両親との別れ
第4話です!
第4話では玻優の心情など書きました。
まあ、彼女大きく勘違いしてるんですけどね。
それに気づくのはいつのことやら。
今回も楽しんでいただけたら嬉しいです!
空秘玻優は家族が大好きである。感情の起伏はあっても慈愛のある母に優しくて物知りな父、それと家族を主に玻優を溺愛している姉。そして今は亡き厳しいが孫には甘い祖父。みんなみんな大好きだ。そんな家族大好きな玻優が決心した理由。それはいつも感じていた空虚感。母は昔から父が大好きなのはわかっていた。母は父が大好きでそのために生きているといつも感じざるを得ないもので父が第一な人。父は母のことも大事にしていたが、それと仕事を生きがいにしており、姉は人一倍正義感が強く、人気者。祖父は何よりも家が大事。自分を考えたとき自分には何もないといつも思っていた。自分は弱いから頼れる存在があるときっと頼ってしまうだろう。でも家族を切り捨てる勇気もない。そう過ごしていた日々に現れたのが今回のことだ。玻優が玻優になるためにも今回のことを決心した。母の前では両親が二人でいるのが好きだからとかそれらしい理由をつけたが、結局は自分のためだけに決めた。ただ、こんなことを言うと母はきっと何がなんでも玻優を止めようとするから、言わない。それに両親が二人でいるのが好きだからと言う理由もあながち嘘でもないから、きっと大丈夫だろう。母には父がいるからきっと大丈夫。玻優はそう信じている。
玻優が目覚めた時には、もうあの二人はいなかった。それから玻優は明日の出発のために荷物をまとめ始め、持っていくのは大切なものばかりだ。例えば写真や誕生日にもらった小物いれなど思い出の品ばかり。弱い自分を捨て去りたいから家族から離れるつもりなのにこうやって思い出の品ばかり持っていくつもりなのはまだ自分が甘いと思うがこれぐらいは許されたい。だってもう二度とここには戻って来れないだろうから。こんこん、部屋がノックされた。
「入るよ?玻優。」
入ってきたのは父だ。
「パパ。」
「荷物まとめはどうかな?」
「もう大体終わったよ。どうかしたの?」
玻優がそう尋ねると、行人は困ったように微笑んだ。
「まさか、娘を、君をこんなに早く家から出す羽目になるとは思わなかったよ。君は昔からひとり立ちしたいようなふしがあったとはいえこんなに急だとはね。」
行人はため息まじりに言った。そう言われては玻優は苦笑するしかない。
「ごめんね。パパ。」
玻優が謝ると行人は玻優を抱きしめた。玻優は腕を回して行人を抱きしめ返す。
「忘れないでほしい。いつだって僕は君の味方だ。帰りたくなったら帰っておいで。君をいつまでも愛してるよ。僕の可愛い娘。」
行人は玻優にそう呟く。玻優は頷いた。
「パパ。大好き。そばにいてあげられなくてごめんね。でも、パパは自慢のパパよ。いままでもこれからも。」
玻優は心からそう言った。それから行人は玻優を抱きしめるのをやめて、持っていた桐箱から一つの懐剣を取り出す。懐剣には空秘家の家紋が刻印されていた。
「これを持っていきなさい。お前の祖父がお前が独り立ちする時に渡せと言っていたものだ。きっとこれがお前を災いから護ってくれるだろう。」
行人はそう言って玻優に懐剣を渡す。懐剣はずっしりと重い。
「はい。大切にするね。」
玻優は微笑んで言った。行人はそんな娘を慈しむように見る。
「玻優。君の名前の由来はね。玻璃っていうのは水晶のことなんだ。昔僕はとても綺麗な水晶を見たことがある。そんな水晶のように綺麗で美しく優しくあってほしいから玻優って名付けたんだ。」
「初めて知ったわ。玻璃って水晶のことなんだね。私の名前にそんな理由があったのも知らなかった。知れてよかった。教えてくれてありがとう。」
玻優は名前に恥じないように生きようと思った。行人はそんな娘の頭を撫でてから、部屋から出る。
行人と入れ替わるようにして今度はリフェミアが部屋に入ってきた。
「貴女が決めたなら私はもう何も言わないことにする。応援するわ。」
リフェミアは部屋に入るなりそう言った。
「困った時はエミリア・シュライツを頼りなさい。エント・シュライツの母親よ。そして私の従姉であり親友でもあるの。彼女が協力してくれたおかげで私は行人さんと一緒になれたといっても過言ではないわ。」
リフェミアは娘にそう助言を与える。
「あとこれを。これさえあれば貴女は私の娘だって疑われないはずよ。」
リフェミアは娘に瞳と同じ色のラピスラズリの細工の素晴らしい腕輪を渡す。
「これは私が立太子式に父からもらったものなの。これがきっと証明してくれる。貴女は私と最愛の人さんの子どもよ。自分でやると決めたなら最後までやり抜きなさい。逃げたりしないこと。...でもどうしても辛かったら誰でもいいから助けを求めなさいね。貴女は人に好かれやすいもの。きっと誰かは助けてくれるわ。可愛い子。ごめんなさいね。」
リフェミアは娘を激励するように言ったあとで愛しげにまた、辛そうに謝ったが、玻優はリフェミアを抱きしめた。
「ママ。私を生んでくれてありがとう。体に気をつけてね。ママ、大好きよ。」
玻優は精一杯の笑顔で言うと、リフェミアは一瞬涙ぐみ、それから玻優を抱きしめた。
翌日。玻優は迎えに来た二人とともにシエラシアに向かうことになった。
「ママ、パパ。いってきます!お姉ちゃんによろしくね。お姉ちゃんは追ってきそうで怖いけどうまくやり過ごしてね。」
玻優は笑顔で言った。二人とも複雑そうに頷く。
「こっちのことは任せなさい。何も心配しないようにね。」
行人は大らかに笑いながら言った。
「体調には気をつけなさいね。貴女なら大丈夫よ!なんていっても私と行人さんの娘なんですからね!...シュライツ卿、メロウシア卿。娘を頼んだわ。」
リフェミアは玻優を元気づけるように言ってから2人の騎士に言う。ジークリヒトは驚いたようだ。
「どうして、貴方がメロウシア卿だってわかったかって顔ね。貴方、お父上そっくりよ。お父上のが、もっと食えなさそうだったけどね。お父上によろしく。あと、シュライツ卿、エミリアによろしく伝えてちょうだい。私は貴女のおかげで元気にやってるわとも伝えてくれると嬉しいわ。」
リフェミアはジークリヒトにしれっと言ってからエントに親友の言伝を頼んだ。
「姫君のことをお任せください。必ずや、お護りいたします。母にもそのように伝えておきます。」
エントは自信に満ちたように言った。ジークリヒトは一礼しただけである。
「さ、アルシェラーサ様、行きましょうか。」
エントはそう言うととある呪文を唱え魔法陣を出し、そこに自分と玻優、ジークリヒトが入るのを確認すると指を鳴らし、その瞬間三人は魔法陣の中に吸い込まれていった。
第4話如何だったでしょうか?
今回で出発編は終了です。
次回からは王宮編となります。
やっと次回からは魔法の国を
描けます。
それでは次回も頑張って早く投稿するように頑張りますね!
いつも読んでくださってありがとうございます!