第五章 エピローグ
ユンと、リンネンが玄関先に居る。
再び黒いマントを頭から被っている俺。
「これ、やるよ」
昨夜手に入れた金を、特殊リングに収納しておいた。二十万グラン分が袋に入っているのを差し出す。よく分からない仕組みになっているそれを目をぱちくりさせながら見ているユンを他所に、俺は満面の笑みで渡した。
「え?でも……」
躊躇しているユン。どうして?と不思議そうであった。
「心配ないから!昨夜ご馳走いただいた礼よ。それにこれ地主から巻き上げ……じゃなくて、頂いた物なんだな。気にしない気にしな〜い!」
バインの首らしきところを猫のように撫でながら俺は満足そうに笑った。
「それに、結婚式ってのも取りやめになったから安心だ。良かったじゃん」
「そうですか……それではお言葉に甘えて」
ユンはその袋を受け取る。
「リンネンちゃんの目。その金で早く良くなるようにしてあげろよ」
片目しかない瞳でウインクする俺。傍目には只笑っているようにしか見えないであろう。
「本当にありがとうございます」
深々とお辞儀をする二人。
「じゃっ!俺はこの辺で。ば〜い」
二人を背に俺は歩き始める。
「あ、あのっ!」
突然の呼びかけに俺は振り返る。
「お名前は?」
フッと笑うと俺は半身を返し、
「只の孤独な旅人!それで良いっしょ?」
と、後ろ向きでヒラヒラと手を振って歩き始める。
「キュピッピ?」
バインが余りにも冷やかすので、
「うるさい!格好よく去ってるんだから良いの!」
何だか落ち込んでしまう。
「くそー!それにしても、リンネンちゃん可愛かったな〜」
ユン達が、後方で玄関の戸を閉めた時、俺とバインは、再び時空の彼方へと消えていった。
昨日の夜に起こった火も消え去り、黒焦げた屋敷の残骸が、ブスブスと音をたて燻っている。
「やーい。石ぶつけてやれ〜!」
タンペイは無残にも気絶した状態で、門の所に逆さ貼り付けされていた。
その横には、『スカイ=アル=グレイ参上』と言う文字と、店先に張られていた賞金首の五百万グランの似顔絵が一枚貼り付けられていた。
短いお話でした。
本当は、宝石の数だけお話し作れたら良いな〜何て思ってる作品です。他にもこの話の別バージョンあるんですが、それはまた機会があれば。
ここまで読んでいただきありがとうございました。