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グロウステイル~王様が懐柔してくるのでその手に乗ってあげる前に大魔法使いになります~  作者: 天崎羽化
第7章 二国間協議

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大賢者は軽率に世界を滅ぼす癖があります


 にやりと口角をあげ、嘘偽りなどないという証に、一直線に彼を見るヴィクトルの発言に、その場にいた全員がフォースタスに注目したが、彼は静かに書類に目を通している。


昔、聞いたことがあった。「なぜ、大魔法使い」と呼ばれているのかと。


その答えは「年寄りだからですよ」とごまかされていたが、よく考えれば、彼ほどの能力がありながら、国に腰を据えて、執事のまねごとにおさまっているわけがないというのは、誰の目にも明らかなこと。

書類に目を通し終わったフォースタスは、自分に集まった注目の目を見まわした後、にっこり微笑み返す。


「あれは交戦というより、戯れですね」

「戯れというには、少々規模が大きすぎないかい?」

「あの頃は、世界を駆逐していくのが堪らなく好きだったので。軽率でした」

「いいね。ぼくも、酔狂は好きだよ」


シュライスは彼との会話に満足したのか、紅茶を入れたティーカップ自ら手渡した。


「あの時期のルシアは、魔法使いであれば、弱かろうが強かろうが、だれにでも勝負を挑んでいました。ある日、彼がローズリーの地に現れたと聞き、急いで城内の庭園にいくと、酒に酔ったルシアが酩酊状態で暴れていた。気が触れた様に叫び、所かまわず魔法を放っていました。まるで、何かにおびえているように」


モノクルメガネをとり、胸ポケットに収めた。

フォースタスがメガネをかけていない姿を見るのは久しぶりで、切れ長の瞳、薄い唇の下にはほくろがあり、美しく整った顔をしていることに、この場にいる誰よりも、わたしが一番動揺していた自信がある。


「応戦しながら彼を問い詰めると、悪魔に裏切られたという。一介の魔法使いが悪魔の名を出すということは、本人の実力次第によっては愚弄に値します。詳しく探っていくと、どうやら悪魔の一族の女に振られたようなんです。が、わたしにとって至極どうでもいい。手前勝手で御粗末な理由だとわかったので、波動魔法で吹き飛ばし、火炎放射でお灸を据え、そのあと、神殿に投げて寝かせてあげただけですよ」


「それって、振られて傷心していた人が暴れていたから、お灸を据えたら火力間違っちゃって、半殺しにしちゃったってこと??」


ロイドの解説にフォースタスが首肯する。

全員から、気が抜けたようなため息が立ち込めた。


「その通りでございます」


「・・・・・・聞かなきゃよかった」


ヴィクトルは、お腹を上にしたままうなだれながら、キッシュをむしゃむしゃと暴食した。


「その女が、あなたのおばあ様ですよ、ヴィクトル様」


突然の方向転換に全員が「はぁ!?」と一体感のある声で驚くが、一番驚愕しているのはヴィクトルだった。

もう三つ目になるであろう手に持っていたキッシュを落としていたのだから。


「しかも笑えることに、自らフッた男を吹っ飛ばしたわたしを彼女は仇討ちだと言って襲ってきた。そして、わたしが懇意にし育てていたローズリー城内の美しいバラの庭園踏み荒らしたあげく、起きたらなかなか寝てくださらないで有名な幼いリリア様を寝かしつけた直後にわたしの背後を狙うという‥‥用意周到且つ極悪非道なやり口・・・・・」


フォースタスは思い出し怒りで表情を硬め、青筋を立てている。


「(・・・・・すぐ寝なくてごめんなさい・・・・)」


「ルシアが後を追うように来た頃、ちょうどわたしが、彼女を捕虜にしている最中でした。それを見た彼が激怒し、本気で戦いを挑んできた。あの頃はわたしも血気盛んだったもので。先ほどまでの愚行や、彼のこれまでの行いを思い出すと、火加減の調節を間違ってしまいまして。ついつい、半殺しに」


頬を染めて恥ずかしそうに笑うフォースタスの顔に唖然としてしまう。

やっぱり魔法使いはどこかネジが飛んでいるとおもった。


「リリアの周りはクセの強い人が多いね」


シュライスは口元に手をやりながら爆笑に近い笑みをこらえている。

ロイドも半笑いのまま座った目で彼を見ていた。


「契約書の内容は把握いたしました。ローズリーやリリア様への不利な条項はありません。 リリア様、ご署名を」


すっと書類を差し出され、羽ペンで名前を書いた。


「リーガルは野蛮で高慢な魔法使い集団だと昔から思っていました。ゆえに、リリア様を寄宿舎でシュライス陛下と出会わないようにするにはどうしたらいいか。膨大な人員と策を講じてなんとか阻止することがわたしの目下の使命でもあった。しかし、あなたたちは出会ってしまった。運命とは残酷なものだ」


フォースタスは、やさしい口調の中に皮肉を加えながらも穏やさを湛えた姿勢でわたしのサインが入った契約書を手渡す。


「ご高配痛み入るよ」


シュライスは、一瞬光らせた瞳を閉じるといつもと変わらない目色で穏やかさを戻した。

目を細め、まるで見透かされないようガードするように目の色を見せなかった。


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