表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/42

第14話 鶺鴒鳴く ─曇天─

「どうして強引に連れ出したりしたんですか? わたし、何か無礼なことでも……」


 医務室を出てすぐ、アオは腕を引っ張られながらユイに尋ねた。ユイはなぜだか不機嫌そうだ。


「……ダンせんせいと話してると、アオは余計なことを話すから」


 しかし振り向いたユイの表情は不機嫌とは言えなかった。苦虫を潰したような、むしゃくしゃしたような顔。

 ユイも頭の整理がついていないのか「ああもう!」と叫んでかぶりを振った。


「アオは何も知らないくせに、勘が良さそうだし……小さい頃のこともわりと覚えてるし」

「それは両親を亡くしてから十年、あまりたいした出来事がなかったからで……」

「そんなことない。どうせさっきだってダンせんせいと話しているうちに、何か引っかかるなって思ったことがあるはず」


 ユイは何をむきになっているのかわからなかった。感情の波だけを押し付けられて、アオはしどろもどろする。怒られているわけではなさそうだが困る。


「……そう言われても、何も……」

誤魔化ごまかすな」


 ユイにほおを掴まれる。

 アオはこの状況について考えることを諦めて、ひとまず先ほど交わしたダン医師との会話を思い返してみることにした。

 セツが倒れた理由、容態ようだい、アオの肌について。それから──


「あ」

「ほら」

「でも大した話じゃないです」

「それは僕が決めること」


 アオは思いついたことについて、次第に自信がなくなっていく。これで違うと言われたらそれで終わりだろうか。はたまた当たっていたら、ユイはもっと不機嫌になる?


「……ここにいる人は皆『ミコト様』って呼ぶのに、ダンせんせいは『巫さま』って……」


 アオは自身なさげにぼそぼそと言った。

 それは正解だったのか間違いだったのかわからないが、ユイはアオの頬から手を離した。アオは自身の頬をさする。ユイは地面へと首を向けていたが視線は別を捉えているようだった。無いものを見ているのが心配になって、アオはユイの背中に触れる。


「あ……あってますか?」

「僕はその洞察力を知ってる」

「え?」


 ユイは俯いたままそうポツリと零した。


「君がムラの抗争で亡くした両親の名前は《《長かった》》?」

「そうですけど……」

「母親は三文字、父親は漢字を持っていた」

「……どうして知っているんですか?」


 アオの母親は確かに三文字の名で、父親は名前に漢字があった。忘れるはずがない。これは特別なことだと幼いころに教わった。


「それがどうかしたんですか?」

「アオ、君が孤児みなしごになった所以ゆえんは誰にも言わない方がいい」


 ユイはすっと顔を上げるとアオの目を見た。まじまじと見たことがなかったが、ユイの目はくもり空の色をしている。しかし眼差まなざしのするどさには力があった。


「返事は?」

「は、はい」


 息を詰まらせながらアオは答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ