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第66話 マリーナ視点、あとを任せられる奴がいるから、出し惜しみなく全力をだす

「うぉおおおお!!

 ――――――王家の赤い炎槍ロイヤルファイアースピア!!」


 デゴン次男は、わたしの放った炎の突きをギリギリで回避しようとするが、完全には避けきれずその左腕に直撃する。

 その衝撃で、後方へ吹っ飛ぶ魔族。


「グガっ!―――あっちぃいい! 痛てぇええええ!」


 寸前で致命傷を避けたか。


 だが―――


 わたしは再度スピアを構える。


 全身の魔力をスピアに充填。


 腰を落として、足に力を入れる。



 致命傷を回避しようが同じこと。

 討ち果たすまで、何度でも攻撃するまでだ!



「ヒャハハハ~~弟よ~~!!」


 三男に【超回復】とやらをかけてもらう気か?


「ヒャハ? おい? なにやてんだ! そんな小娘さっさと始末しろよ!」


 無駄だ。ステラと戦っている以上、三男はおまえのサポートなどする暇はない。

 あの聖女をただの小娘だと思ったら、大間違いだ。



「チッ、使えねぇ弟だなぁあ! なら~~おまえも痛みを共有しろやぁあああ~~

 ――――――悪魔損害共有魔法デーモンダメージシェア!」



「ウグッ……これは……」


 左腕に強烈な痛みが走ると同時に、血がにじみ出してくる。



「ヒャハハハ~~俺のダメージはおまえに共有されたぜぇええ! しかも倍返しだぁ~~さあさあ、こいよ! 自慢の突きを繰り出して来いよ~~すべて倍返しにしてやる、ヒャハハハ~~」



 ダメージを共有か……

 なるほど、こんな魔法は初めてだ。それにこいつらは様々な特殊能力を持っている。



 だが、それがどうしたというのだ。


 こいつらは上位魔族。人智を超えた存在だ。

 だから、いかなる想定外なことも起こり得る。


 ダメージを共有したから、わたしが攻撃を躊躇するとでも思ったのか?


 わたしはそれも織り込み済みで、この戦いに挑んでいるんだ。



 エリスの中に魔族が封印されていることを聞かされたのは、わたしが幼少の頃だ。


 ある日エリスは一緒に寝て欲しいと、わたしの手を握ってきた。

 寝ている時に、内なる悪魔が自分をいじめるのだと。


 わたしはエリスの小さな手をギュッと握り返して「わかった」と言った。

 目を輝かして、喜びを漏らすかわいい妹。


 それからというもの、私はエリスと一緒に寝るようになった。


 わたしが横にいると安心して眠るエリス。

 束の間の心地よい日々が続いた。


 そんな日々が少しばかり続いたのち。

 エリスがある日わたしに言ったんだ。


「お姉さま、今日からわたくし一人で寝ますね」

「ど、どうしたんだエリス! わたしのことが嫌いになったのか? そうか! 匂いか? 鍛錬後に汗をもっと流し落とせばいいんだな。よし、もう一回風呂に入っていくる!」

「フフフ、違いますよ。わたくしお姉さまの匂いも、汗も大好きです」

「んん? ではなぜだ?」

「だって、わたくしもう子供じゃないんですよ。そろそろ一人で寝ないと。それに最近魔族の声が聞こえなくなりました。わたくしも成長しているんですよ」


 そう言って、エリスは小さな笑みをこぼした。


 その時は、エリスも大人に向かって成長しているのか? 魔族の声もいったんは収まったのだな。などと思って素直に引き下がった。


 が、1年後に真実を知ることになる。


 ある日エリスの部屋に入ろうとドアに手を掛けた時だった。偶然にもエリスと侍女の会話を聞いてしまったのだ。


 わたしの知るエリスの声とは違う、酷く怯えた声。

 盗み聞きするつもりはなかったが、わたしはその場から離れられなかった。そして、その真実を知って愕然とした。


 そう、エリスに巣食う魔族はその力をより強めていたのだ。


 毎日うなされ続ける夜をすごしていると……



 わたしはエリスが一緒に寝なくなった理由をようやく理解した。



 わたしがその苦しむ姿を見てしまうと、心配を掛けるから。

 そしてその苦しみが原因で、わたしがさらに無茶な鍛錬に没頭してしまうから。



 その日からわたしの心には一つの挫けないスピアが宿った。


 その日からわたしの鍛錬はさらに熱が入る。



 妹は絶対に守る。何があっても守ると。


 上位魔族の恐ろしさなんて、はじめからわかっている。


 それでも守ると決めたんだ。わたしに隠れて苦しむエリスを見て決めたんだ。


 この心のスピアは誰にも崩させない。




 だから魔族よ、いかなる攻撃を仕掛けてこようが――――――わたしの心は絶対にブレないぞ。




「ヒャハハハ~~もう諦めろよ~~赤毛の女~~~そうだ~おまえも仲良くエリスと食ってやるよ~ヒャハハハ!!」


 諦めるだと?


 エリスとはずっと一緒だった。


 そして――――――


 これからも一緒でいるんだ!


「ふぅう―――」


 わたしは深く息を吸い、己の精神を統一する。


 わたしの力のすべてを―――

 わたしの魔力のすべてを―――


 相棒のスピアに注ぎ込む。


 何度も放ってきた突きを放つために。


 動けなくなってもいい。一撃であの魔族を葬り去る最高の突きを繰り出す!

 ダメージを共有するというのならば、その前に消滅させればいいだけの話だ。



 ここで全力を出し切ってやる!



「最大出力だぁあああ! うぉおおおおおおおお!!

 ―――――――――王家の赤い炎槍ロイヤルファイアースピア!!」



 赤い閃光が魔族の体を貫いた。そして王家の炎が魔族を焼き尽くしていく。



「ヒャハぁああああ!! こ、こんな……小娘にいいぃぃ……ぃ」


 深紅の炎をまとった突きが、エリスを苦しめていた魔族を粉々にする。



「―――おまえなんぞにエリスは渡さん!!」



 完全に塵と化したデゴン次男。


 ふぅ……やったぞ。エリス。



 この大一番で、全力を出し切る事ができた。


 まだ魔族は残っているが、まったく不安などない。


 わたしには頼りにできる奴が出来たからな。



 ――――――あとは任せたぞ、アビ。


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