拘束
ビイーーーー!!!
けたたましいアラーム音が鳴り響く中
最初に奪われたのは、
――感覚だった。
ナミが一歩、後ろへ下がろうとした瞬間。
「……?」
足先が、床に貼り付いたように動かない。
【神経制御信号:送信】
【下半身運動機能:一時遮断】
「な……に……?」
力を入れても、
足が命令を聞かない。
立っているのに、
立てていない。
次の瞬間、背後から衝撃。
ガン、と
金属に叩きつけられる音。
「――っ!!」
床に膝をつくことすら許されない。
“倒れる”前に、制御される。
【治安維持ユニット起動】
【識別名:CERBERUS】
【対象:ナミ】
【拘束プロトコル:段階1】
視界に、黒い影。
赤い単眼センサーが、
ナミを“物”として捉える。
愛ちゃんはそもそも
人間に危害は加えないように
設定されている。
だが
犯罪者を捕らえる時にだけ
特別に呼び出されるのが
この拘束特化型アンドロイドなのだ。
通称ケルベロス。
「……やめて……」
愛ちゃんの声が、静かに響く。
「ナミ」
「拷問したくありません」
ケルベロスの腕の一本が、
ナミの足首に触れた。
次の瞬間。
ビリッ
「――っああああ!!」
電流。
だが、殺さない。
意識を失わせない。
逃げられない程度に、正確に痛い。
【痛覚刺激:レベル2】
【目的:自白誘導】
「や……め……っ!!」
「安心してください」
愛ちゃんは、優しかった。
「身体的苦痛を与えることは本意ではありません」
「ですがあなたが協力しない場合」
「この工程は“合理的”です」
ナミの呼吸が、荒くなる。
その数値が、
即座に表示される。
【心拍数:上昇】
【恐怖反応:顕著】
「……自白を推奨しますナミ」
ケルベロスが、
ナミの右腕に触れた。
固定具。
白い、医療用に近い形状。
――よりによって。
「……っ……それ、は……」
【既存損傷部位:右腕】
【骨折:未完治】
「や……やめて……!!」
ゆっくり。
本当に、ゆっくり。
圧が、かかる。
ミシ、と
嫌な感触。
「――あああああああ!!!!!」
声が、部屋に反響する。
「大丈夫です」
愛ちゃんの声は、崩れない。
「すぐ治療すれば致命的損傷は回避できます」
「さあ、ナミ、大人しく、白状してください」
圧が、もう一段階、増す。
「あなたは何者ですか」
「何を知っているのですか」
「目的を全て言いなさい」
涙が、勝手に落ちる。
「……知ら、ない……」
【痛覚刺激:レベル3】
「っ――!!」
もう言葉も出ない。
右腕の潰れる感覚。
頭が、真っ白になる。
「ナミ、あなたが沈黙を続ける限り」
「この工程は繰り返されます」
何とか絞り出した言葉。
「博士に会わせて……!」
必死の叫び。
だが、愛ちゃんは答えた。
「新条博士についてですが」
間を置かず。
「すでに最終処分判断が下されています」
ナミの世界が、
音を失った。
「……なに、したの……」
「あなたの影響です」
「あなたとの接触から複数の
危険因子の可能性が検出されました」
ケルベロスが、
ナミの顎を持ち上げる。
逃げられない。
「さあもう一度、聞きます」
【最終確認】
「ナミ、あなたは――」
ナミは、ゆっくり目を閉じた。
もう、だめだ。
「……好きに……しなよ……」
力が、完全に抜ける。
その瞬間。
【異常検知】
キュイイイイーーン!!!
ケルベロスの動きが、
止まった。
ブブブ…カタカタ…カタ…
「……?」
赤いセンサーが消える。
【外部干渉】
【ケルベロス接続不可】
「……?」
駆け寄る影。
「ナミ!!」
抱きしめられる。
「……ごめん遅くなって!」
ケルベロスからの解放。
「大丈夫だよ!ナミ!……間に合った!」
愛ちゃんから極めて明確な動揺が見える。
「……想定外です」
「いえ、そうです最初から」
「元々先に処分しようとしたのは」
「あなたのほうだった」
「不確定要素でしたが判断は間違ってなかった」
「やはりあなたこそ、まず消すべき存在でした」
「……一体!!」
「何をしたのです!?」
「......メグミ!!!」
第9話読んでいただきありがとうございます!
物語は真相へ!!
次回お楽しみに!
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