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第46話 悪役アビロス、王様から褒美をもらう

「フォフォ、アビロスは肉が好きなのか、よいよい」


 俺たちは第三王女であるマリーナに招かれて、王城で豪華な夕食を堪能していた。

 いや、さすが王族クオリティの肉だ。これは美味い! 最高!


 そして先程からフォフォフォ言ってるのが、王様である。


「とにかくじゃ、みなよくやってくれた。エリスを助けてくれたこと感謝するぞ」

「いえ、陛下。我々は学友であるマリーナ王女殿下を助けたいと動いたまでです。しかしエリス王女殿下がご無事で良かったです」

「そうかそうか、マリーナはよき友に恵まれておるのう、フォフォ」

「ええ、お父様。みんな最高の友です。特にアビは最高です! ここまで強い奴に会ったことがない」


 マリーナが興奮気味に前のめりになる。

 後半いつもの口調になってるぞ。


「えと、お父様。わたくしからもみなさまにお礼申し上げます。ステラさまはわたくしの拘束を解いていただきました。でもそのせいで大変な目に……」

「エリスさま、大丈夫ですよ。ほら、私を見てください、ピンピンしてます。あんな程度でダメになるほどやわではありあせん。みっちりしごかれてきましたから」


「フォフォ、そうかそうか聖女ステラにアビロスはともに同じ師の元で鍛錬を積んだと聞いておるぞ。よほど優れた師であったのだな」


「ええ……陛下。そうですね色々大変でした……」


 ナイフとフォークの手が止まるステラ。俺も同じくだ。

 ヤバイ、なんか久々に地獄の日々を思い出してしまった。吐きそう……


「あと、ララさまにも危ないところを救って頂きました。その……大丈夫ですか? お体?」


「はいです! 大丈夫です! 美味しかったです~~!」

「お、美味しい……はうっ~~~」


 エリス王女が俯いて変な声をもらす。まあ衝撃的な出来事だったからな。


「それから……アビロスさまにはその……わたしくしの……えと」


 エリス王女が急にモジモジしはじめた。



 あ、ヤバイ。スカートめくったことチクられる!



 どうすんだこれ! 最悪、打ち首もあり得る! よし、速攻で謝罪しよう!


「エリス王女殿下! その件につきましては、も、申し訳ございません!」


「なに謝ってるんだアビ? エリスはアビにお礼を言いたいだけだぞ?」

「え? そうなのか……ですか?」

「そうだぞ。エリスは引っ込み思案な性格でな。大好きな本を買う時以外は滅多に外にでないし、私以外とはほとんど話もしない。だが、おまえとは積極的に関わりたいようだぞ。ハ~ハッハ」

「え? 俺と関わりたい?」



 なぜ? スカートめくって、パンツ丸出しにしたのに?



「ちょ、ちょっと、お姉さま何を……! あ、アビロスさまには諦めないことを教えて頂きました。だから……その……えと……今後ともお友達になって頂けると……」

「ええ? 友達? ああ、そんなんで首がつながるなら全然いいですよ」

「……首?? あ、ありがとうございます!」


 満面の笑みで喜ぶエリス王女。


 よくわからんが、どうやら「王女パンツさらし罪」には問われないらしい。

 周りも特に気にした様子はないし。

 隣のステラが「また増えた……」とかブツブツ言っているぐらいだ。



 引き続き美味い肉を堪能していると、王様がみんなに向けて口を開いた。


「此度の件、本来であれば大々的にそなたらの功績を讃えたいのじゃが、公には出来ぬでな。非公式な形になってしまい申し訳なく思っておる。そこでじゃ、食事の場ではあるがそなたらに褒美を与えたい。ワシからのささやかなお礼と思ってくれ」



 ――――――褒美だと!



 おお! 王家のレアアイテムとか貰えちゃう感じなのか!? 


 王様が、1人づつ望みのものを聞いていく。


 ステラは、教会での教育施設の拡充を提案していた。この世界では勉強したくても出来ない子がたくさんいる。それを考えてのお願いだろう。

 ハハッ、ステラらしいな。こんな時まで他人の事かよ。


 ララは、王宮メイドの研修を希望した。もっと自分のメイド力を上げたいんだそうだ。

 もう充分に俺の専属メイドとしての役割をはたしているけどな。さらに上を目指すとは頑張り屋さんだ。

 ちなみに、ララはその持ち前のちっこかわいさで、マリーナとエリスのお気に入りになりつつある。今も2人と楽しく話しているし。


 俺? 欲しいものはもう決まっている。【万能タレ】だ。王家のレアアイテムで、その食材に合わせて最適なタレに変化するという究極の調味料。

 かつて勇者が旅した際に肌身離さずつけていたと言われるものである。


 これで焼肉を食べたい! どうしても食べたいんだ!! グフフ~~楽しみだ。


 ナリサとウルネラも各自希望を言い終わった。

 さて、残るはブレイルと俺だけだ。


「さてと、ブレイル。そなたはなにを望む」


 そんなことは決まっているさ。学園への入学だ。


「はい! 王様――――――王宮の野菜1年分ください!」


 よし、これで主人公ブレイルもようやくロブアカに入学だぜ!

 紆余曲折あったが、最終的に入学できればそれでよしって―――んん!?


 あれ? 



 いま野菜って言わなかった?? こいつ?



 王宮のテーブルがし~~んと静まり返る。


「あ、アビロス君~~僕が欲張りすぎてみんな黙ちゃったよ~~やっぱり半年分て言えば良かった~~」


 違う! 別な意味で固まってんだよ! どこで野菜求めてんだ!


「ブレイルとやら、そこまで野菜を欲すると言うのか? もっと別なものでも良いのじゃぞ?」

「はい! ぼく野菜大好きです! ここの野菜は最高です!」 



 ダメだこいつ……なぜ野菜を力説する? 違うだろ……



「コホン……ではさいごはアビロスじゃな。なにか欲しいものがあれば申してみよ」



 くぅうう~~~欲しかったレアアイテム……

 だが―――


「俺の……いや……私の友人であるブレイルをロイヤルブレイブアカデミーに入学させてください!」

「フォフォ、お主が推すのであれば入学に足る優秀な人材なのだな? さすがのわしでもそこが担保されなければ無茶はできんからのう」


 王様の言う事は当然だ。こんなの完全にズルだからな。

 だが、こいつは絶対に入学しなきゃダメだ。王国の未来に関わるからな。


「―――もちろんです陛下! 俺が保証します! ブレイルは間違いなく王国一の逸材でしょう」


「フォフォ、あいわかった。娘たちを救ったお主の言葉を信じるわい」

「では―――」

「ああ、ブレイルの入学を認める。クラスはお主と同じクラスでええじゃろ」



 ふぅ……なんとか入学できたな、ブレイル。



「あ、アビロス君……僕の為に」

「アビロス、素晴らしいです。あなたのことがとても誇らしいです」

「アビ、己の欲を捨てて友を想うとは、生き様もカッコイイじゃないか」

「アビロス様……素敵です」

「アビロス君、ナリサもすごくいいと思うよ」

「アビロっち~~モテモテだね~~」



 いや――――――



 全然後悔してますけどね~~ああぁああ、欲しかったよぉおお、レアアイテム!



 そんな俺に2人の王女が近づいてきた。


「アビ。これはわたしたち姉妹からのお礼だ。受け取ってくれ」

「ほぇ?」

「おまえの肉好きは知っているからな。どのみち王家では使用しないから、アビがもっていた方が良いだろう」


 姉妹が俺に渡したもの―――それは



「うぉおおお! これわぁあああああ!」


【万能タレ】だった。



 俺は今日一番の雄たけびをあげた。


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