『商品No23呪いのアイテム』 商品ランク☆
呪い。それはとても恐ろしいものだ。
呪われた者は、不幸が付きまとう。次第に精神は崩壊していき、最後には死に至る場合もある。
呪いにも様々な種類がある。不幸の手紙的な、不特定多数に呪いをかけようとする場合もあるし、藁人形のように特定の人物をピンポイントで狙う場合もある。その他には呪いが自然に発生する場合がある。例えば呪いが宿った物などがそうだ。
人間が死ぬ時に、誰かを恨みながら死んだりすると、手に持っていた、あるいは身に着けていた服や、アクセサリーなどのアイテムに呪いが宿る場合がある。それを手にした者には呪いが降りかかる。
そして今、俺は呪われている。
つい前日のことなのだが、道端で呪いのアイテムを拾ってしまったのだ。
そのアイテムとは……。
着ぐるみだったのだ。
道端にうさぎの着ぐるみが落ちていたのだ。
色はピンクでとても目を引いた。
俺は子供の頃から着ぐるみに入ってみたいという願望を持っていた。
あんな風にちやほやとされたい。皆の人気者になりたい。
そんなことを昔はよく考えていた。
だが、そんな思いは大人になるにつれ無意識の内に封印され、やがて時と共に霧散していった。
しかし、道路に落ちていたうさぎの着ぐるみを見た瞬間、封印していたパンドラの箱が開いたのだ。
ああ何だこのパトスは。今まで大人になるにつれ封印していた様々な情熱、夢、感情がまるでおもちゃ箱からおもちゃがクラッカーのように一気に飛び出すかのような感覚。
気付いたら俺はうさぎの着ぐるみを着ていた。
しばらくすると、ここの近所の子供達が着ぐるみの俺を見て寄ってきた。
俺は無邪気な笑顔を振りまく子供達の頭を撫でたり、抱っこをしたりした。
最高だ。最高の気分だ。
俺の子供の頃の夢は今叶ったのだ。
夕闇が迫って来た。一体俺はどのぐらいの時間、着ぐるみを着ていたのだろうか。不思議と全く息苦しくも、暑苦しくもなかった。
さあ、そろそろ着ぐるみを脱ぐか。明日も仕事があるしな。いつまでも子供達の夢の住人ではいられないのだ。
俺は着ぐるみを脱ごうと背中のチャックに手をかけようとする……が。
「ない。チャックがない。ないないないないないないないないー」
ど、どうしよう。
俺は焦った。焦って焦って、逆に冷静になった。
そういえば、最近着ぐるみを着たまま、暑さで死んだ人がいるってニュースで話題になったな。
……まさか。
ようやく俺はこの着ている着ぐるみが、死んだ人が着ていたぬいぐるみだったということに気付いた。
しかし、中の人が死んだのに、着ぐるみだけ回収処分されないということがあるのだろうか。
そこで、俺は分かったのだ。この着ぐるみが呪いの着ぐるみだということに。
だが、俺が気付いた時、異変が起きた。
何だ? この感触は。糊を体に塗っているような感覚。あるいは風呂の中に使っているような感覚。まるでこの着ぐるみと一体になっているかのようだ。
俺の予想は悪い方に的中した。
そう。俺の体は着ぐるみと一体化しようとしているのだ。
だんだんと、思考も麻痺して曖昧な感じになってきた……。
起きていながら、半分寝ているようなそんな感じ。
思考が世界と溶け混ざる。現実と妄想の思考が頭の中でリズム良く風に揺れ舞う。
もう戻れない。
根拠はないが、そう確信する。
もう日は完全に沈み、辺りは闇に包まれた。
街灯の灯りと家からこぼれる灯りだけが闇の中にぽつりと浮かび上がっている。
ランランランラン。
どこかで、無邪気な子供の声が聞こえてくる。
それが本当の声なのか、自分の頭の中での偽物の声なのかは分からない。
だけど、俺は行く。その声の聞こえるほうへ。
ピョンピョンと。スキップをしながら。
俺は街灯の灯りの届かない遥か彼方の闇へと向かって進んで行った。




