第45話 悪役アビロス、久々にめくる
「アビロス! なんで毎回これなんですか!」
「ハ~ハッハ、アビ! これ凄いな! スースーするぞ!」
「ご主人様~~ララのスカート風船みたいです~~」
「アビロス君~~スカート破れちゃうよ~恥ずかしいよ~~」
「アビロっち~~この鬼畜魔法うける~~」
「あ、アビロス君~~こ、これ、凄いよ! ぼ、僕……興奮する!(←?)」
美少女たち(男1名含む)から黄色い悲鳴が次々に飛んでくる。
そう、俺は得意魔法を使った。
残った魔力すべてを絞り出して全員を浮かせたのだ。
ただし、前にも言ったがこの魔法には避けては通れないしばりがある。
体も浮くが、スカートも浮く。
―――というかめくれる。
必ずめくれる。
絶対にめくれる。
この世界の原作ゲームの設定がそうさせているからだ。
美少女たちが舞い上がり、ついでにスカートたちも舞い上がる。
色とりどりのパンツが、空に咲き乱れる。
盛大なパンツ祭りだ。
スカートを必死に抑えようとする者がいるが―――
悪いが抑えても無駄なんだ。回避不能の魔法だから、もう我慢してくれとしか言えん。
「あ、アビロスさま……浮いてます! これ、凄い!」
おっと、俺の腕の中にも1人いたんだった、お姫様が。
「ああ、だから絶対助けるって言っただろ」
「はい! 凄い! わたくし空を飛んだの初めてです!」
俺の腕の中で興奮した声をだすエリス王女。
思いっきりパンツ丸見えだけどな……。
そして、俺たちがいた地下から閃光と、とてつもない爆音が響く。
俺は崩れていく地下施設を上空から見下ろして、ふぅっと息を吐いた。
なんとか危機を脱したようだな。危なかった……ギリギリだったな。
と思ったのも束の間。危機はさっていなかった。
爆音と共に上空へ吹き上がる爆風。
「「「「「「「ええ~~またぁあああ! キャアアアアア!!」」」」」」
再度大空にパンツの花を咲かせる美少女たち。
2回目のこれは俺の責任じゃないからな。
程なくして、俺は全員の【闇魔法】を徐々に解除していく。
盛大なパンツ祭りをやらかしつつも、俺たちは無事地上に降り立つことができた。
「「「姫様~~~」」」
お、王家の親衛隊か。地上には騎士たちが続々と集結しはじめている。彼らもここを探り当てたようだ。
俺は着地すると、エリス王女を優しく降ろそうとしたのだが……!?
「あの? エリス王女殿下? もう地上に着きましたよ」
「はい……」
「……………」
いや着いたってば!
早く降りてくれ、絵柄的に王女を抱いているのはマズいんですよぉ~~なんか騎士たちの視線もきついし。
しかし一向に俺から離れる気配を見せない王女さま。
しょうがないから、ちょっと縦に振ってみた。
ユサユサ―――
「くっ……」
くっ……じゃないんだよ! しがみついてないで、早く降りてくれって!
「おい、貴様!さっきからエリス王女殿下になにをしているのだ!」
「貴様が誘拐犯か!」
「はやく姫様から離れろ! なにをユサユサと怪しい動きをしておる!」
ほら~~こういう誤解を受けるじゃないか~~
「違います! この方はわたくしを救ってくださった方です! 命の恩人に向かって無礼は許しません!」
お、エリス王女が事情を説明してくれたぞ。
この状況では、俺が何を言っても単に不審者扱いされるだけだからな。
「え! そうだったのですか……これはとんだご無礼を」
「申し訳ない、我らも感情がたかぶっていた故に、ご容赦くだされ」
「そうです! この方はみんなのスカートをめくって危機を救いました!」
いやいやいや……そこだけ強調しないでくださいエリス王女……
「な、なんですと! 貴様やはり賊か!」
「姫さまもめくられたのですか!?」
ほら~~振り出しに戻ったじゃないの~~。
4大貴族であるマルマーク家の息子ってことを伝えるか? う~~む。
「もちろんわたくしのパンツもお見せしました!」
ダメだこの子……まわりを見てくれよ。
騎士たちの顔が、とんでもない形相になっていくじゃないか。
「「「やはりこの変態男は捕縛しましょう!」」」
騎士たちの意見が完全一致してしまった。
クソ……こんなところに破滅フラグがあったとはな……盲点だったぜ。
が、そんな俺を救ってくれる声が。
「ハ~ハッハ、親衛隊長! そいつは本当にわたしたちを救った恩人だ! あとまわりのみんなもな!」
マリーナが、いつもの高笑いをしてみせる。
親衛騎士たちもこの笑いで、一気に警戒を解き。俺への謝罪と共に、各自の持ち場へと動いた。
この施設の調査や、捕まっていた少女たちの保護、そして司教の捕縛などだ。
さすが第3王女、騎士たちからの信望も厚いのだろう。とにかく助かったよ。
「ハハッ、ようやくいつものマリーナに戻ったな」
「ああ、アビ。そしてみんな本当に感謝する」
エリス王女も姉のマリーナに促がされて、ようやく俺から降りてくれた。
改めて抱き合い生還を喜ぶ王女姉妹。赤色と金色の綺麗な髪が混じりあって、何とも言えない輝きを放つ。
本当に仲がいいんだな、この2人。
「ところでみんな。わたしのうちへ来ないか。お礼と言っちゃなんだが、是非とも夕食を振舞わせてくれ」
おお、たしかに腹は減った。
ステラやララをはじめ、みんな頷いたのでご相伴に預かることにする。
馬車に揺られて、いい気分になってマリーナの家に向かう俺たち。
なんだかんだと大変だったが、無事にエリス生還ルートをたどれたようだ。
良かったよ。
「みんな! 着いたぞ! 取り合えず客間でゆっくりしていてくれ」
馬車を降りた俺は、大事なことに気が付いた。
そうだったマリーナって王女だった。あとエリスも。
てことは……うちって……
――――――やっぱ王城じゃねぇか! 城をわたしんちみたいな言い方すな!
うわぁ~~今日は疲れたから、もう変なイベントは起こらないでくれよ~~
などと自らフラグを立てるアビロスなのであった。