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日陰ヒーローな掃除係  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第9幕

とあるユーザーさんより、「もう少し長くしてみたら?」と言うご意見をいただいたので、今回はいつもより少々長めに書いてみました。

 人は正義にも悪にもなる。人は正義であると同時に悪である。

 ――――――――大切なのは、その正義と悪のどちらに傾いているかと言う事である。正義の味方だとしても悪の心を持っているのと同様に、悪の組織も正義の心を持っている。正義と悪は表裏一体で、どちらも持っているのである。

 だから、正義と悪のどちらでも無いと言う人間こそ、最も気を付ける人間なのである。


 天霧雪風先輩と私、西成恵は学校にて、先生の頼まれ事を受けていた。


「おしまい」


 と、雪風先輩は頼まれていた書類を先生の机の上に置いていた。私もまた、頼まれていた書類を雪風先輩の置いた書類の隣に置いた。


「雪風先輩、これで最後でしたっけ?」


「ええ」


「じゃあ、そろそろ帰りましょうか」


「そうね」


 私はそろそろ泣きそうになっていた。雪風先輩とは日暈の縁もあるから、仲良くしたいと思っているんですけれども、彼女は喋り上手では無いですし、苦手なんですけれども……。そう思って、何か話しかけようと思いながら揃って職員室を出る。


「待って」


「え、えっと……なんですか?」


 私は雪風先輩に頼まれて止まり、そしてゆっくりと視線を雪風先輩から廊下へと移動する。移動して、そこで1人の男性の姿を見つめる。

 ぐるぐる眼鏡にボサボサの髪、そして白地に裾が青色の体操服を着ていて、その上に白衣を着ている。そしてポケットには、色付きの液体が入った試験官数本を入れている。


「俺の時代がやっと来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 天霧雪風と西成恵の2人も良いですねぇぇぇぇぇぇぇぇ! さぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、さっさとやらせていただきますぅぅぅぅぅぅぅぅぅよー!」


 目の前に現れた、ボサボサ髪の男性は「いやっ、ほぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」と物凄い奇声をあげながら、こっちを見ていた。


「さぁぁぁぁぁぁ、始めましょうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! 正義でも悪でも無い【平行線(ホライゾン)】の薬膳寺毒人(やくぜんじどくひと)の力でぇぇぇぇぇ、倒しぃぃぃぃぃぃぃぃますぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


 と、ボサボサ髪の男性は妙なテンションのまま、こっちに向かって来ていた。そして、彼が手を振ると彼の身体全体に能力者の証である青い光が纏い、彼の火にあたっていないような白い肌が、毒々しいまでの濃い紫色へと変化する。


「自分の頭で思い描いた毒を作り出す能力! 【毒と薬(ポイズンメディスン)】! その力を特と、味わぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅが、良いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


 彼がそう言うと、彼の手から濃い紫色の毒が放たれる。放たれた紫色の毒は真っ先にこちらに向かって来る。あれはどう考えても毒だ。そしてそう考えている内に、放たれた紫色の毒はこっちに向かって来る。


「邪魔」


 雪風先輩はそう言い、ゆっくりと息を吸い込んでそのまま吐き出した。そこには何の不自然さも無い、ただの呼吸だった。しかし、いつの間にか青い光を纏った彼女の吐いた息はそのまま冷気へと変わり、薬膳寺毒人と名乗る人物が放った毒を凍らせていた。


「……相変わらず、凄いわよね。雪風先輩の能力」


 雪風先輩の能力は、凍らせる冷気を操る能力。ありとあらゆる物を、彼女が望むがままに凍らせる事が出来る。概念すらも冷凍させる力。ある意味、最強の冷凍能力。

 彼女が正義の味方であったら、どれだけ私が困る事になるか分からないほどの凄まじい力を私は、改めて見せつけられていた。


「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 私のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、毒がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「今よ」


 雪風先輩がそう言って、私は自分が何をすべきなのかを悟る。そして私は、薬膳寺毒人に狙いを定めて、青い光と共に能力を発動する。


「【嗜虐趣味の加重サドスティック・ヘビー】」


 私の声と共に、薬膳寺毒人は糸が切れたかのようにゆっくりと倒れた。

 私の能力、【嗜虐趣味の加重】は精神系の能力である。相手の脳に働きかけて、精神的な重みと言う加重をかける。この力はダメージが通りにくい相手に対しても傷を負う以上の苦しみを与える事が出来るし、敵だとしても加重をかける事によって私の虜にする。この力を使って組織を拡大する事が出来たし、私の中ではかなり重宝している。

 今は、薬膳寺毒人の自衛本能に加重をかけ、彼の脳からあまりの苦しみからの緊急的な脱出と言う気絶を取らせたのである。


「ふぅ、これでしばらくは目覚めないでしょう」


「そう、良かった。じゃあ、帰る」


 そう言って、雪風先輩はそのまま帰ろうとして、私は慌てて彼女に続いた。


(しっかし、あの男の精神、可笑しかったのよねぇ)


 と、私は加重をかけている際に見た彼の精神状態に疑問を抱く。

 彼は本質的には良い事もすれば悪い事もするような、どっちつかずの精神をしていた。しかし、それが何故か私と雪風先輩に対して激しい憎悪を向けるよう気持ちを傾けられていた。それも誰かの力によって。


(私と同じ精神系の能力者の仕業、かしら? 何はともあれ、気になると言えば気になるけど……今は先輩と一緒に帰って、先輩に私の事を気に入って貰わなきゃ!)


 私はそう思いながら、雪風先輩に続く。

 弟である天霧日暈ともども、気に入って貰えるように。


 私、赤石このはが正義の味方になったのは、かさちゃんが居たからだ。私が能力者に目覚めたのはかなり遅い時期であり、中学生になるほんの少し前の冬休みの頃だった。その頃には、かさちゃんの妹もお姉さんも能力者になっていた。そして、2人は悪の組織に入っていた。いや、悪そのものだった。


 あらゆる概念すらも凍らせる事が出来る天霧雪風。光の中を移動する天霧陽炎。能力者の中でも一線を隔す能力者の2人は、悪だった。正義の味方も、悪の組織も、そして世界すらも敵に回す、悪の中でも別格の悪だった。

 その悪を一緒に倒してくれと、かさちゃんに頼まれたから正義の味方になった。


 ―――――――でもね、かさちゃん。私はかさちゃんのお姉さんと妹さんの気持ちも良く分かった。能力者になった瞬間、いままでの価値観が覆されるほどの衝撃と全能感があった。もし、かさちゃんが居なかったら私は悪の組織になっていたかと思うくらいの衝撃だった。

 かさちゃん、あなたが居たからこそ私は正義の味方になったんだよ。


「あら、このはさん」


 そう昔を思い出しながら帰っていると、玄関で陽炎ちゃんに会った。

 天霧陽炎。影がない光の場所までならば、一瞬で跳ぶ事が出来る移動能力者。彼女とは昔、正義の味方として対峙したけれども、今でも勝てた気がしない。あれはかさちゃんが倒したような物だ。能力者でも無いかさちゃんが、心に訴えて倒したのだ。私はかさちゃんに傷が付かないようにサポートしていただけだ。

 だから私は今でもこの陽炎ちゃんの事がちょっとだけ、ほんのちょっとだけ苦手だった。


「陽炎ちゃん、どうしたの? 今、帰り?」


 でも、私はそんな事を感じさせないように笑って挨拶をする。―――――――会う事も多いし、そうやって避けていたら可哀想だから。


「……えぇ、まぁ。友達がいきなり勉強会をしようと言い出しまして帰りが遅れまして」


「勉強! 良いねー、学生は勉強が大事だよ! お姉ちゃん、嬉しいなー。陽炎ちゃんが勉強を頑張ってくれていて!」


「……私達同学年ですし、誕生日もこのはさんの方が遅かったような」


「そ、そうだけどね! けど、陽炎ちゃんはいつだってかさちゃんと同じく私の妹だよ! それは変わらないよ! うん!」


「……まぁ、私には関係ないし、良いんですけど」


 うぅ……。なんだか冷たいし、本当に陽炎ちゃんは良く分からない。


「ほら、このはさん。あなたの出番のようですよ」


「へっ?」


 呆けた顔でそう返事を返すと、陽炎ちゃんが「なんですか、それは」みたいな顔で見つめて来るけれども気にしない事にして、前を見る。すると、そこには確かに私の出番、そう悪の組織が居た。


闇影暗黒(やみかげあんこく)。正義でも悪でも無い【平行線(ホライゾン)】所属のボクが、あなた達を倒しに来ました」


 目の前に現れたのは、影だった。

 全身つなぎ目のない、真っ黒な身体の人物。影を全身に纏ったような、そんな印象を与える彼は、ゆっくりと、そして着実にこちらへと向かって来ていた。


「あんな真っ黒な奴、どう考えても恵の差し金だよね。あの女、待ち伏せさせるとか本当に卑怯!」


「では、私は先に失礼します」


 そう言って、陽炎ちゃんの身体が青く光ったかと思うと、私の前から一瞬にして陽炎ちゃんの姿が消えた。陽炎ちゃんが自分の能力、【光速移動】を発動したのだとすぐに分かった。あの能力ならば、もう校門の外に出ているだろうなと思っていたら、


「えっ!? な、なんで!?」


 私は驚いていた。だって陽炎ちゃんが、目の前に居た影男に捕まっていたからだ。


「くっ……!」


「案外、簡単に捕まえられる物だな。歴代最高とまで呼ばれた移動能力、【光速移動】。しかし、その実態は光になって移動するだけの力。影が現れればその力は無意味と化す」


「私の力を……そこまで……!」


 陽炎ちゃんの能力がそこまで知られていた事に、私は驚いた。

 陽炎ちゃんの能力、【光速移動】は確かに移動能力としては範囲も無制限、移動時間もコンマ数秒と言う凄い能力だ。しかし、それは影がない(・・・・)と言う前提条件が付く。彼女の能力を破る方法は簡単。影で、光と光を分断すれば良い。彼女が能力を使って移動出来るのは、光の中だけ。影がある場所に入ると、能力は効果を失う。


「もしかして、あの男の能力は影を操る能力!?」


「ご名答。このボク、闇影暗黒の能力、【影縛り】。影を操る能力で、天霧陽炎の天敵とも呼ぶべき能力者だ」


 本当に陽炎ちゃんとは相性が悪い能力だ。けどね、影男さん。この場には、そんな影すらも燃やす事が出来る火炎能力者が居る事を忘れないでください。


「さぁ、ボクに従って――――――」


「【正義の炎】!」


 私は青く光る自分の手から大きな、巨大な火炎を放つ。放たれた火炎は物凄い熱量を持ったまま、影男と陽炎ちゃんの元へ放たれる。そして私の放った火炎は、影男だけを炎で包む。


「―――――――ぎゃ、ぎゃあああああああ! ボクの身体が―――――――!」


「だ、大丈夫?」


 私は慌てて、陽炎ちゃんに近寄る。

 私の能力は私が狙った物だけを燃やす能力。であるから、こうやって影男だけを燃やして、陽炎ちゃんを助け出す事が出来たのだ。


「……ありがとうございます」


 そう言って、私の頭を撫でる陽炎ちゃん。それはまるで、子供が上手く出来た事を褒めるようなそのような感じであった。……って、それはなんですか! べ、別に嬉しいとかは無いんですからね! 本当ですからね!


「……逃げられてますね」


「はっ!?」


 バカな事を考えている内に、影男は忽然(こつぜん)と消えていた。


「……まぁ、逃がしても良いか。どうせ彼女に聞いたら済む話ですからね」


 私はそう思いながら、彼女、こんなふざけた悪の組織を統括する真の悪である西成恵に電話する。


 ――――――――そして、私と、恵は知る。

 これが恵の知らない組織の仕業であり、なおかつ、今現在かさちゃんとの連絡が出来ない状況に。


 その頃、天霧日暈は監禁されていた。

 他ならぬ、正義でも悪でも無い組織、【平行線(ホライゾン)】のリーダーである霞ヶ丘(かすみがおか)いちかによって。

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