表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/69

第64話 悪役アビロスとブレイル(主人公)

 巨大な雷の塊が俺に直撃する。


 ぐぬぅううう! やっぱ痛てぇええええ!!


 意識飛びそうだぜぇ……だがな。

 避けるわけにはいかねぇんだよ。


 俺の肉壁が突破されたら―――



 ステラに当たるだろうがぁああ!!



「ぐっっ……このやろう……クソデカい雷ぶつけやがって……」



 なんとか耐えきったが、俺の両足は体を支える力が残っておらず、膝からガクンと地に落ちる。


「あ、アビロス―――!」


 ステラが駆け寄り、俺の身体を支えてくれた。

 プスプスと焼けこげた音がして、全身の感覚がない。魔力も使用できずにガチの耐久力だけで防いだんだから当然か。


 聖女の腕の中でぐったりする俺。

 なんかこんなシーンが以前にもあったような気がする。


 しかし、これで俺は使い物にならなくなった。

 次に同じ攻撃が来たら、もはや防ぎようがない。



 ステラの腕から顔をあげて、一人の男に叫んだ。



「ブレイル――――――次はおまえの番だぞ!!」



「あ、アビロス君……そんな黒焦げになってまで……」


「グダグダ言ってんじゃねぇ! さっさとぶちかましやがれ!!」


「うん、わかったよ。なんだかやれそうな気がしてきた!」



 ブレイルから力が湧きだしてくるのを感じる。以前の地下室の時と同じ。

 そう、覚醒した時の力だ。


 ふぅ……やっと気合入りやがったか。


「悪役きっかけで感情爆発させてんじゃねぇよ……主人公。」


 デゴン次男に向かって全力疾走する主人公の背中を見て、俺は呟いた。



「うぉおおおおおおお!

 ――――――栄光の斬撃(シャインフラッシュ)!!」



 少し不格好ながらも、力強い踏み込みからの跳躍。その勢いのまま剣を振りおろす。

 そうだ、例え魔力が付与されて無くても―――思いっきり振りぬけ! ブレイル!



「ヒャグハッ!! このクソガキがぁあああ!!」


 ブレイルの光の斬撃が、デゴン次男に直撃した。


 三男の【超回復】で即座に傷口をふさぐ次男。


 こいつらは、三男の【超回復】があるので、防御に関してはそこそこ無頓着だ。

 だからブレイルの斬撃も簡単にくらう。


「でもよぉ―――軽いんだよぉおお!! ヒャハアア!」


「うあ……ぐっ」


 デゴン次男の強烈なパンチがブレイルの腹を強打し、苦痛の声をあげるブレイル。

 その勢いのまま体が宙を舞い、俺たちの眼前まで吹っ飛ばされてきた。



「ヒャハァアア!! 歯ごたえねぇなあ~~」



 俺の眼前でぐったりするブレイル。



「ブレイル……良くやった。これで勝機はみえたぞ」


 俺の言葉を聞いたブレイルは、ぶっ倒れたまま右手のみをグッとあげる。サムズアップしてやがる。

 ハハッ、根性みせたな主人公。良くやった。



「シャハハハ~~勝機だぁ? てめぇもボロボロのくせにいきがるんじゃねぇよ!」



「少し黙りなさい、魔族。あなたたちの時間は終りです!

 聖女の名において命ずる、聖なる息吹をこの者に与えよ

 ――――――聖上級回復魔法(ホーリーハイヒール)!!」



 純白の光が俺の身体を包み込む。ステラの優しい匂いがする。



 体の全ての傷がふさがり、新鮮な血液が俺の体中を駆け巡り始めた。

 俺は、スッと立ち上がりデゴン三兄弟をギロリと見据える。



「おい、クソ魔族――――――誰がボロボロだって?」



「シャ~~か、回復魔法だとぉ……おい次男! どうなっている!」

「ヒャ~~あ、兄貴ぃいいい! 俺の【魔力使用禁止】が発動してねぇええ!!」



 たしかに光属性が込められていないブレイルの栄光の斬撃(シャインフラッシュ)は、たいした攻撃力はない。


 だが、斬撃をくらった対象の特殊効果を全て無効にする。


 この能力のみは発動しているんだよ。



 そして俺たちに魔力が戻ったってことはよ―――



「うぉおおおお!!

 ――――――王家の赤い炎槍ロイヤルファイアースピア!!」



 赤毛の王女がとんでもない速度で、デゴン次男に突っ込んでいく。



 ハハッ、こういうことだよ!


「ステラ! デゴン三男をやれるか!」

「アビロス! だれに言ってるんですか? 聖女に不可能はありません!」


「よし……頼んだぞ。【魔力使用禁止】が封じられたといっても手強いことに変わりはない。油断するなよ」

「わかりました。アビロスも……あまり無茶をしないように! これはおまじないです」


 ステラはそう言うと、走り際に俺の頬に唇を押し付けて行った。



 ―――ハハッ、これは気合が入るぜ。



「あ、アビロス君……僕……役にたったよね?」

「ああ、大活躍だブレイル! 本当に良くやった!」


 ブレイルはステラの回復魔法で傷や体力は回復したはずだが、ぐったりとしている。

 無理に覚醒した力を引き出したので、精神負荷が強すぎたのだろう。


「あとは、俺たちに任せておけ」

「あ、アビロス君……」

「なんだ? ブレイル?」

「ぼ、ぼくも聖女さまみたいに、おまじないしてあげる」


 おい、なぜ唇を突き出す?


「それはまたの機会にな」


 まあ頑張ったので、ここで全否定するのは可哀そうな気がした。


「ええ! またの機会! 楽しみだな~~またっていつ? 明日、明後日? それとも1時間後かなぁ~~」


 クソっ。いらん事を言ってしまった……こいつマジで覚えてそうで怖い。


 が、今はそれどころじゃない。


「ナリサ、ウルネラ! エリスとブレイルを頼んだぞ!」

「「まかせてアブロス君!」アビロっち!」



 ゲーム原作ではブレイル(主人公)がデゴンを倒すことになっている。



 が―――悪役がデゴンを倒す世界。

 そんな世界が、ひとつぐらいあってもいいだろう。



 俺たちはそれぞれの最終決戦にむけて、進み始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ