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エピローグのプロローグ

――私の物語は此処で終わる。この先の台本は無い


今までの無意味で愛おしい足掻きを一つ一つ思い返す。

最初に知り合いの警察官が死んだ。秘密保持何て無いようなクズ警官だったがいいやつだった。それでもパッと死んだ。

次に近所の女の子が死んだ。貧乏なのを言い訳にせず毎日働いて必死に生きていた。それでも死んだ。

そんで仲間がたくさん死んだ。ゾンビに人間、色んなもんに殺された。運命に絶望して自殺したやつもたくさんいた。みんないいやつだった。それでも死んだ。

そして最後に私が死ぬ。風船みたいに中身がなくて、軽々しいのに飛ばない人生だったな。


腹部を押さえる左手がじんわりと赤く染まる。


こんな世界が嫌いだった

愛しやると抱き寄せると遠のいて、嫌いだと突き放せば付きまとってくる、こんな世界が


声にならない叫びがゾンビどもの呻き声と、コンクリートを爪でなぞる不協和音を前に立ち消える。

「ああ、なんなんだよ本当に。」

最後はお別れの言葉と共に出血死でもって逝くのが理想だったんだけどな。

「仕方が無いか」

カチャリと手持ちのハンドガンを顎下に構える。

そしてゆっくりとトリガーに指を掛ける

「ここで終わりか」


ドンとうすい扉が震えるたびに、こんな死に体にすがりつく臆病者が私の視界に映り込む、嫌いな眼をして。

「本当になんなんだよ」


その眼をやめろ。やめてくれ。やめてください


その子犬みたいな眼に弱いこと分かってるくせに…コイツは最後まで。

手中の撃鉄を正面に据える。4発使って、残りの弾は8発。

この傷じゃあ、こいつを安全地帯までお見送りはできないだろうが、ケツを蹴ってやることぐらいはできるだろうか。






・・・。

・・・痛みで気を失って、それでもまた痛みにたたき起こされて—

あいつは無事だろうか?怪我無く逃げ切れただろうか?確かめようにも、足は食いちぎられて動けもしないし、周りを見ようにも目ん玉が霞んで見えもしない。


・・・吸っても吸っても息切れが収まらない。加えて例の殺人衝動とやらまで腹の底から湧いてくる。これがゾンビ化ってやつだろうか。

震える指先がまだ自分の意思で動く事を確かめてから、ゆっくりとこめかみに相棒を置く。後生大事に取っておいた最後の弾丸に身を預ける。


バンッ


――—この物語は人間とゾンビ、生と死の見分けもつかないような地獄を歩んだ、生き残りたちの最初の7日間の物語である――—



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