陰キャの現実
前回のあらすじ
僕はよく妄想する「バケモン」(バケットモンスター)好きのただの陰キャだ。
今日は待ちに待った、バケモンの一番くじの発売日でコンビニに出かけた。
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ほくほくな気分でコンビニを出た僕は、足早に家に帰ろうとした。早く帰りたいので僕は近道を使おうとした。本当は少し遠くの角を曲がってから家に帰るのだが細くて暗い路地裏を抜けるとすぐ家に着けるのだ。ちょうど今日妄想をしていたその路地裏を目指して早足で歩いた。走ると歩くの中間。走ると息切れして苦しくなる。これも運動神経がない僕の悩みだ。進むこと数分、意外と早く暗い路地裏についた。一歩踏み入れる。何かさっきとは違う雰囲気がする気がする。まぁいつも使っている道だからこの雰囲気には慣れているけど…
そのまま歩く。歩きながらも、妄想をする。ちょうど学校でしていた妄想だ。本当に前からヤンキーみたいなの来ないかな?そんな不安と緊張と期待が入り混じった感情だった。狭くてそこらへんにゴミがあるので躓かないように注意しながら歩く。
前から足音がする。妄想の世界から帰ってきて前を見ると、本当に今妄想に出てきたようなヤンキーが来た。
来た!妄想ではあいつが勝手にぶつかってきた。今回は自分からぶつかりに行こうとか考えているけど、やはり勇気が出ない。すると
ドンッ!
妄想通り相手からぶつかってきた。チャンスだ!ここで殴ってやるんだ!
でも僕の思い通りに体は動かない。
何故だ⁉
本来ならここでもう右手が前に出ているはずッ!
なのに聞こえてくるのは殴るような鈍い音ではなく鋭い怒声…
恐ろしくて半泣き状態になってしまっている。
「どこ見てんだよっ!」
本来ならばここで反撃の声をあげているはずなのにッ!出てくるのは
「ァ…ゥェ…」
変な声が出ていた。
おかしいおかしいおかしいおかしいオカシイオカシイ…!
「す、すみません…でした」
「チッ」
いつの間にか涙がこぼれ落ちていた。
相手の歩く音がうっすらと聞こえる。
拳を握りしめる。本当ならこの握りしめた拳は相手の顔にぶつけていたはずなのに…
そして僕も歩く。さっきよりもっとゆっくりと。足が鉛のように重い。
そして路地を出ると大通りに出た。周りの人目が気になる。何度も涙を拭う自分がつくづく惨めだ。
やっとの思いで家に着いた。
さっさと部屋まで行きバケモンのグッズをそこらへんに投げるように置いた。
さっきのことを思い出すと泣きそうになる。悔しさ、相手への怒り、自分への怒り。いろんな感情が入り混じる。
その時僕は思った。
「あんな頭悪そうなやつより絶対自分の方が優秀だ…!
そうだ、そうだよな。あんな奴なんかどうせ社会に出たら使い物にならない。自分はまだ価値がある方だと思う。あいつなんか社会に出て苦しめばいい。僕は将来頭の良さを生かして年収一千万プレイヤーになるんだ!社会では力なんて何の役にも立たない!」
そう思った。
下を見ると床に小さな水溜りができていた。
今は弱い。
だけど…
十年後には僕が勝つ!!
投稿遅れてすみません!