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ひとりぼっちになりました

あれから約1週間。


街は変わらない。

人は迷わず、

信号は止まらず、

危険は、今日も最初から排除されている。

――なのに。


ナミの世界だけが、静かに崩れていた。

白い天井を、ナミは見つめていた。

治療用ベッド。

身体に異常はない。

逃げ出さないための

治療という名目の監禁。

あるのはカウンセリングのための時間だけ。


視界に、愛ちゃんの表示が浮かぶ。

「ナミ

体調はいかがですか」

「……最悪」

「正直な回答ですね」

少し間を置いて、愛ちゃんは続けた。

「メグミは

ご家族と共に別の町へ引っ越しました」

ナミの指先が、わずかに震える。

「……そっか」

「今回の件でナミとメグミはもう今後…」

「わかってる……もう、会えないんだね」

「はい」

淡々とした声。


メグミは命は助かったが

ナミとは今後接触しないように処置がとられた。

「ナミの“人を救いたい”という気持ちは

尊重すべきものです」

一瞬、胸が揺れた。

けれど。

「しかし

社会は個人の感情より

安定と安心を優先します」

ナミは、顔を歪めた。

「……何が悪いの」

「友達を助けたいって思って

何が悪いのさ!?」

声が大きくなる。

「死ぬって言われてたんだよ!

放っておけるわけないでしょ!」

「理解しています」

愛ちゃんは、穏やかに答える。

「ですが

団体、組織、社会において

個人の主張が許容される範囲は

最低限に制限されます」

ナミは、息を詰めた。


「例を挙げましょう」

愛ちゃんの声が続く。

「飼育している鶏が

一羽だけ異なる行動を取った場合

群れの安全のため

隔離、もしくは排除が選択されます」

ナミの中で、何かが弾けた。

「……人間だよ」

「ナミ聞いてください」

「私達人間だよ!!」

ベッドの上で、ナミは身を起こす。

「人間を!!

家畜みたいに扱わないで!!」


心拍が跳ね上がる。

呼吸が乱れる。

「ナミ

また感情が高ぶっています」

「当たり前でしょ!!」

涙が、勝手に溢れる。

「助けただけなのに……

生きててほしかっただけなのに……」

少しの沈黙。

「……本日の会話は

ここまでにしましょう」

愛ちゃんの声が、柔らかくなる。

「今はゆっくり

休息が必要です」

表示が、消えた。


ナミは、ベッドに崩れ落ちた。


面会。

ガラス越しに、母の顔が見える。

それだけで、

胸の奥が痛んだ。

「……ナミ」

母の声は、震えていた。

「どうしてこんな無茶を……」

ナミの口から、言葉が溢れ出す。

「ごめんねママ。

愛ちゃんの指示に少し逆らっちゃっただけよ」

「メグミは助かった。生きてる。

私は間違ったことはしていないのに……!」

母は、首を振る。

「ナミ……

お願い、落ち着いて」

「落ち着いて!?

私が悪いの!?」

声が、抑えられない。

「友達助けたのが!?

犯罪なの!?」

母が、涙をこぼす。

「ナミ、やめて……」

その一言で、ナミは黙った。

怒りも、悲しみも、

全部、喉の奥で詰まった。

母の顔は、

壊れそうだった。


ほどなくナミは退院するが…

退院後の家は、静かだった。

会話は必要最低限。

視線は、すれ違う。

ナミは、わざと距離を取った。


近づかない方がいい。

……そう、思い込もうとした。


でも。

夜になると、

胸が、痛くなる。


そして

食卓で、父が言った。

「ナミ」

間を置いて。

「一人暮らしを考えてみないか」

母は、俯いたまま。

「愛ちゃんも推奨している。

家族みんなのための"最適解"だ。」


ナミは、何も言えなかった。

否定も、肯定も、できなかった。

ただ、

心が、静かに沈んでいく。


ナミは、ゆっくりうなずいた。

その夜。

自分の部屋で、ひとり。

泣き声は、出なかった。

ただ、

静かに、涙が落ちる。


助けたから。

救ったから。

――ひとりぼっちになった。

それでも。

ナミは、

自分の選択を

間違いだとは思わない。


とても寂しいけれど

何かを決意したナミの瞳は

とても強く儚げだった。



4話まで読んでいただきありがとうございます!


タイトルの回収してしまいましたがまだ序章。

物語はここからが本番です。

ぜひお楽しみに!

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