第弐拾玖撃 神罰
「みかんちゃん、スキャンしてコアの位置分かる?」
「スキャンカンリョウ、モニターニヒョウジシマス」
変形するたびに物凄いスピードでコアが動いているのが画面上に映し出された。
「みかんちゃんロックして」
「ロックオンカンリョウ」
εとBAさんの物理攻撃は、やはりあまり効いていない様子…εの斬撃は通っているけれど、パーツが細かくなっても動き続けている。
「さて、初めるわよ!」
ジェットを焚いて距離を詰めると、U-2は回転しながらエネルギー弾を放ってきた。
咄嗟にライトセーバーで斬りつけると、想像以上の電圧で周囲に稲妻のような電光が走った。
「うわっ!」
反発の衝撃で手がジンジンと痺れている。
被弾した地面は抉られて、一斉に放たれたエネルギー弾はクレーターを量産している。
「全く面倒ね。BAさん、変形合体!」
「BAヘンケイガッタイプログラムキドウ」
元々Δが破損した際のスペアパーツを想定して作ったBAさんだけど、ロマンチストなあたしは遂に作り上げてしまったのだよ。あのアニメでしか見たことなかった、変形合体ロボ。
εの変形はレールガンなので、今回は出番はないかもしれないが、是非ともU-2を仕留めた時に記念に一枚写真を撮りたいものだ。
あたしのΔにBAさんの装甲が合体して、如何にもパワー系の機体風にフォルムチェンジした。
しかしこの姿は実は分霊箱たるBAさんの防御力をフルに生かした活用法なのだ。当然バッテリーもシェアできる。
「バッテリーキョウユウカイロ、オールグリーン。176%」
しかし外装が黒基調になってしまうのは、イマイチ気分が上がらない。
「ファイターモード起動!拳の電気は切っといてね」
「ファイターモードキドウ」
εが斬りかかると同時に、あたしは対極の位置からジェットを焚いて距離を詰めた。
背中に重い噴射を受け体勢が崩れそうになるのを体幹で立て直し、肘のジェットをチャージする。
威力が楽しみだったのに、アースガルズでは試せなかったパイルバンカーのショックなしバージョンでございます。
「召し上がれ」
想定以上の勢いに、右腕が先行して右半身が引きちぎれるかと思ったよ。
U-2に当たる直前、コアを覆う様に周辺にパーツが集まったのを塊ごと吹っ飛ばした。
「っつぅ〜これは流石に改良が必要ね。威力があるけど腕がもげるわ」
そしてあたしにはもう一つどうしてもやりたかった事がある。
「ε!スタンドモード!」
「ヤレヤレダゼ」
あたしとεは連携してU-2に追い打ちの連打を浴びせる。打撃を入れるたびに身体が弾け飛びそうな衝撃が走って、あたしはアドレナリンがドバドバです。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
εは連携を崩さずに連打を加える。ほんとに優秀ねこの子。
U-2が地面にめり込むまで打撃を喰らわせたのに、あまり外皮を剥がせなかったようだ。
「次はこれよ」
ライトセーバーをコアがある位置にブッ刺した。驚いたことにコアまで到達する前に全て吸収されているみたいだ。
あたしのライトセーバーは起動していない時は刀身がない為、全てが高電圧エネルギーだ。実態があるεのプラズマブレードの方じゃなきゃダメみたい。
「εお願い!」
あたしが入れ替わりで距離を取り、εがブレードを持って突撃した時に誤算が生じた。
U-2は球体に変形し、物凄い高速回転で実態を伸ばして物理攻撃をしてきた。
「ぐわっ!」
距離をとる時にあと少し後ろに引くのが遅かったら、ミンチにされていただろう。
「く…ダメージレポート」
「バッテリーザンリョウ72%、BAキタイノブンリキドウハフカノウ、εノバッテリーザンリョウ4%、サイキドウフカノウデス」
想定以上にダメージが大きい。
「絶体絶命というやつね…くっ!」
あたしはジェットと焚いて距離を取ろうとした時に気がついた。アドレナリンであまり痛みを感じなかったけれど、おそらく衝撃で肋骨が折れている。シールドを張ってBA装甲を纏っているのにこの威力は想定外だった。
その一瞬の隙がまずかった。あたしはU-2が伸ばしてきた一部に絡め取られた。
「うわっ!」
身動きできなくなり、U-2の目の前で抵抗している最中、背筋にビリっと危険信号が走った。
「いかんっ!」
U-2がエネルギーをチャージしているのを視界に捉えた瞬間、何倍速にも回転するあたしの思考は、一瞬にして“詰み”という結果を弾き出した。
ジェットをフルで焚いて抵抗するも虚しく、あたしの視界は光に包まれた。




