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第32話 水始めて涸るる ─鴉鷺正伝─
水始涸
──田の水を抜き、刈り入れを始めるころ。
アマヅラミコによって人が作り出して間もない頃、地上と天は繋がっており、神とヒトの境界は曖昧なものだった。
ヒトの数も増え始めた時、神々は大層困り果てた。ヒトとヒトを取り纏めるべき神との見分けがつかないのだ。
そんな時鼻のいい鴉と鷺が連れてこられた。アマヅラミコがたいそう気に入っていた眷属だ。二羽は今と違ってどちらも真っ白な羽をもつ鳥であった。
優秀なそれ等は鴉はヒトへと吸い寄せられるように嗅ぎ分け、鷺は神を見抜いた。
しかし鴉はヒトへ近寄る度にその白い羽を濁らせた。
ヒトによって濁った色の羽をもつようになった鴉は神々から嫌われるようになり、神は天と地上を切り離すことに決めた。しかしヒトは野放しにしておけない。そうしてヒトの中から最もアマヅラミコに似た人間を頂点に据え置き、鴉を従わせることにした。逆に天からのお告げは鷺に託し、用があれば地上に送るようになったのだ。
鴉は地上の使者、鷺は吉兆の象徴と呼ばれるようになった所以はこれである。
そしてこのアマヅラミコに最も似た人間──斑を持つ人間は巫と呼ばれるようになり、クニを収めるものとして君臨するようになったのだ。
(鴉鷺記 鴉鷺正伝)




