第10幕
「ううっ……」
僕、天霧日暈が目を覚ますと、そこは廃墟の工場であった。動こうとしたら手が身体ごと縄で縛られていて動けない。お尻の下に何かシートのような物が置かれているみたいで、縛られているにしてもそれなりに丁寧な対応はされているみたいだけど。
少しひびがあった試験管や、蜘蛛の巣が張られているビーカー。埃だらけの床、くすんだ天井。他にもくすんだ窓やら、何か良く分からない液体の跡。
「―――――――薬品の廃工場、って言う所か?」
「残念ですが、薬品は薬品でもとっても危険な薬、麻薬を作っていた工場の廃墟ですよ」
と、僕の眼の前に目を青く光らせている、霞ヶ丘いちかさんの姿があった。薄く光るような茶色の髪をリボンを解いて真っ直ぐ伸ばしていて、恍惚の笑みを浮かべた見惚れてしまうような容姿をした美少女。左側は白、そして右側が黒のスマートなワンピースを着ていて、『偽悪』と書かれた腕章を付けている。制服を着て霞ヶ丘さんと一緒に帰っていた所まではぼんやり覚えているんだけれども、その後の記憶がないのだが……。
「僕はその後に、捕まったとか? 例えば、君に」
「外れだけど、着眼点としては良いね。流石、私の見込んだ日暈君だよ」
そう言うと、霞ヶ丘さんはポケットからハンカチを取り出して、僕の眼の前にある今にも崩れそうな段ボールの山の上にハンカチを載せて座る。
「けれども、随分とまぁ落ち着いているけれども……何? まさか捕まると分かっていてわざと捕まったとか?」
「そんなんじゃないですよ。ただ、ここでじたばたしても状況は好転したりはしないんで」
元悪の組織の雪風姉さんや陽炎、それに【デビル・スナイパー】と言う悪の組織の総統である西成恵、正義の味方である赤石このはと、自分の周囲の人物がこれだけの人物が揃っているのだ。このはの火炎能力を使ったすすの後片付けや、定期的に恵の組織の部屋の掃除を行ったりとしているのである。その際に危険な目にあった時なんて1度や2度では無いのだから。
「経験の差って感じだろうか。けれども、出来るならば……この縄を解いて貰えると、ありがたいんですが……」
「それは私の目的が果たされてからだね。その後、その縄から解放させてあげましょう」
……目的? 僕を誘拐して、何かをしたいと考えているのだろうか?
「このはか? それとも恵が目的なのか?」
僕はそう聞く。僕自身にそんな価値はないと思っているし、あるとしたらこのはか恵のどちらかに不満があっての犯行だと……。
「違うよ。君を誘拐したのは、確かに君を大切に思う人達を呼び寄せるためだ。けれども、私が呼び出したいのは正義の味方であるこのはさんでも、悪の組織である恵さんでもない」
「じゃあ、誰を……」
呼び出そうとしているんだ? 僕がそう聞く前に、彼女はこう答えた。
「――――――――君の事を大切に思っている人物であり、正義でも悪でもないただの災害に近い者達、君の家族の雪風さんと陽炎さん。私が呼び出したいのはその2人だよ」




