青龍・官九郎
荷物受取場を出る。
空港のロビーに出た。
ロビーは吹き抜けとなっており5階まで突き抜けている。
さすがアメリカといったところだ。
ロビーを出て、駐車場へと向かった。
「駐車場に何の用があるの?」
「いいからついてこい。」
権兵衛は赤く塗られたスポーツカーへ近づいて行った。
「九尾の力<物体影分身>」
スポーツカーが二台に増えた。
「かっこいい車だな。 よしお前運転しろ。」
「え、僕が?」
「免許持ってるだろ。」
「持ってるけど、アメリカじゃ使えないよ。」
「免許貸せ。」
財布から免許を取りだし、免許を渡した。
「九尾の力<物体変化>」
免許がアメリカ仕様のものとなった。
「よい子は真似しないでね。 って、免許取れる頃にはもう大人か。」
「さっさと運転しろ。」
「なんで君は運転できないの?」
「俺は運転は苦手だ。」
(こういうのに人間が使われるんだな。)
煙とともに狐の姿に戻った権兵衛は助手席に乗り込んだ。
空港を出て、大きな道に出た。
スポーツカーなんて初めて乗る。
外車だから左ハンドルだ。
右側通行なのでそれも慣れない。
「あ、そういえばどこ行くの?」
「グランドキャニオンだ。」
「グランドキャニオンってここからどれくらいかかるんだ?」
「知ったことか! それより地図を念写しておいてやったぞ。」
「これ世界地図だよ。」
「馬鹿な。 俺が間違いなど犯すもんか。」
「まぁこの車カーナビついてるけどね。 全部英語だけど。」
「こんなものいらん。 グランドキャニオンまで己の勘で行け!」
(看板があるんだけどね。)
そんなこんなでグランドキャニオンの近くまで来た。
「ここまで来るの大変だったなぁ。」
「さぁ、こっからは空から探すか。」
「空から? ヘリコプターでも使うの?」
「あぁ、九尾の力<物体変化>」
スポーツカーがヘリコプターに変わった。
「ヘリコプターの操縦方法はわからないよ。」
「まぁ、なんとかしろ。」
ヘリコプターの内部にはいろんなボタンやら機械やらがあった。
「どれを押せばエンジンがかかるんだ。」
「仕方ないな。 九尾の力<物体催眠>」
エンジンがかかった。
「ヘリコプターを自動化したよ。」
「なんで車の運転も自動化してくれなかったの?」
「お前を少し働かせてみたかった。 それよりグランドキャニオンよーく見とけよ。 せっかく来たんだから、楽しんどけ。」
(厳しさと優しさの同時攻撃が来た。)
「さてと、青龍を見つけるか。 九尾の力<五感特化>」
ヘリコプターが轟音を立てながらうき始めた。
「うわー、うるせぇ。 耳が潰れるー。」
「確かにうるさいね。 ヘッドホンつけなよ。」
「狐用のヘッドホンはないのか?」
「変化つかいなよ・・・」
「なんて言った? うるさくて聞こえねぇ。 こうなったら・・・九尾の力<第六感>」
「変化使って人間に化けたら。」
やっと権兵衛に伝わった。
「そうだな。 再びあの姿へ。 九尾の力<変化>」
権兵衛は先ほどの人間に化けた。
「ヘッドホン装着、っと。 よし、聞こえるか?」
「うん。」
「俺は今、第六感を使っている。 気配とかを感知できる。」
「じゃあそれで青龍を探すんだね。」
「あぁ、でもこれには範囲があるから、グランドキャニオンに沿って飛びながら探すぞ。」
「分かった。」
しばらくの時が経った。
グランドキャニオンは神秘的だ。
それらを眺めていると、アメリカに来た、という実感が湧いてきた。
「青龍を見つけたぞ! 北に33メートルと4センチいったところにいる。」
その手前でヘリコプターを降り、青龍の元へと向かった。
でも龍のような生き物はいない。
権兵衛が急に叫びだした。
「おーい青龍・官九郎。 権兵衛だぞー。」
権兵衛は誰かに話しかけている。
よく見るとそれは2メートルほどの大蛇に話しかけていた。
「この蛇が青龍?」
「そうでござる。 拙者は青龍。 名をば官九郎と申す。 以後お見知りおきを。」
(ここはアメリカなのになんか日本っぽいな。 いや、あれか。 外国人が日本人以上に侍とかが好きなあれかな? というか蛇だよね。 龍じゃないよね。)
「官九郎よ、須佐之男命様から招集の命令があったんだ。」
「おうおう。 それは参らなければなりませんな。 権兵衛よ、拙者もソナタ帯についていって良いかの?」
「あぁ。 その前に[儀式]やるぞ。」
「そうでござった。 そこの人間のものよ、[儀式]を執り行うぞ。 前に出ててくだされ。」
「儀式って何するんですか?」
「おいおい。 権兵衛よ、人間に教えてなかったのか。」
「教えてなかった。 今教えてやるよ。 簡単に言うと人間の力によって倒されないと四神は住処を離れることができないんだ。」
「倒す? この蛇を?」
「戦え! 戦って死ぬかもしれない。 でも戦わなかったら契約違反で俺がころすぞ!」
「じゃあはじめようか。」
グランドキャニオンを舞台として書きました。
果たして、勝てるのか・・・