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 ヨーロッパ北東部、人の寄り付かない自然が色濃く残る山の奥に、その建物は鎮座していた。

 黒と赤に彩られた豪奢な宮殿。広大な敷地面積と相まってただならぬ威圧感を放つその外観は、自然に囲まれた山の中で紅一点とばかりに華やかに、しかしどこか不自然に見える。

 宮殿を囲む巨大な赤い門を挟んで向こう側に、こちらは黒い門で囲まれた縦長の二つの館がある。一方は黒、もう一方は赤とそれぞれ一色に統一された外壁・屋根。宮殿と負けず劣らず塔のように高くそびえる、直方体のその建物は、これでもかというほど人工的で、宮殿とはまた違う威圧感を放っていた。

 原生林が生い茂る周囲とは一線を画した、まるでそこだけ別世界かのような錯覚にとらわれる、宮殿と館。

 長い長い夜が明け、太陽の光が全てを照らし出す。




 サンレイ・リストンの部屋は、ブラック寮と呼ばれる黒い館の1階、103号室にあった。

 窓から光が差し込み、彼女は静かに目を覚ますと、枕元にある目覚まし時計の針を確認し、アラームをOFFにした。

 午前5時12分。アラームは5時半にセットしてあったが、どうやら少し早めに目が覚めてしまったようだ。

 柵のないベッドから出て、簡易式の洗面所に向かう。洗顔、歯磨き、手洗いくらいにしか使い道のない小さな洗面所だ。サンレイ自身、ここでそれ以外の行動を起こすつもりもないので、質素を好む彼女としては別に構うことはないのだろう。顔を洗い、歯を磨く。それを済ませたら、着替える。なんて事のない単純な動作。5分足らずで終わってしまった。

 朝食開始は6時から。それまでは宮殿内に入ることもできない。起きて早々手持ち無沙汰になってしまったサンレイは、どうしたものかと無表情で立ちつくす。

 何もしていない時間が、彼女は嫌いだった。無駄な行為も好まない。生産的で有意義な行動を心がけている。それは考えることに対しても同様で、余計なことで頭を使うのは極力避けていた。常に何かをしていないと気が済まない性分、しかもそれが無意味であってはならないという、かなり難しい生き方をしているのがサンレイという少女だった。

 することもないので、とりあえず身だしなみを整えることにした。ショートボブのこう色の髪をクシでく。細くて真っ直ぐな彼女の髪。オシャレには一切興味がないので、邪魔にならないという理由だけで選んだこの髪型も、そろそろ3年になる。それ以前の彼女はポニーテールにしていたが、結ぶのが面倒になってきたからショートにした。こちらの方がお気に入りだ。

 その後、襟を直したり糸屑を除去したりなどといった細かい作業を終え、改めて時計を見ると、5時28分。

 ……あと30分、彼女はこの部屋で有意義な時を過ごさなければならないのだった。


 苦痛の30分を乗り越え、サンレイは部屋を出た。

 正面入口の受付係に出席確認をし、野外へと第一歩を踏み出す。

 長かった夏が終わり、季節は秋へと移り変わってゆく。門の向こうから見える木々はまだ青々としているが、今に暖色系に染まることだろう。そしてだんだん風が心地よくなってくる。この忌々しい熱風も、来月には爽やかな秋風へと変わっていくのだ。

 言うまでもなく、サンレイは夏が嫌いである。

 宮殿内に入ると、同じ一番隊に所属する同級生が早速声をかけてきた。

「おはようサンレイ! すごい、今ちょうど6時になったよ、秒針が短針と交わったよ! 時間に正確だね!」

 いや別にそこまで緻密に計算して門を潜ったわけではないのだが、目の前で騒ぐ少女はそうは思っていないようだ。

 彼女の名は、リズ・アンダーウッド。

 2文字でまとめると気弱。

 普段は明るく元気な印象を受けるが、実はそれほど活発ではない。つるむ相手からもそれは伺える。身長はサンレイよりも頭一つ分高いけれど、だからと言って彼女より頭一つ分優れているわけではないのだ。

 散々に言ってしまったが、要は親しみやすい友達である。

「…………」

「なんで黙る?」

「マーチンはまだかなーと思って。マーチンも時間には正確な方だから。5分以上のタイムロス、したことないんだよ」

「リズはしてるのか?」

「サンレイはしてないの?」

「一度も」

「だよねー…。やっぱり私とは違うわ」

 リズは肩を落とした。5分以上のタイムロスって、ここじゃかなりヤバイはずなのに、彼女はどうやって乗り越えたのだろうか。気になったが、さすがに深く聞くのをやめた。

 そこに、サンレイ的にかなり助かるタイミングでマーチン・デカルトが宮殿へと入ってきた。暗い表情のリズを見て心配そうに声をかける。

「リズ? …えと、サンレイ、何かあったの? この子すごい劣等感に見舞われてるんだけど」

「……もしかしたら、私の言葉がリズを傷つけてしまったのかもしれない。すまなかった」

 サンレイは自分に原因があると推測し、二人に向かって頭を下げた。

「ちっ、違うのサンレイ、サンレイは悪くないよ! 私が一人で勝手に落ち込んでただけ。顔上げて、ね」

「あ、分かった。アンタ達、てかリズ、遅刻の話してたんでしょ」

 サンレイは顔を上げて、マーチンに聞いた。

「遅刻の話?」

「そ。先週だったかしら、この子、髪の毛のセットに時間がかかって、午後の訓練に大遅刻しちゃったのよ。偶然ライアン隊長がいなかったからよかったものの、オデット副隊長にはそりゃーもう怒られてね。訓練終わったあと、私の部屋に泣きついてきて、困ったわ」

「言わないでよマーチン……あの時のことがフラッシュバックしてさらにテンションダウンだよ…」

 深みにはまるリズを慰めるマーチン。

 彼女は、2文字でまとめると……いや、まとめられなかった。無念。強いて言えば姉御肌という言葉が浮かび上がる。サンレイ達とは違い所属は二番隊だが、リズと共に仲の良い友達である。

「ほら、いい加減元気出しなさいよリズ。朝食食べる時間なくなるわよ」

「あっ、そうだった!!」

 勢いよく立ち上がり、食堂へと駆けていく。どうやら今の一言で完全に立ち直ったらしい。

「廊下は走らないの! ルカナ執事に叱られるわよ!」

「分かってる~!」

 と言いながらもリズは足を止めない。

 ため息をついてマーチンも歩きだした。

「行きましょ、サンレイ。あと40分で閉まっちゃうわ」


 こう色、って分からなかったら[色見本]でググってみてね。

 【資料―Web色見本】っていうのを参考にしてます。


 今回は少しだけファンタジー要素を取り入れることに致しました、っていっても前作とユーザー名変えてるから誰だか分かんないと思うけどね。無意味ですねこの文。

 まだまだ序盤ですが、興味がございましたら次回も見ていただけると嬉しいです。

 あうー…字下げ忘れてたーうわーパンナコッターなんてこったー投稿したばっかなのにー゜(゜´Д`゜)゜

 気をつけよう。うん。

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