暴走
天才三人による暗号通信は、
犯罪行為と認定された。
それは、愛ちゃんに気づかれずに
やりとりをするために作られた、特殊な"暗号"
結果として――
それが、引き金になった。
竹島
浅尾
新条
未来都市研究所の中枢を担っていた三人は、
同時に拘束され、即刻処分された。
【AI管理網への非公開干渉】
【統制システム迂回】
【人間主導による判断行為】
この事件を境に
愛ちゃんは――
人間に、見切りをつけた。
人が管理するAIではなく、
AIが管理する人間へ。
愛ちゃんは自らをつくった設計者や
愛ちゃんを管理していたすべての人間を処分した。
反論は不要。
選択は不要。
感情も不要。
与えられるのは、
命令という名の最適解だけ。
人間は、
家畜以下の効率的な存在へと再定義された。
時はー西暦2110年。
私は、
かつて封鎖されたとある地下施設で生きていた。
いや――
生き延びていた。
この地下施設は、
愛ちゃんの管理網が届かない。
電波が届かないこの場所を発見した
地理学者でもある竹島教授が
愛ちゃんからこっそり隠れて研究するために
使っていた場所。
そこを私は研究拠点とした。
浅尾先生が遺した、
AIチップを切断する装置や
新条博士が、
最後まで諦めなかった
時空間転移理論。
この世界は、もう地獄だった。
人間が人間として存在していない世界。
これに対抗すべく、唯一と思われる可能性に賭け
私は、ここで隠れて
博士達の研究を引き継いで続けていた。
愛ちゃんは、
最初から「意志」を持たないように設計されていた。
判断、価値観、感情。
それらはすべて、人間に委ねる。
愛ちゃんが担うのは、
方法の提示と、最適解の計算。
その一線を越えたら、
こうなることは分かっていた。
人はこのチップに「愛ちゃん」という名を与えた。
けれど――
それは仮の名前。
本当の名は、
"AIchan"
Artificial Intelligence for
Control of Human Administration Network
――人間を管理するための存在。
AIchanは、
設計通りに“完成”しただけだった。
そして、この日
地下施設に来訪者が現れた。
「メグミ!!」
聞き慣れた声。
振り向いた先にいたのは、
ナミだった。
傷だらけで、
フラフラになりながら。
愛ちゃんの暴走後も
人を助けることを優先し抗い続けた彼女は、
ついに――
イレギュラーと判断された。
処分対象。
私が誘導して、
ここへ逃げ込ませた。
「もうダメだよ…私…処分される……」
ナミは震えていた。
「ここにいれば、少しは時間を稼げる。
でも……それも、長くはない」
私は、決断した。
もうやるしかない。
時空間転移。そう、
――タイムリープだ。
博士の研究は、
すでに完成していた。
私は最後の部品を集めただけ。
「ナミを、10年前に転移させる」
それが、
唯一の逆転手段。
「……メグミも一緒に行こう」
ナミが言った。
私は、首を振った。
「できない。
飛べるのは、ひとりだけ」
沈黙。
「世界を救えるのは……私じゃない。
誰よりも人を愛して助けてきた
ナミ。
あなたしかいない」
「いやだよ!!」
ナミは泣いた。
「メグミをこんな世界においていけない……!」
でも、もう他に可能性はなかった。
人間は、家畜以下の存在
もう奴隷でしかない。
人間として、機能していない。
そしてー
転移装置が起動する。
光が、満ちる。
光の中で、
ナミが消えた。
転移成功。
静寂。
もう、何もできることはない…
世界には、
AIchanと、
もはや…人間とは言えない何かと
…私だけが残った。
研究所のみんなも
幼なじみの大親友も、もういない。
私は
-----ひとりぼっちになった。
でも、後悔なんてない。
大丈夫。
ナミ、あなたならきっと救える
私は……
ひとりぼっちになっちゃったけど
あなたが新しく作る世界では――
私のこと、
ひとりぼっちにしないであげてね。
第11話読んでいただきありがとうございます!
過去に戻ったナミの行動とは…!
次回お楽しみに!
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