いじめに遭いました
教室に入るのが怖い。怖いよ、ルーベンス。ってかルーベンスって誰だっけ? あ、あの人だ。そうだ、あの人だ。絵を描いてた人だよ。
確かルーベンスって美術の期末テストに出るんじゃなかったっけ? 中学生の皆さん、覚えておくべきですよ!
じゃなくてじゃなくて。教室……やだなあ。靴箱であの調子なんだから、教室なんかあれでしょ。入った瞬間教科書やら卵爆弾やらが飛んできたり、机にラクガキされてたりするんでしょ?
上靴がなくなってなかったのがむしろ奇跡だよ。もうほんと、ため息ー。
「はあああ……」
「どいて、邪魔」
肩を掴まれ押し退けられた。いたた……ひ、ひどくない!?
「ひど……くね、か?」
ボーゼンとして立ち尽くす。てかさっきの子、誰?なんか見た事あるんだけどなぁ、あのつり上がった怖めの目とか。
「徂徠さんだ」
つぶやいた瞬間、また後ろからきた人に押し退けられた。いてえ。妹が反抗期の時散々こういうことされたけど、やっぱなんか傷つく。なんで私いじめられてんのー!?
「お、おはよー……」
しーん。やばい、これは本気だわ。怖いなあ、女子。しかも、男子まで見て見ぬ振り。普通さ、女子が最初にしてて、男子もだんだんその中に入ってくんじゃないの?
私が読んだ漫画ではそんな感じだったんだけど。うーん、やっぱり漫画と現実は違うんだよねー。
「おはよ、茉莉花」
よく話す友だちに声をかけた。けど、もちろん無視。わーん、地味にショック! 彼女はいつもは一緒にいないはずの金原さんたちのところにいて、にこにこしながら話してる。茉莉花、ひどすぎ。酷だよ。
わーもう! なんで!? 私なのー! ……泣きそう。なんで、私なんだよぉ。
……よし、こうなったら、とことん反撃してやるんだから。許さないし。
「うわっ、こんなとこで立ち止まってんなよBS」
BS? 振り返ると、そこにいたのはクラスの男子だった。どういう意味だろ……っあ、ブス? ブス!?
「……ムカつく」
私はつぶやいて、そいつをにらんだ。たいしてかっこよくもないくせになに調子乗ってんの。お前に言われたくないっつーの。
ぶつぶつと心の中で文句を言う。だいたい、男子も本気で参戦しまくりじゃない!? 私、そんなに男子にも嫌われてたんだ。まじか。うっとうしいな。地味で目立たないポジションにいたはずなのに。
机チェックをすると、案の定油性ペンで死ねやらなんやら書かれていた。わお、よくやるねえ。とりあえず先生に見せて帰ったら油性ペンの落とし方ググろう。
しばらくすると先生がやってきて「号令お願いします」と言った。私たちが立ち上がって礼をすると自動的に朝の読書タイムが始まる。持ってきた文庫本を開いて静かに読んでいると、後ろの席の男子に足を蹴られた。お前、どんだけ足長いんだ。すごいな。でも、蹴られるのは嫌だなぁ。やめい。
私は蹴り返し、足を前にして本を読む。あとで椅子を蹴られたけど、無視することにした。