第8幕
僕の姉、天霧雪風姉さんと妹、天霧陽炎。僕の幼馴染の赤石このはと僕の友達、西成恵と山田良太。
僕はいつもその5人と共に学校から下校する。とは言っても、それぞれに予定があったりして、いつも同じ時間に帰れると言う事では無いんだけれども。だいたいにおいて、いつもはこの5人と僕は下校している。
しかし今日は何故か、5人とも下校に現れなかった。携帯から連絡があったのだけれども、5人とも何故か放課後になって用事がいきなり入ってしまったらしい。雪風姉さんと恵の2人は先生の手伝いに呼ばれたらしくて、このはも正義の味方としての清掃活動とかなんとか。陽炎は友達と勉強会がいきなり入って来たらしい。
……いつもは5人が揃って用事が入る事なんてないし、いきなりブッキングする事なんて少ないんだけれども。
「なんかいきなり、5人とも用事が都合よく入ったな……」
狙い澄ましたようなタイミングなんだけれども、偶然が重なっただけだよね? たまたま、だよね?
と言うか、1人で帰るのも帰りづらいな。多分、少ししたら誰か1人くらいは用事を終えて帰って来るだろうし、それまで待ってようかな。そう思いながら僕は携帯でメール確認していると、
「えっと……天霧くん。どうか、したのですか?」
優しげで、しかしどこか裏があるような声で話しかけられる。後ろを振り返ると、その声の持ち主である女生徒……朝、マッチョの能力者に襲われていた霞ヶ丘いちかさんが居た。
「いちかさん……? どうしたんですか?」
「ちょっとたまたま、帰る時間が同じになったのですけど……。もし良かったら、途中まで一緒に帰っていただけませんか?」
たまたま? 何故か耳に残るんだけれども……。いや、先生の用事や友達の宿題の手伝いは彼女は関わっていなさそうだし、多分気のせいだろう。
「まぁ、途中までなら良い、かな?」
「そうですか? それならとーっても、嬉しいですね」
いちかさんはそう言いながら、手を差し出して来た。
(手を握って帰るのか……この歳でそれは恥ずかしいような……)
そうやって手を握るかどうか迷っていると、彼女が小さな声で「やっぱり早急でしたか……けれどもチャンスは掴みませんと……あの頃じゃないんだし……」とぶつくさと囁いていた。そして瞳が薄く青く光り出した。
(あ、あれ? まぁ、手を握るくらいならば良いかな……)
青く輝く瞳を見ていると、何だかそう思えて来た。別に手を握るくらいならば、ちょっと恥ずかしいだけで、別に死ぬ訳では無いから大丈夫だろう。僕は彼女の手を取った。
「……じゃあ、帰りましょうか」
彼女の言葉に僕は「そうだね」と言い、一緒に手を取って帰宅するのだった。




