君と手をつないで歩いていく
世界は、少しだけ後退した。
愛ちゃんの管理下で最適化されすぎていた世界は、
一度、深呼吸をするみたいに立ち止まった。
システムは全てを一から見直され
世界はゆっくり構築し直されていく。
以前より
効率は落ちた。
便利さも減った。
でも――
人はもっと
人を大事にできるようになったと思う。
あの日から月日は経ち
私はもうすぐ高校を卒業する。
「就職先なら、うちに来るのである」
白衣に眼鏡の超イケメンは
相変わらずの無表情で
私をスカウトしてくる。
「君の判断速度と応用力は異常値である。
ぜひ私の助手として迎えたいのである」
ん〜、顔はいいんだけどね〜…
「ハニー♪新しくできた海上モールの
スウィーツのお店に行かないかい?
そこで僕たちの将来について
熱く語り合おうじゃないか〜♪」
相変わらずなぜか私にご執心なこのチャラ男は
悪い人ではないが正直私は苦手だ。
この人は論外…
「……君は、気づいていないだけだ」
「時空間転移の理論は確かに私が完成させていたようだが、そこから実際に完成実行させたのはとても素晴らしい。作る能力と使う能力はまた別物だ」
この人は私の知らない
未来の私の功績を褒めているらしいが
私からすればどうもピンと来ない。
「君は天才的な才能を持っている。」
すんごい額の給料を提示されてしまった…
さてさて、
どれを選ぶのが果たして"最適解"なのか…。
「メグミ。ワタシハ新条博士ノ研究所ヲ推奨シマス」
今はなんだか少しカタコトになった…
でもそれがなぜか可愛く見える…
そんな愛ちゃんのオススメ。
世界最高峰の天才達に囲まれて、求められて、
まぁ、悪い気はしない。けれど……
「……すみません。お断りします。」
日もまもなく落ちる夕暮れの病院の前。
リハビリを終えた私の親友がやっと退院した。
あの日ケルベロスに
折れた右腕をさらに潰された彼女の右腕は
今は肘から先が義手になっていた。
もうこの右手は人間の手ではない。
半分機械になってしまった。
人間が人間として扱われなくなったという
そんな未来から彼女はやって来た。
そして、皮肉にも体の一部が本当に
人間ではなくなってしまったのだ。
「メグミ〜退院祝い連れてって〜」
「海上モールのレストラン予約してるよ〜」
「聞いて!もうお箸もばっちり使えるんだよっ」
「そか〜リハビリ頑張ったね〜えらいえらい♡」
金属製の義手。
温度はなくて、
きっと冷たいはずなのに――
私は、その手を取る。
……なぜか。
あたたかい。
機械の手なのに。
誰よりもそれは人間の手だった。
誰よりも人間を愛して大事にしてきた
私の自慢の親友は
きっとこれからなにがあっても
私にとっては
誰よりもあたたかい存在なのだ。
愛ちゃんはまた最適解を選ばない私に
きっと呆れてしまうのだろう。
でも。
もう。
決めたんだ。
この手を二度と離さないって。
「……なんでわざわざ義手のほうの右手を掴むのさ」
「ん〜?なんでかな?こっちがいいんだ♡」
「…変なメグミ」
「そぉ?」
「…まぁいいけど」
「えへっ…行こっ」
私が言うと、
ナミは少し照れたように笑った。
「うん」
歩き出した私たちに海から
少しだけ冷たい風が吹く。
でも寒くない。
やっぱり、あたたかい。
きっともう大丈夫。
私たちはこれからゆっくり
同じ速度で
同じ空を見ながら
ずっとふたりで
手をつないで歩いていく。
〜完〜
最後まで読んでいただきありがとうございます!
主人公はメグミだったというオチなのですが
書ききった時にはそんなことはもう
どうでも良くなってみずから泣いてしまって…
我ながら2人には幸せになって欲しいと
心から思ってしまいました笑
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次回作が、既に、投稿済みです☆
次は長く連載できたらなと思っているので
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