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第55話 悪役アビロスとエリス(第4王女)の気持ち

「よし、ブレイルそっちのペグは大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ~ブレイル君」


 お、いい感じ。


 俺たちは目的地に到着して、野営準備に取り掛かっていた。


「ふぅ……これでテントの設営は完了だな」

「うわぁ~~テント~テント~~僕とアビロス君の~~」


 はしゃぐブレイル。


 俺はテントを2つ設営した。

 大きなテントと小さなテント。


 大きなテントは女子用だ。なにせ俺のチームは女子率が高い。


 そして、小さな方は……


「アビロス君と~~ひとつ屋根のした~~ふ・た・り~きり~~」


 その歌やめろ! なんかゾクっとするから。



 学園のメインイベントである野外演習。

 その目的は、食料確保、自炊、野営などを通じてチームでの役割分担や協力について学ぶことである。


 というのがゲームストーリー上の設定。


 が、実習してはい終わり。というわけにはいかない。ゲームなのだから当然ハプニングが起こる。



「アビロス、お待たせしました。さあ、行きましょう」


 ステラが銀髪をなびかせてこちらにやってきた。

 エリスも続いてくる。


 これから水の確保に近場の泉へ向かうのだ。

 水は生存するにあたり、なによりも重要である。

 それに俺たちのチームに水魔法の使い手はいない。


「ブレイル、帯剣しておけ」

「う……うん。アビロス君」


 野営地を出て、泉を目指す俺たち。メンバーは、ステラ、エリス、ブレイル。のこりは引き続き野営準備だ。

 泉の場所はすでに知らされている。毎年ここで野外実習が行われるからな。


 魔物の森にはその名の通り魔物が多数いるのだが、それは森の奥地に入ればの話である。この野営地は森の外れにあり、魔物はほぼいない。いても低レベルなやつだ。


 ガチで魔物の森奥地とかに放り込まれたら、いかにSクラス生徒とはいえ1年生だ。全滅してしまうだろう。


 俺は生き残る自信あるけどな。

 が、これはチームプレイを高める場だ。


「周囲の警戒を怠るな、ブレイル」

「エリス、探知魔法を周辺に展開してくれ。なにかあったら教えてくれ」


「は、はい! アビロスさま」




 ◇エリス視点◇



 魔法陣を展開して、探知魔法を作動します。


 半径100メートル、200メートル、300メート……っ!


 ……ここらへんが限界です。

 アビロスさまには1週間、基礎体力作りと魔力制御を中心にご指導頂きました。


 頭がズキズキする。まだまだ魔力をうまくコントロールできませんね。

 でも、こんなわたくしでもアビロスさまは必要と言ってくれました。


 この地域に魔物はほとんど出現しないらしいですが、アビロスさまはまったく警戒を緩める様子はありません。


 ちゃんとご期待に応えないと……



 アビロスさまはわたくしの秘密を知っています。


 私の中には凶悪な魔族が封印されている。


 そのせいでお姉さまは地獄のような鍛錬の日々を送っています。

 わたくしを守るために。


 女性らしさを磨くことなど二の次で毎日鍛錬……

 お姉さまは、もっとやりたいことがあったはずです。


 陰では戦闘狂の姫なんて言われているのも知っています。それでも、わたくしの為に頑張るお姉さま。


 そんなお姉さまですが、最近とても苦悩していました。顔には出していないつもりでも、わたくしにはわかります。大好きなお姉さまのことなんですから。



 そんな時に現れたのがアビロスさまです。



 入学試験の時に出会ったらしいのですが、

 その日からお姉さまの表情が変わったんです。


 毎日嬉しそうにアビロスさまのことを話すお姉さま。


 お姉さまにとって、命を預けられる人が現れたんだなと感じました。


 アビロスさまって、どのような方なのだろう?

 その疑問は、早々に解決されました。


 わたくしの誘拐事件です。


 アビロスさまはわたくしを救ってくださいました。

 僅かな時間しかご一緒できなかったですが、感じたんです。



 アビロスさまならわたくしの運命を変えてくれるかもって。



 だから、思い切って学園にも入学させてもらいました。

 もちろんお姉さまがわたくしの傍にいる時間を増やすという目的もありますが、なによりもわたくしの意思が強かったんです。


 だって諦めかけていたから……自分の未来を


 王城からもほとんど出なかったですし。

 人とも関わらないようにしていました。


 それが、こんな内気な引き籠り姫を誕生させたんです。


 でも、未来があるかもって希望が、わたくしの心に芽生えました。



 だから頑張るんです。

 自分ができることを、一歩でも前に―――



 そうすれば、本当に変わるかもしれない―――この運命が



『―――シャハハ、変わんねぇよ。おまえの運命なんざ』



 また出てきた……


「黙って! わたくしから出ていって!」


 わたくしの体内に巣食う魔族。

 時折、わたくしの心に無理やり入り込んできます。


 最近はその頻度がより増してきて……なんだかどんどん穢されていくような気持ちにさせれて。



 ―――こんな奴に負けちゃダメ。



『シャハハ、なに無駄な努力してやがる。俺様が復活したら~~まずはおまえをたっぷりと可愛がってやる。そのあとしっかり食い殺してやるよ! あ~~楽しみだ! シャハッハハ!』



 ――――――こんな運命を変えてほしい。



「魔族! 絶対に負けませんから!」



「……エリス、エリス?」

「あ、え? アビロスさま」

「大丈夫か? 顔色が悪いぞ」

「あ、はい。すみません……大丈夫です」


 いけない。探知に集中しないと。

 わたくしは魔族の声を無理やり心の奥底に押し込んだ。


 そろそろ水源地に着く頃です。


 ―――!?



 なにか近づいてくる!?


 え! うそ……これ魔物!? 



 わたくしの探知魔法が、複数の接近物を捉えた。


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