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第29話 蟄虫戸を坏ぐ ─混乱─

 そもそも、なぜ太極たいきょくきゅうに行く話になったのか。


 それはどちらかの方法で今回の問題を解決するためだ。一つは、酒の持ち込みができる期間を定期的に設けるということ。二つ目は何らかの条件下で肉親と会うことを許可すること。

 一つ目が通ればルリの留飲りゅういんを下げ、今後の強引な行動や不信感を減らすことができるかもしれない。二つ目が飲まれたらルリは可哀想だが、今後姉妹として面会ができるようになる。


 そうしてアオはミコトに検討をお願いすべくやってきた。


「ミコト様はいらっしゃらない? どうしてですか?」

「秋祭りのために議会を延長なされています」


 司衛しえいの片方が丁寧にも教えてくれる。


言伝ことづてを頼まれましょうか」

「……いえ、また来ます」


 伝言を残して行かれるかと聞かれたが、アオは首を振った。すこしややこしい話なのだ。本人と話をしたい。

 アオは頭を下げようとすると、またユイに襟首えりくびを掴まれた。癖になっているようだ。と言っても十五年間やってきたことがすぐに矯正されるわけもない。

 アオは形だけでもユイに謝っておく。


「去年は秋祭りのために議会を延長しなかったし、今年はアオも来て気合入ってるみたいだね」


 第一アオは秋祭りを知らない。年間の行事は教えてもらったが、詳細は聞いていない。

 尚服局へ向かう途中に、アオは聞いておこうと思った。


「秋祭り、って奉納祭ではないんですか?」

「ちがうね。奉納祭は神に一年これだけ豊作でしたという報告と感謝の祭りだよ。秋祭りはほぼ神事とは関係なくて、都がいかに裕福かをムラ人たちに示すための行事」

「なるほど……」

「それから年に二度、ムラ人が巫さまや妃嬪方、今年からは天子さまの顔を見ることができる機会のうちの一つ」


 どれだけこのクニが安泰かを示し、人々を安心させるための祭り。見知らぬ人がクニを治めていては不信感も募るだろうし、その解消の場というわけだろう。


 尚服局では少しばかり騒ぎが起きていた。

 セツを見つけ話を聞くと、貴妃さまが突然あらぬことを言い出したのだという。


「……衣裳いしょうを、全て青色に?」

「そうなのです。鮮やかな青色の布は先日アオさまに使いましたから……それで貴妃さまに似合う深い色をご提案したところ『夜空に溶け込んでしまうじゃない』とおっしゃられまして……」


 貴妃の衣裳は常に白。それを見越して今年も布を用意していたが、急な変更に局内はてんてこ舞いらしい。あまり良くない時分じぶんに顔を出してしまったようだ。

 しかしユイは厳しい口調でセツを問いただした。


「でもセツはアオの担当だよね?」

「外から布を取り寄せることになりまして、そのやりとりに人員が割かれているのです。申し訳ありませんわ」

「しょうがないですよ、ユイ」


 眉間にしわを寄せているので、アオはユイをなだめる。


 しかしそれは大変だ。貴妃が青色を着るのなら、おそらくアオは別の色で作る必要がある。

 先日着たもので、青色でないのは外衣と帯と、それから半襟。順に象牙ぞうげ、紫、黄緑だ。それに合う色で青色ではない衣裳を用意してもらわねばならない。


「セツ、わたし……」

「大丈夫です。貴妃さまのわがままはよくあることですから」

「……わたしが、考えてもいいですか?」


 セツは目を丸くした。


「そ、そんなことなさらなくとも、大丈夫です!」

「迷惑ならやめます。でも……少しでも負担が減らせるなら、やらせていただけませんか?」


 アオは頭を下げる。今度はユイに襟首を掴まれることはなかった。代わりにセツが慌てた様子で、アオの肩に触れる。


「顔をお上げください、アオさま。いえ、そう言っていただけるのは嬉しいのですが……秋祭りは少し特殊なのですわ」

「特殊?」


 アオが鸚鵡おうむ返しをすると、セツは勢い良く首を縦に振った。


「ええ。じつは……」

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