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シーン2|防衛政策専門委員会

シーン2|防衛政策専門委員会・非公開ブリーフィング(防衛省 政策評価室)

日時:令和7年6月26日 午前10時|場所:防衛省本庁舎 地下第1会議室(通称「赤室」)

参加者:


芹沢 景一(国家安全保障局次長/前統幕副長)


辻野 誠(内閣情報官/元公安調査庁)


一条 昴(東京工業大学・核工学教授)


神林 美咲(日本原子力学会理事/元JAEA)


黒崎 武(外務省 軍縮不拡散部長)


記録官(非公開)

【冒頭発言:芹沢(国家安保局)】

「昨日の国会での質疑を受け、我々は一つの仮定に基づいて政策試案をまとめる必要がある。すなわち――“日本が核抑止力を内製化する場合、その実現性と地政学的余波は何か”」


【黒崎(外務省):】

「率直に申し上げて、NPT脱退というカードを切った瞬間、日米同盟の“道徳的な骨”は折れます。非核三原則は国是です。それを捨てた時、ASEAN諸国を含めた信頼の連鎖は連鎖的に崩壊します。」


【芹沢:】

「それでも現場の感触としては、“核をもたないことによって危機管理能力を疑われる”リスクが高まっている。北朝鮮はすでに移動式TEL搭載の固体燃料型を運用している。先制攻撃を封じる構造は壊れた。」


【一条(核工学):】

「仮に日本が抑止核戦力として“最小限の報復能力”を保有する場合、技術的には以下の要素が必要です:


核分裂起爆装置(プルトニウム239)


小型化・熱管理済みの弾頭(約300kg)


ミサイル再突入体の耐熱・誘導制御(CEP<300m)


配備母体としてのSLBM+戦略原潜


現在、我が国が保有するのは①の技術デモまで。②〜④は“共同研究”か“国外導入”を前提にしないと、10年スパンの国家総力投入になります。」


【神林(原子力技術):】

「現実的には、既存の高速増殖炉計画(もんじゅ後継)の再稼働と、J-PARCなど高エネルギー物理施設の軍事転用が問題になります。国内世論も、技術者倫理も、揺らぐでしょう。」


【辻野(情報官):】

「世論形成には3フェーズ必要です。


“核抑止なき自衛”の危険性をメディアと連携して段階的に可視化する


“潜在的核抑止”という概念を浸透させる


韓国や台湾といった“周辺の核化リスク”を同調圧力に変える


そして何より、“中国の抑止”ではなく“アメリカの不信”を軸にすべきです。トラストの揺らぎが最大の論点になります。」


【芹沢:】

「その場合、戦略原潜による“セカンドストライク”能力の整備が最も現実的だと?」


【一条:】

「はい。固有の核報復力を確保するには、最低でも4隻体制のSSBNが必要です。建造には15年、乗員養成を含めれば20年スパンです。」


【神林:】

「しかも原子炉を搭載した攻撃型原潜(SSN)との併用が不可欠です。戦略原潜は護衛なしには出航できません。つまり、潜水艦戦力だけで30年規模の防衛改革が必要です。」


【黒崎:】

「外交的には、パリ不拡散体制やEUの信認をどう維持するかが鍵になります。フランスやインドのように“独立核戦力”を保有して孤立しなかった国々もある。しかし、日本が“被爆国”であることが、道義的に難しいのです。」


【芹沢:】

「……だが、技術的にも、外交的にも、制約を抱えた“半核保有国家”が最も脆弱であるという現実もある。」



記録官注記:

会議は約3時間にわたり、以下の緊急課題が提起された。


日本国内への「戦術核配備シミュレーション(前方配備型)」の検討


「準備型核抑止力」(Pre-Nuclear Deterrence)政策の立案


新設予定の「戦略兵器監理局」構想案の草案作成


有事に備えた“脱NPTオプション”文書の極秘起草作業開始

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