第12幕
それからの戦いは半ば一方的だった。霞ヶ丘いちかさんは、このはと恵の2人によって倒されて縄で縛られていた。
元々、いちかさんの能力と言うのは熱中と言う精神を一方向に向ける能力であり、明らかに戦闘向きの能力ではない。それに対してこちらに居るのは、火炎能力者であり正義の味方としての実績も高いこのはと、精神能力の使い手で悪の総統である恵の2人である。2人が本気を出せば、霞ヶ丘さんなど相手にもならないのだろう。
「まぁ、こんな所で赦しましょう、かね? 悪ではないと言っていたけれども……精神的に異常があるし、もう少しやっといた方が良いかな?」
「そうね……。同じ精神系のよしみで、このあたりで止めといた方が良さそうだわ。これ以上は今後の人生観に影響を与えてしまう可能性があるけれども、大丈夫だと思うし、良いよね?」
このはと恵の2人とも、どちらも完全に赦す気はないようである。とは言ったとしても、
(見ているこっちが悲しくなってくるんだけれども……)
既にいちかさんは下を向いていて、涙も流している。
確かに彼女のやった事は犯罪だろう。
やった目的は僕の姉と妹が以前のような状態になる事。
やった事は僕の誘拐、そしてこのはと恵の2人を縄で縛った事。
それは確かに犯罪であり、言い知れぬ罪である。けれども、かと言って罪と言うのは、きっと赦す時が来る。罪と言うのはひきずる物ではなくて、赦す物である。今の彼女達はそれを完全に逸脱してしまっている。
(怒りに我を忘れてしまってる、と言う所だろうな)
ならば誰かが、その怒りを鎮火するべきだろう。
「はぁー……」
僕はそう思いながら、いちかさんの後ろに行き、座っている彼女を立ち上げる。
「2人とも、もう良いだろう? 彼女は能力者で、罪を犯した。けれども罪と言うのは、掃除のようにちゃんと綺麗に拭い去れる」
「え、えっと……」
「ちゃんと罪さえ償ってくれさえば、僕は大丈夫だ。2人だってそう思っているはずだよ。ねぇ、このは? 恵?」
2人にそう言う。勿論、目に「これ以上やると、こっちが逮捕されるよ」みたいな意味を持たせつつ、やらせていただいた。能力者はある程度、能力者じゃない一般人以上の戦闘行為は認められている。過去の能力者の中には傷付けるつもりはなかったとしても、他人を傷付ける能力者が居る。そんな能力者のために『能力者の能力使用』に関してはかなり甘い物で規制されている。悪の組織の活動に対して、大々的に警察が動かないのもそれが理由の1つだ。しかし、必要以上に痛めつけたと警察が判断した場合はその類じゃない。本当に逮捕されてしまう。今の2人の行動次第だと、その逮捕が適用されてしまうかも知れないからだ。
僕は2人がそうならないようにして貰いたいのだ。知り合いから逮捕者が出るのは、勘弁願いたい。2人もその気持ちをくみ取ってもらったみたいであり、反省したみたいで顔を赤らめつつこっちを見ていた。
「そ、そうでした。かさちゃんが言う通り、これ以上やると警察が……」
「そうね……。警察に捕まると厄介な事になるわ」
2人とも反省して貰ったようで、なによりである。
「あ、あの……ありが……」
「霞ヶ丘さん。あなたもですよ」
2人から助けて貰ってありがとう、みたいな言葉を告げようとしていたいちかさんにそう告げる。
「監禁は流石にやりすぎですし、姉さんや妹のあんな姿を参考にしないで欲しいな。身内として、あの時の姉さんと妹は、思い出したくない」
2人も、悪でも正義でもなかった時代は思い出したくないらしく、家でも学校でもその話はしない。どうやら、2人はやんちゃしていたと反省して、黒歴史と化しているみたいだ。
「今の姉さんと妹を見て欲しい。あの時の過去の姿じゃなくて、今の姿を」
「今の……姿……」
「まぁ、これにて一件落着。監禁も、水に流しておくよ。いつも掃除をしている僕だけに、ね」
そのネタは、3人に受けずに流された。結構、いけてると思ったのに……。




