日本へ戻ってまいります
前回のあらすじ:「東に居たり胴長の物怪、青龍の官九郎でござる。」
暗雲が消えた快晴の空の下で、一人と二匹が会話をしている。
「これで仲間になったの?」
「あぁそうだ。 これで東の青竜は仲間になった。 いったん日本に帰って、南の朱雀を探しに行くぞ。」
「一度帰らせてくれるのね。 よかった。 ・・・ってよくないよ。」
「なんでだ?」
「こんな危険な目にあと何回合えばいいんだよ。 もうこりごりだよ。」
「何回も言っているぞ・・・ それがいやなら俺がお前を殺す。」
「まぁまぁ権兵衛よ。 気を荒立てるな。 それより探しに行くぞ。」
「あぁ・・・ 狐の次は蛇飼うのかよ・・・」
帰りの飛行機も権兵衛が調達してくれた。
飛行機の中で三人(うち二人は権兵衛の変化の力で化けている狐と蛇)が会話をしていた。
「拙者、久しぶりに日本へいくでござる。 以前お主に会いに行った時より、いくつの年がたっておるのじゃ?」
「しらねぇな。 でも江戸時代ってやつだったな。」
「それで、青竜は侍かぶれしてるんだ。」
「そうじゃ。 侍に憧れてのぉ。」
「あれ? どうやって日本に来たんだ?」
「拙者だって、人を絞め脅して船に乗ることぐらいできる。」
「何それ怖いな・・・」
日本に着いた。
「あぁ、なんか疲れたよ。」
「まずは家に帰って、荷物を整理しよう。 お土産とかな。」
「お土産って・・・」
「ごめん官九郎。 お土産渡し忘れてた。」
「そうじゃったのか。 ありがたく頂戴するでござる。」
そういって権兵衛はおにぎりを渡した。
「おぉ! ジャパンフードじゃ。 日本じゃ。 和じゃ。 何年ぶりかのぉ。」
官九郎はおにぎりを丸呑みした。
「そういえば、アメリカでお土産買ってないよね。」
「お前、旅行気分みたいだな。 旅行じゃねぇぞ。」
「はいはい。」
そうこうしているうちに家に着いた。
「ただいまー。」
「あぁ、稲荷寿司食べよ。」
「ここが権兵衛たちの部屋でござるか。 やや窮屈だが。」
「窮屈で悪かったね。 バイトしたらもっといい家に引っ越すよ。」
「働け。」
「あのなー権兵衛。 バイトは愚か大学へ行くのも権兵衛のせいでかなわないんだぞ。」
「つまりお主はニートでござるか。」
「その言い方傷つくからやめろ。 れっきとした大学生です。 今は権兵衛のせいで行けないけど。」
「あぁもううっせーな。 そんなに大学行きたきゃいけよ。 死後の世界でな。」
「そういう脅迫やめろよ。 あと稲荷寿司食べ過ぎ。」
「いいだろ。 力使えば稲荷寿司増えるんだから。」
「でも太るだろ。」
「変化で痩せたように化ければいいだけだ。」
「なんか・・・羨ましい。」
「じゃあ、荷物の整理も終わったでござるし、南へ行こうでござる。」
「えっ! もう行くの?」
「あぁ、行くぞ。」
「ちょっと休ませてよ。」
「休むか? 永遠に眠れるようにしてやるよ。」
「怖い怖い・・・」
「拙者とて行かぬものは絞め殺すでござるよ。」
「怖い・・・怖い・・・」
「行きます! 行きます! 南へ行きます! 山坂 通は行きます!」
日本の青空に青年の叫び声が響き渡った。
南とはどこなのか・・・