第10幕第2部
「私は日暈君の姉である雪風さんと、妹である陽炎さん。雪風さんの概念すらも凍らせてしまえる能力と、光の中ならばどんな場所だろうと移動出来ると言う能力。その2人が正義の味方や、悪の組織とか関係無く、まるで暴風のように倒している様に、私は感動を覚えました。そう、目が惹きつけられていました。あれ以来、私は彼女達の活動を見るのが楽しみで仕方がなかったんです……。あぁ、本当に素晴らしかった……」
霞ヶ丘いちかさんは恋する瞳で、そう僕に語っている。それは宗教染みた何かを感じるような話し方だった。いちかさんはそのまま話を続ける。
「――――――あの頃は本当に素晴らしかった。正義でも悪でも無い、そんな彼女達が私達をどこへ連れて行ってくれるのか? あの頃はそれを考えるだけで楽しかったわ。……けれどもそれも、あなた方のせいで無くなってしまったんですけどね」
そう言いながら、霞ヶ丘さんはこちらを親の仇でも見るかのような眼でじっと見つめて来た。その瞳は能力者を思わせるように、うっすらと青みを帯びていた。
「2人にあの頃の輝きを戻させる一番良い方法は何かと考えた時、まず考えたのはあの2人の身内であるあなたの殺害でした」
「……!」
その言葉に僕は唾を飲み込む。それがただの冗談だったら僕も笑ってごまかす事が出来た。けれどもいちかさんの眼力は確かな力があり、さらに自分が彼女の手によって今監禁されている現状を見ればどうなっているのかは簡単に分かる事であった。
「身内である日暈君を失えば、彼女達も昔のように正義でも悪でも無い、私が憧れた暴風のような彼女達に戻って貰えるでしょう。
――――――けれどもあなたを殺しても、彼女達はあの頃の彼女達にはなれないと考えました。何故ならば彼女達の気持ちはこの私と言う一点に向かうでしょう。それでは私が楽しめません。憧れていたあの頃に戻っていただけるのは本当に嬉しい事ですが、それをこの目で見られないのでしたら悲しくなってしまいます。ですので、その方法は取る事が出来ないので別の方法を取らせていただきます」
「別の方法……?」
殺されないのは本当に嬉しいけれども、それ以外の別方法と言うのが気になる。この話から察するにまともな話ではなさそうだし、どうするつもりなのだろうか?
「……別の方法って、どうするつもりなのでしょうか?」
僕がそう聞くと、彼女は嬉しそうな顔で僕を見て来た。
「――――――あなたに雪風さんと陽炎さんの2人を、私が憧れているあの頃の2人に直させていただきます。つまりは、あなたが説得してあの頃の2人に戻してもらうんですよ」
「そ、そんな事する訳が……」
「出来るんですよ。私の能力、【思考天秤】さえあれば」
「しこう……てんびん……?」
その能力がなんなのか。それを聞く前に、僕の意識は急に小さく消えて行き、そして意識がどんどんと薄れて行く。
「日暈君、君の事も大好きだよ♪ 私が憧れる雪風さんと陽炎さんが気に入るあなた、何の能力も持たないのにも関わらず多くの能力者を引き連れるあなたは、とっても素晴らしくて魅力的な存在よ。でも、私は引き連れているだけのあなたには興味がないの。
―――――――折角の力なんだから、使わせるようにしてこそ、天霧日暈と言うあなたは輝くんだから♪」
僕はその言葉を耳に聞きつつ、意識を手放した。最後に見た、霞ヶ丘さんの青い瞳が僕の瞳にずっと映っていた。




