した。怪異祓いは無事終了。
今回は、キネン日が始まって以来の危機的状況だったと言える。いままでにも、遠見が張り切り過ぎて怪異に袋叩きにあったり、境内をうろちょろしていた爽太が捕まえられそうになったりもしたが、打つ手がなくなりかけたのは今回が初めてだった。
「正直、ラさんがいなかったら本当に駄目だったよね」
それは、心からの思いだ。
「確かにそうですね」
イナシも同意してくれる。
「当然のことだ。なんせ救世主だからな!」
『はっはっはっはっ――』
自分のことのように誇らしげな遠見と、自尊心をくすぐられてご満悦なエルテスラ。
それを見て、爽太もなんだか嬉しい気分になってくる。
ただ、
「でもさ」
続く、
「ラさんがいなかったらイナシが普通に丸呑みできるから、そもそも危ない状況にもならなかったよね」
それは、心からの思いだ。
「確かにそうですね」
イナシも同意してくれる。
『やめろ! その論理展開はやめろ!』
「天使様、そんな苦しげな声を上げないでください!」
一転、悲痛な叫びが境内に響き渡る。
ともあれ、今回のキネン日は大した負傷者を出すこともなく、無事に幕を下ろしたのだった。