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少女は王女になる!  作者: 綴
王宮編
9/48

アリィの決断

第九話です。

やっと次回予告通りに

アリィが決断してくれます。

 玻優は庭でアリアスを待っていた。エントがアリアスを連れてくるらしい。


「ジークリヒトさん。」


 玻優の後ろに立つジークリヒトに声をかけた。


「ジークとお呼びください。さんは結構です。」


「わかったわ。じゃあジーク。アリアス様ってどんな方なの?」


 玻優が聞くとジークリヒトは少し考え込んだ。


「アリアス嬢は次代の社交界の華となると噂されている姫君です。」

「ふうん。そうなんだ。華だなんてとても綺麗な方なのね。」


 玻優は呟く。


「殿下。アリアス・サシエラ・イリアフィード嬢をお連れしました。」


 エントがそう言ってアリアスを玻優の前に連れてきた。


「お初お目にかかります。お会い出来て光栄にございます。アリアスと申します。」


 アリアスはそう言うとドレスを摘まんで、膝を折った。正式な礼の仕方だ。


「こちらこそお会い出来て光栄です。よろしければおすわりくださいませ。」


 玻優はそう言って自分の向かい側の椅子を勧め、アリアスは言葉通りに座った。玻優はエントとジークリヒトを少し離れたところに立たせる。会話が聞こえないようにするためだ。それから玻優はアリアスと日常会話を例えば生活にはなれそうかとかそんなふうなことをしていたが、アリアスが突然笑みを浮かべたまま、黙り続けて玻優を見つめている。


「あの、アリアス様?」


「殿下。私まどろっこしいのは嫌いなんです。だから試させていただきますね。エントがあんなにも入れ込むんですもの。多少は見所があるんでしょうから。」


 アリアスは笑みを深くした。玻優は限りなく嫌な予感がする。


「えーと。ちょっと落ち着かれましょう?試すだなんて穏やかじゃないですよ?」


 玻優は慌てたように言う。


「ね、殿下。私はユフィ以外には仕えないと決めておりましたが、あんなにもエントが頼むなら考えてみようかしらと思いましたの。」


「へ、へえー。いやでもどうしてもだめならならなくていいのよ?だから試さなくて大丈夫。」


「往生際が悪いですわ。...我が身を護りし剣よ、出でよ。」


 アリアスは手のひらから大きな剣を取り出した。そして、玻優に向かって剣を振りかざす。そして剣を振った瞬間、玻優は持っていた懐刀で剣を受け止める。


「あーもう!面倒ったら!エント・シュライツ、絶対面倒事を持ってきただけじゃないの。」


 玻優はそう言ってぶつぶつ言った。この懐刀で大きな剣に対するのは分が悪い。玻優は前にも、こんなタイプの人間に襲われる場面に出くわした事がある。その時の標的は玻優でなく、玻優と一緒にいた従兄だったが。その時の従兄の対応をパクらせていただこう。


「やめなさい!私を誰だと思ってるの?」


 玻優は強い語気で言い放つ。


「まあ、誰なんですか?貴女は一体何者のつもりなんです?」


 アリアスは玻優に問いかける。これでおそらく玻優の覚悟を問うつもりなのだろう。


「...私は、空秘玻優よ。普通の一般庶民の家庭で育った平々凡々な人間!でも、これからは空秘玻優だけじゃなくて、この国の王女でありおそらく国を担うアルシェラーサ・ラピュネ・ターシャリエッカ・シエラシアも私なの。わかる?」


 玻優が言ってアリアスは驚いた表情を浮かべる。それから玻優はエントとジークリヒトのいる方を見たが、そこにはなぜか二人がいない。あの職務放棄の役立たずめ!と玻優は心の中で罵っておいた。


「あのね。エントが貴女がユフィエンヌ様に囚われているから解放してほしいって頼んだの。私はでも貴女を解放することはできないと思う。私は囚われてることって悪いとは思わないのよ。そんなに大切な人がいたって素晴らしいことだって思う。...でもね、囚われていることが辛いなら助けるわ。」


 玻優はそうやって穏やかに微笑んだ。アリアスは剣をどこかに消え去った。


「...ユフィは主というだけでなく、親友だったんです。殿下。とても大切だった。ユフィにはなんでも話せた。...でも、私は彼女にとってどうだったんだろうって考えた時、どうやってもだめな奴だったと思うんですよ。彼女が辛いとき私は助けてあげられなかったから。これは私の罪です。囚われているのは私の罪。解放されたいなんて思ってはいけないんだもの。」


 アリアスはぽつりぽつりと玻優に打ち明ける。瞳には涙が浮かべている。そして涙が頬を伝った。アリアスの言葉は玻優に打ち明けるというよりは自分に語っているようだが。玻優はアリアスの手を包み込んだ。


「私は貴女のことはなにも知らないわ。あとユフィエンヌ様のことも。でも、今日でね、貴女と仲良くなりたいって思う。私ではきっとユフィエンヌ様の代わりにはなれない。...誰も貴女にとってのユフィエンヌ様の代わりにはなれないわ。でも、それは置いておいて。私を助けてくれないかしら。ユフィエンヌ様の代わりにはなれないけれど、貴女の気を紛らわすことくらいは私にもできるんじゃないかしらと思うから。考えておいてね。」


 玻優はそれだけ言った。


「...お助けいたします。殿下。ですから、これから私の気を、紛らわしてくださいますか?」


 アリアスは泣きながらに言う。


「もちろんよ。私は中々規格外の王女だと思うからね。きっと退屈しないわ。」


 玻優はアリアスを見つめながら答えた。


 これがアリアスが玻優の女官になると決めた日であり、アリアスの心がユフィエンヌが死んで以来、初めて軽くなった日だ。


第九話いかがだったでしょうか?

中々悩んだ回でした。

わかりにくかったらすみません。

よかったらご意見お聞かせくださいね。

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