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ありす 此処に  作者: 左傘 蕨
ありす の章
6/18

なまえは

気づけば大晦日。皆様いかがお過ごしでしょうか


 必要だけど欲しくない。



 ーー・ーー



「……やばい」


 思わず声がこぼれた。

 ほんの一言、でも確かに一言。独り言。


 いやぁ、独り言なんてあんまし言うもんじゃないことはわかってるんだけどさ。わかってるけど……あれだ。不可抗力?

 寒い時にカチカチ歯がなるのと同じようなもの。そう思いたい……。



 というわけであたし。

 今年初。だがしかし人生で言えば何度目かわからないけど。迷子になりました。


 ……洒落になんねぇ。あっちで迷子になったならどうとでもなるけど。でもここ、異世界。帰り方どころか現在地点すらわかんないよ。町からは出てないと思うけど。



 まぁいつか会えるでしょと思ってフラフラしてた。

 そのときのあたしの頭に迷子はその場から動くななんて常識は働かない。


 きっと、なんとかなるよ。



 ーー・ーー



 なんて思ってた時期もありました。やっぱりあれだよね。迷子はその場から動いちゃ駄目だ。

 だってさ。動かなければこんな場面に出くわすことなんてなかったわけじゃん。

 こんな、さ。寄ってたかってがらの悪い中年どもががきんちょひとりを囲んでる様子なんて。

 見たくもなかったわよ。

 聞こえる声曰く、たかってる。超たかってる。そんながき、たかるような大人にはなりたくないなぁ。


 ま、あれだ。見なかったことにしよう。

 巻き込まれたらやじゃん。

 ありすに怒られるじゃん。あの無頓着、怒ると怖いんだよ。


 というわけでそっと踵を返して別のとこにありすを探しに行こうと思ったら……。

 たかられてる少年と目があった。

 超あった。

 ……うん、少年。君は美少女だね。あれ、性別どっちだ。髪が短いから少年だと思ったけどめっさ美少女じゃん。


 あれ、れ?なんか凄い見られてる。やめてよね。あたし逃げんるんだから。


 ニヤッと笑われた。

 やばい、なんか嫌な予感がするよ。

 天使みたいに可愛らしいとはまさにこのことなのになんでそんなニヤッて邪悪に笑うかね。イメージが音を立てて崩れていく……。


ありす(・・・)!」


 彼(彼女?)はあたしの方を見て大きく声をあげた。

 ⁉︎

 どうしてあたしの名前。


「おいてかないでよね、ありす。酷いじゃん」


 少年と少女の間のような高い声で言ってきた。

 いやいやいやいや、おいてくどころか初対面……。


 そんなこといいながらこちらに寄ってくる。たかってたおっさんどもがあたしを睨みつける。


 やめてよ!視線が痛いよ!


 そんな視線ものともせずあたしの前まで辿り着いたこいつは手を伸ばしてあたしに抱きついてきやがった。


 何考えてやがる。



 とりあえず、この場をなんとかしなくては。

 いや、あたしまでたかられるとちょっと困るんだよ!


 帰りたい、超帰りたい。主に家に。


 よし、仕方ない。こういう時は……えっとー、確か……。


「すみません!ちょっと【ここであったこと全部忘れちゃってください】」


 謝るみたいにパン、と手を合わせる。

 途端にくたり、と崩れ落ちるおっさんども。


 はぁ、と溜息ひとつ吐いてありすを探しに行こうとしたら


「凄いねぇ」


 あたしに抱きついたままこの少年だか少女だがよくわからんがきは言った。


「無駄を全部省いて対象まで一直線、シンプルで単純でとっても早い。お手本にしたいくらいだよ。無理だけど」


 何こいつ、何言って……。


「とりあえずありがとう。本当は適当に巻き込むだけのつもりだったんだけど……こんなことになるなんて思っても見なかったよ」


 にへら、と悪意たっぷりに笑った。

 とりあえず離れようよ。


「とりあえずお茶でもしよ。お詫びに奢るからさ」


 ちょっと離れて、あたしの手を引かれた。

 小学生くらいの子に手を引かれる中学生って絵面的にどうよ。


「聞きたいこと、あるでしょ?」


 その言葉にはっとした。

 そうだ、こいつあたしの名前……。


「それじゃ、いこっか。いいとこ知ってるんだ」


 悪意なんて欠片もない顔で、笑われた。



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